序文

日本乳癌学会の診療ガイドラインは,2004年に薬物療法ガイドラインを刊行したことに始まる。当初より,EBMに準拠し,さまざまなバイアスを排除すべくランダム化比較試験あるいは,それらを束ねたメタアナリシスやシステマティック・レビューの結果を重んじた推奨を行ってきた。しかしながら,多くの臨床試験の主たるエンドポイントは,全生存率(OS)の改善であったり,無増悪生存期間(PFS)の延長であり,効果,効用(益)に偏りがちの評価であった。しかし,個々の治療薬には,軽微なものから,時に重篤な副作用が起こるものまであり,負の側面(害)も加味した評価が求められる。また,近年,分子標的薬をはじめとする数多くの新薬の価格は高騰し,対費用効果も重要な要素となっている。

これまでの診療ガイドラインの作成にあたっては,公益社団法人日本医療機能評価機構から出版された「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に従ってきた。その手引きが,前述の「益」と「害」のバランスの情報を考慮したGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムという手法を取り込んだ,「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に改訂された。日本乳癌学会理事会は,診療ガイドライン委員会(岩田広治委員長)の答申を受け,GRADEシステムを用いた診療ガイドラインへの大幅改訂を承認し,同時に,本来,2年ごとの改訂版出版の予定(当初2017年に刊行を予定)を,1年延期することも決定した。したがって,今回の大幅改訂に携わった先生方には,GRADEシステムを理解することに始まり,初版本に匹敵する労力を強いることとなったが,ここに完成版を手にし,深く感謝申し上げる次第である。

また,これまでの表記と異なるために,利用者にとっては多少の違和感を生じたり,さまざまなご意見をもたれることも予想される。お気づきの点があれば,随時ご指摘いただき,改善すべき点があれば,まずはWEB版で対応を図る予定である。

今後は,患者向けガイドラインを作成し,医療現場で,医師を含む医療者と患者の共通理解のもとで,個々の人生観,価値観に照らし合わせた治療方針決定がなされる,いわゆるShared decision makingがさらに浸透することに注力していきたい。

2018年4月

日本乳癌学会 理事長
中村 清吾

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