2021年3月31日更新

BQ15.タモキシフェンは子宮内膜癌(子宮体癌)発症のリスクを増加させるか?

1.初期治療

ステートメント
乳癌術後のタモキシフェン内服により、閉経後女性で子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクを増加させるが、閉経前女性では子宮内膜癌(子宮体癌)の発症リスクは増加させない。

背 景

ホルモン受容体陽性乳癌の術後内分泌療法としてタモキシフェン内服の有効性が確立している(薬物療法CQ1, CQ2参照)。一方で、術後内分泌療法や乳癌化学予防目的のタモキシフェン内服の有害事象のひとつとして、子宮内膜癌の発症リスク増加が報告されている。その詳細について記述する。

解 説

タモキシフェンによる乳癌化学予防の効果を検証したランダム化比較試験で、子宮内膜癌のリスクについても報告されている。NSABP P-1試験(n=13388)では、タモキシフェン5年内服によって子宮内膜癌罹患の相対リスクは3.28(95%CI 1.87-6.03)と上昇することが報告された1)。7年の追跡期間で子宮内膜癌は、試験全体で70例(プラセボ群17例、タモキシフェン群53例)発症したが、うち67例(プラセボ群15例、タモキシフェン群52例)はstageⅠであった。年齢別では49歳以下では子宮内膜癌のリスク増加は認めず、50歳以上では相対リスクは5.33(95%CI 2.47-13.17)とリスク増加を認めた。一方、IBIS-I試験(n=7145, タモキシフェン5年内服)の16年の追跡2)およびRoyal Marsden trial(n=2494, タモキシフェン7年内服)の20年の追跡結果3)では、タモキシフェンによる子宮内膜癌のリスク増加は認めていない。これらの乳癌化学予防に関する3試験のメタアナリシス4)では、タモキシフェンによる子宮内膜癌の相対リスクは2.13(95%CI 1.36-3.32, I2=0.0%)と有意に増加することが示されている。

SEERデータベースで1980~2000年に乳癌と診断され初期治療にタモキシフェンを投与された39451人の解析から、子宮内膜癌のO/E(観測値/期待値)は2.17(95%CI 1.95-2.41)と2倍以上であった(5)。乳癌術後の補助療法として、タモキシフェンの有効性を検証した20試験を含むEBCTCGのメタアナリシスの解析結果6)から、タモキシフェン5年内服で子宮内膜癌の罹患リスクは2.40倍に増加することが報告された。年齢との相関があり、54歳以下では子宮内膜癌のリスク増加はないが、55歳以上では罹患リスクは2.96倍に増加し、15年の追跡期間で子宮内膜癌の発症割合は、タモキシフェン群で3.8%、プラセボ群で1.1%と2.6%上昇していた。子宮内膜癌による死亡リスクの有意な増加は認めていない。

上記を踏まえ、特に閉経後乳癌患者に対しては、タモキシフェン内服による子宮内膜癌(子宮体癌)のリスクを説明したうえで、不正出血などの症状があればすぐに連絡するように説明しておくことが重要である。また、タモキシフェン内服前にすでに良性ポリープがあるような「子宮内膜癌高リスク患者」でない限り、定期的な子宮体癌検診が子宮内膜癌の早期発見に有効であるというエビデンスがないことに加えて、子宮に対してより侵襲的な検査を行うことが多くなるなどの不利益を考慮すると、定期的な子宮体癌検診は推奨されない

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで “Tamoxifen”, “Endometrial Neoplasms”, “Uterine Neoplasms”, “Chemically Induced”のキーワードで検索した。検索期間は2018年11月までとし,310件がヒットした。

参考文献

1)Fisher B, Costantino JP, Wickerham DL, Cecchini RS, Cronin WM, Robidoux A, et al. Tamoxifen for the prevention of breast cancer: current status of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P—1 study. J Natl Cancer Inst. 2005; 97(22): 1652—62. [PMID: 16288118]

2)Cuzick J, Sestak I, Cawthorn S, Hamed H, Holli K, Howell A, et al ; IBIS-I Investigators. Tamoxifen for prevention of breast cancer: extended long-term follow-up of the IBIS-I breast cancer prevention trial. Lancet Oncol. 2015;16(1):67-75. [PMID: 25497694]

3) Powles TJ, Ashley S, Tidy A, Smith IE, Dowsett M. Twenty-year follow-up of the Royal Marsden randomized, double-blinded tamoxifen breast cancer prevention trial. J Natl Cancer Inst. 2007;99(4):283-90. [PMID: 17312305]

4) Nelson HD, Fu R, Griffin JC, Nygren P, Smith ME, Humphrey L. Systematic review: comparative effectiveness of medications to reduce risk for primary breast cancer. Ann Intern Med. 2009;151(10):703-15, W-226-35. [PMID: 19920271]

5) Curtis RE, Freedman DM, Sherman ME, Fraumeni JF Jr. Risk of malignant mixed mullerian tumors after tamoxifen therapy for breast cancer. J Natl Cancer Inst. 2004;96(1):70-4. [PMID: 14709741]

6)Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG), Davies C, Godwin J, Gray R, Clarke M, Cutter D, et al. Relevance of breast cancer hormone receptors and other factors to the efficacy of adjuvant tamoxifen:patient—level meta—analysis of randomised trials. Lancet. 2011; 378(9793): 771—84. [PMID: 21802721]

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