BQ5.乳癌骨転移に対して骨吸収抑制薬(ビスホスホネート,デノスマブ)は勧められるか?

2.転移・再発乳癌

ステートメント
・骨吸収抑制薬は骨関連事象(SRE)のリスク低下効果が示されており,骨転移をもつ患者に使用するのが標準である。わが国で使用する薬剤はゾレドロン酸ないしデノスマブである。
・ゾレドロン酸の12週間隔投与の効果は3~4週間隔投与に対する非劣性が示されているが,長期的な有効性や安全性については明らかになっていない。
・デノスマブはゾレドロン酸よりも有意にSREリスクを低下させることが示されており,ゾレドロン酸よりも推奨度が高い。
・骨吸収抑制薬による顎骨壊死は患者のQOLを低下させるので,開始前の顎骨壊死リスクの評価や治療中の定期的な口腔ケアを行う。

背 景

 骨転移は転移乳癌患者の50%以上で起こり1),骨吸収抑制薬が使用される以前には病的骨折が20~40%/年に,3~6カ月に1回の頻度で病的骨折,脊髄圧迫症状,骨への放射線療法や手術といった骨関連事象(skeletal―related events;SRE)や疼痛,高カルシウム血症などが起こる2)とされていた。SREは患者のQOLを著しく損なう可能性がある。ビスホスホネートやデノスマブなどは破骨細胞の機能を抑え,骨吸収を抑制して乳癌骨転移患者のSREを予防する。

解 説

1)ビスホスホネート

骨転移をもつ乳癌患者を対象として行われたビスホスホネートvsプラセボ,あるいはビスホスホネートありvsなしの9つの臨床試験のメタアナリシスによると,ビスホスホネートはSRE(高カルシウム血症を含まない)リスクを有意に15%減少させ(RR 0.85,95% CI 0.77-0.94,p=0.001),SRE発症までの期間延長,疼痛の軽減,QOL向上で優れていたが,生存への寄与は認めなかった3)。最も大きくSREリスクを減少させた薬剤はゾレドロン酸(RR 0.59,95% CI 0.42-0.82)で,次いでパミドロン酸(RR 0.77,95% CI 0.69-0.87)であった。

溶骨性骨転移を有する化学療法中の乳癌患者を対象としてパミドロン酸とプラセボを比較した試験では,パミドロン酸によってSRE(高カルシウム血症を含む)が有意に減少した4)

ゾレドロン酸とパミドロン酸を比較したランダム化比較試験5)では,SRE(高カルシウム血症を含まない)の発生予防効果は両者間に差を認めなかったが,multiple event analysisではゾレドロン酸は20%の有意なSRE抑制を示した。

わが国で行われた乳癌骨転移に対するゾレドロン酸vsプラセボのランダム化比較試験でも,ゾレドロン酸により1年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)の発症リスクを39%低下させ,新規SRE発生までの期間延長,疼痛軽減が認められた6)。また,ゾレドロン酸により疼痛が軽減し,有意にQOLが向上したとの報告がある7)

ゾレドロン酸の至適投与期間に関する報告はない。過去の臨床試験が1年間ないし2年間を治療期間としているため,2年間の投与期間での安全性には問題ないと考えられるが,それ以上の長期投与の安全性に関しては不明である。

