CQ9.原発乳癌に対する術後薬物療法として静注化学療法にカペシタビン同時併用は推奨されるか?

1.初期治療

推 奨
・標準的な術後化学療法へのカペシタビン同時併用は有効な可能性があり,行うことを弱く推奨する。
〔推奨の強さ:2,エビデンスの強さ:中,合意率:82%(9/11)〕

背景・目的

原発乳癌に対する術後化学療法はアンスラサイクリン系薬剤とタキサン系薬剤が標準となっている。カペシタビンを標準的な術後化学療法に同時併用することの有効性を検証した。

解 説

第Ⅲ相比較試験が2つ報告されている。

術後アンスラサイクリンとタキサンの順次化学療法へのカペシタビン同時併用の有用性を検討したランダム化第Ⅲ相比較試験が2つ報告されている。

まず,US Oncology 01062試験は,AC療法(ドキソルビシン,シクロホスファミド併用)からドセタキセルへの順次化学療法を標準治療群として,ドセタキセルへのカペシタビン同時併用を介入群としたランダム化比較試験(RCT)である(n=2,611)1)。主要評価項目の5年無病生存期間(DFS)では,介入群(同時併用群)で有意な改善は認めなかった(HR 0.84,95%CI 0.67-1.05)。副次的評価項目の全生存期間(OS)は介入群(同時併用群)で有意に良好であった(HR 0.68,95%CI 0.51-0.92)。

もう一つの試験であるFinXX試験は,ドセタキセル(T)とCEF療法(シクロホスファミド,エピルビシン,5-FU併用)の順次化学療法治療を標準的治療群として,TX療法(ドセタキセル,カペシタビン同時併用)とCEX療法(シクロホスファミド,エピルビシン,カペシタビン同時併用)の順次治療を介入群としたRCTである(n=1,500)2)。観察期間の中央値10.3年で結果が報告された。主要評価項目のDFSで有意な差を認めなかった(HR 0.88,95%CI 0.71-1.08)。副次評価項目OSの改善も認めなかった(HR 0.84,95%CI 0.66-1.07)。

これら2つの試験を用いてメタアナリシスを行った結果,カペシタビンを同時併用の形で追加することでOSのハザード比は0.77(95%CI 0.64-0.93)(図1a)と統計学的に有意な改善を示す結果となった。OSをハザード比0.77で改善することの臨床的意義は大きいものの,メタアナリシスでDFSのハザード比は0.86(95%CI 0.74-1.01)(図1b)と改善が有意ではなかったこと,本メタアナリシスの対象とした2つのRCTは,ともに主要評価項目であるDFSではネガティブな結果であったこと,副次評価項目であるOSはポジティブとネガティブの結果に分かれた。以上より,エビデンスの強さは「中」とした。

 

2つのRCTの対象が,リンパ節転移陽性もしくはリンパ節転移陰性であったが,腫瘍径2 cm以上など再発リスクが高い症例であったことには留意する必要がある。さらに,2つのRCTともにサブ解析でER陽性では有意な生存期間の延長は認めず,トリプルネガティブで有意な延長を示している。これらの結果から,カペシタビンの標準化学療法への同時併用を考慮する場合には,再発リスクが高い症例の選択が必要である。カペシタビンを同時併用することで増加する有害事象については,US Oncology 01062試験でのみ詳細な報告があったが,Grade 3以上の好中球減少やGrade 2以上の貧血の増加は認めず,Grade 2以上の手足症候群が対照群10.6%に対し介入群で46.1%と有意に増加し(RR 4.36,95%CI 3.68-5.16),Grade 2以上の下痢も対照群15.6%に対し介入群23%と軽微ではあるが有意な増加(RR 1.49,95%CI 1.27-1.75)を認めた1)

益と害のバランスについては,カペシタビンを標準化学療法に追加することで,手足症候群の割合が著しく増加するが,OSの改善が期待できることから,「益が勝る」と考えた。ただし,上述したように再発リスクの高い症例を選択することが必要である。

コストに関して,わが国ではカペシタビンの術後療法としての使用は保険適用外であるため,患者負担の医療費は著しく増加する(利用した2つのRCTのレジメンで試算を行った。体表面積1.5 m2の場合,全治療期間で薬剤費として約16万円および約24万円となった)。

患者の希望は,OSの延長があるものの有害事象の増加,そして薬剤費の増加を考えると,多様である(ばらつきが大きい)と思われる。

以上より,標準的な術後化学療法にカペシタビンを同時併用することで,有意に予後が改善するとのメタアナリシスの結果であるが,用いたRCTの個々の結果を鑑みると強いエビデンスとはいえない。腫瘍径,リンパ節転移の有無やサブタイプなどを考慮し,再発リスクが高い症例でカペシタビン併用を検討することが望ましい。手足症候群や下痢の増加,患者の医療費負担の増加もあり,エビデンスの程度,益と害のバランス,患者の希望などを勘案し,推奨は「標準的な術後化学療法へのカペシタビン同時併用は有効な可能性があり,行うことを弱く推奨する」とした。

なお,術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)を得られなかった症例を対象に,術後カペシタビンを投与した場合の有効性を検証した第Ⅲ相比較試験(CREATE-X試験)の結果が報告され,DFS,OSともに改善することが示された3)。再発リスクの高い症例では,標準的な周術期化学療法にカペシタビンを追加することで予後を改善することが期待される。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Chemotherapy, Adjuvant”,“fluorouracil”,“cape citabine”のキーワードで検索した。医中誌・Cochrane Libraryも同等のキーワードで検索した。検索期間は2016年11月までとし,1,456件がヒットした。二次スクリーニングまで抽出される論文はなく,ハンドサーチによる1編のシステマティック・レビュー4)から本CQの主旨に合致する2編の論文を用いて定性的および定量的システマティック・レビューを行った。

エビデンス総体システマティックレビューメタアナリシス

参考文献

1)O’Shaughnessy J, Koeppen H, Xiao Y, Lackner MR, Paul D, Stokoe C, et al. Patients with slowly proliferative early breast cancer have low five―year recurrence rates in a phase Ⅲ adjuvant trial of capecitabine. Clin Cancer Res. 2015;21(19):4305―11. [PMID:26041745]

2)Joensuu H, Kellokumpu―Lehtinen PL, Huovinen R, Jukkola―Vuorinen A, Tanner M, et al. Adjuvant capecitabine in combination with docetaxel, epirubicin, and cyclophosphamide for early breast cancer:The randomized clinical FinXX trial. JAMA Oncol. 2017;3(6):793―800. [PMID:28253390]

3)Masuda N, Lee SJ, Ohtani S, Im YH, Lee ES, Yokota I, et al. Adjuvant capecitabine for breast cancer after preoperative chemotherapy. N Engl J Med. 2017;376(22):2147―59. [PMID:28564564]

4)Natori A, Ethier JL, Amir E, Cescon DW. Capecitabine in early breast cancer:A meta―analysis of randomised controlled trials. Eur J Cancer. 2017;77:40―7. [PMID:28355581]

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