2019年10月23日更新

CQ13.乳製品の摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?

7.乳癌患者の生活習慣・環境因子と予後の関連

ステートメント
・乳製品により乳癌患者の再発リスクが増加する可能性は否定できないが,乳癌死亡リスクや全死亡リスクが増加する可能性は低い。
〔エビデンスグレード:Limited―on conclusion(証拠不十分)〕

背景・目的

乳製品は生活に密着した製品であり,社会の関心は高い。乳癌の発症リスクに関しては,メタアナリシスが報告されており,データにばらつきはあるもののリスクが減少する傾向にある。乳癌患者における乳製品の摂取と予後については研究が少ないが報告されている。

解 説

乳製品は一般健康への影響も関連することから,乳癌患者の乳製品摂取と予後の評価として,乳癌再発(重要度9点),乳癌死亡(重要度8点),全死亡(重要度7点),一般健康への益について(重要度4点)を採用した。

乳癌再発をアウトカムとした研究は3件あり,内訳は診断前2件1)2),診断後1件3)であった。診断前の1件で相対リスク(RR)が1.30(95%CI 1.03-1.64)と高く,特に閉経前女性でRR 1.67(95%CI 1.17-2.39)と高かった1)。診断後の1件において,高脂肪乳製品と低脂肪乳製品に分けて検討されていたが,再発リスクにおいては有意差を認めなかった3)。診断前の2件において,乳製品の定義がバター,マーガリンとされており,高脂肪乳製品およびその加工品と判断できる。メタアナリシスでは,診断前および診断後の3件との関連を評価し,HR 1.16(95%CI 1.00-1.35,P=0.05)であり,効果に異質性はなくリスク増加と判定した(図1)

乳癌死亡をアウトカムとした研究については2件のみで,内訳は診断前1件,診断後1件であった。総乳製品摂取ではHR 1.26(95%CI 0.81-1.95)と有意な乳癌特異的死亡リスクを認めなかったが,高脂肪乳製品ではHR 1.49(95%CI 1.00-2.24)と高頻度摂取群では有意にリスクを高めた3)。メタアナリシスでは,診断前,診断後の2件との関連を評価し,HR 1.11(95%CI 0.80-1.56,p=0.53)であり,効果に異質性は認められず,有意ではないと判定した(図2)

全死亡をアウトカムとした研究は5件あり,診断前2件1)2),診断後3件3)~5)であった。診断後の1件でHR 1.39(95%CI 1.02―1.90)と全死亡リスクの増加を認めた3)。特に高脂肪乳製品の過剰摂取によるリスクの増加はHR 1.64(95%CI 1.24-2.17)と高かったが,低脂肪乳製品ではHR 1.05(95%CI 0.80-1.36)と有意なリスクを認めなかった。メタアナリシスでは,診断前および診断後の5件を評価し,HR 1.05(95%CI 0.84-1.32,p=0.66)であり,効果に異質性は認められたが全体としてリスクの増減は認めなかった(図3)

一般健康への影響を扱った研究は,乳癌以外の死亡を評価したコホート研究1件であった3)。総乳製品摂取に関してはHR 1.54(95%CI 0.99-2.39)と有意なリスクは認めなかったが,高脂肪乳製品では乳癌以外の死亡リスクはHR 1.67(95%CI 1.13-2.47)と高かった。一般健康への益に関しては,一般成人における乳製品に関するレビューが1件存在し,乳製品の摂取と脳卒中のリスク減少に関するメタアナリシスであった。この研究では日本人を対象とした研究が4件含まれている6)。このメタアナリシスではRR 0.93(95%CI 0.88-0.98,p=0.004)と異質性は高いが有意な脳卒中のリスク低減を認めていた。また,東アジア6件を評価した結果でもRR 0.82(95%CI 0.75-0.90,p<0.0001)と異質性は高くなく,東アジアにおいても有意なリスク低減を認めていた(図4)

以上から,乳製品により乳癌患者の再発リスクが増加する可能性は否定できないが,マーガリンも含まれておりその根拠は乏しい。乳癌死亡リスクや全死亡リスクが増加する可能性は低い。乳製品による乳癌以外の死亡リスクが増加する可能性は低く,脳卒中リスクの低減効果はほぼ確実である。乳製品の摂取は,日本人を対象とした研究がほとんどないこと,外国の研究でも高脂肪乳製品でなければリスク増加に至らない点や乳製品摂取による益の部分(脳卒中リスク低減効果)も勘案し,「乳癌患者の乳製品の摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすかどうかは証拠不十分である」とした。

検索キーワード

PubMedで“Breast Neoplasms”,“breast cancer”,“Dairy Products”,“Dietary Fats”,“Prognosis”,“Recurrence”,“Mortality”をキーワードとして検索した。検索期間は2016年11月までとした。その結果,PubMed 367編,医中誌329編が抽出され,それ以外に1編の論文が追加された。一次スクリーニングで10編の論文が抽出され,二次スクリーニングにて内容が適切でないと判断した論文を除外し,最終的に6編の論文を対象に定性的および定量的システマティック・レビューを実施した。

参考文献

1)Hebert JR, Hurley TG, Ma Y. The effect of dietary exposures on recurrence and mortality in early stage breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 1998;51(1):17―28. [PMID:9877026]

2)Saxe GA, Rock CL, Wicha MS, Schottenfeld D. Diet and risk for breast cancer recurrence and survival. Breast Cancer Res Treat. 1999;53(3):241―53. [PMID:10369070]

3)Kroenke CH, Kwan ML, Sweeney C, Castillo A, Caan BJ. High― and low―fat dairy intake, recurrence, and mortality after breast cancer diagnosis. J Natl Cancer Inst. 2013;105(9):616―23. [PMID:23492346]

4)Beasley JM, Newcomb PA, Trentham―Dietz A, Hampton JM, Bersch AJ, Passarelli MN, et al. Post―diagnosis dietary factors and survival after invasive breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2011;128(1):229―36. [PMID:21197569]

5)Holmes MD, Stampfer MJ, Colditz GA, Rosner B, Hunter DJ, Willett WC. Dietary factors and the survival of women with breast carcinoma. Cancer. 1999;86(5):826―35. [PMID:10463982]

6)de Goede J, Soedamah―Muthu SS, Pan A, Gijsbers L, Geleijnse JM. Dairy consumption and risk of stroke:a systematic review and updated dose―response meta―analysis of prospective cohort studies. J Am Heart Assoc. 2016;5(5). pii:e002787. [PMID:27207960]

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