ゾレドロン酸は通常3~4週間隔の投与を行うが,12週間隔投与の非劣性を検証した3つのランダム化比較試験の結果が報告されている。ZOOM試験は骨転移に対して12~15カ月のゾレドロン酸治療を継続している425人を対象として,ゾレドロン酸の12週間隔と4週間隔にランダム化割り付けして治療し,1年間追跡した8)。追跡期間中央値337日での主要評価項目であるskeletal morbidity rate(高カルシウム血症を含むSRE数/人/年)はそれぞれ0.26,0.22で12週間隔投与の非劣性が示され,総SRE発症率,疼痛,鎮痛薬使用や顎骨壊死を含む毒性に関しても両群で差がなかった。CALGB 70604(Alliance)試験は骨転移を有する乳癌,前立腺癌,多発性骨髄腫患者1,822人(うち乳癌患者855人,全体の47%)にゾレドロン酸を12週ないし4週間隔で開始し,2年間追跡した9)。追跡期間中央値1.2年での主要評価項目である2年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)発症患者は全患者のそれぞれの群で28.6%,29.5%であり,12週間隔投与の非劣性が示され,乳癌患者でも両群間に差がなかった。疼痛,PS,顎骨壊死を含む有害事象,skeletal morbidity rateに両群間の有意差はなかった。OPTIMIZE―2試験では,乳癌骨転移に対して10~15カ月間に9回以上のゾレドロン酸ないしパミドロン酸の投与を受けた416人の患者を対象に,1年間のゾレドロン酸投与の12週ないし4週間隔を比較した10)。その結果,1年間のSRE(高カルシウム血症を含まない)発症率は,12週間隔で23.2%,4週間隔では22.0%であり,12週間隔の非劣性が示された。両群の毒性は同等だった。以上の結果から,全身状態の良好な骨転移患者では患者との相談によってゾレドロン酸の12週間隔投与を検討できるが,12週間隔投与の長期的な有効性や安全性についての根拠に乏しいことに留意すべきである。

2)デノスマブ

抗RANKLヒト化モノクローナル抗体であるデノスマブと,ゾレドロン酸の効果を検討した3つ(乳癌,前立腺癌,それ以外の固形癌と多発性骨髄腫)のランダム化比較試験(総症例数5,723人)のメタアナリシスでは,デノスマブはSRE(高カルシウム血症を含まない)の発症リスクを有意に17%低下させたが,無増悪生存や全生存には差がなかった11)
乳癌患者でのデノスマブとビスホスホネートのランダム化比較試験のメタアナリシス(総症例数2,330人)でもSRE(高カルシウム血症を含む)発生率はデノスマブで有意に少なかった(OR 0.61,95%CI 0.51-0.72)12)

乳癌患者を対象としてデノスマブとゾレドロン酸を比較したランダム化比較試験では,デノスマブは新規SRE(高カルシウム血症を含まない)発症までの期間を有意に延長させ(HR 0.82,95%CI 0.71-0.95),ゾレドロン酸の新規SRE発症までの期間中央値26.4カ月に対してデノスマブでは未到達であった13)。また,デノスマブは二次以降のSRE発症リスクも23%抑制した。無増悪生存や全生存は同等であった。有害事象に関してデノスマブではゾレドロン酸に比べ急性期反応(発熱,骨痛等)や腎機能障害が少ないが,歯痛や低カルシウム血症が多いことが示された。顎骨壊死の発生頻度は両群間で有意差はなかった。

以上から,乳癌骨転移に対してデノスマブはゾレドロン酸よりも推奨度の高い治療薬である。

3)顎骨壊死(osteonecrosis of the jaw;ONJ)

顎骨壊死の頻度はゾレドロン酸,デノスマブともに1~2%程度とされている14)いったん発症すると長期化し,患者のQOLやがん治療に影響を及ぼす可能性があり,予防が最も重要である。骨吸収抑制薬は顎骨壊死の重要な原因の一つである15)。わが国でも関連学会で組織された顎骨壊死検討委員会によるポジションペーパー16)が公表されており,一部の学会のホームページ上で日本語版を閲覧可能である。

このポジションペーパーでは骨吸収抑制薬による顎骨壊死のリスク因子として口腔衛生状態不良,歯周病,不適合義歯,抜歯やインプラントなどの侵襲的歯科治療などが挙げられている。骨吸収抑制薬使用前に可能な限り歯科医師による齲歯や歯周病のチェックとこれらの予防を行い,がん治療開始2週間前までには歯科治療を終えておく。投与中は口腔内を清潔に保ち,侵襲的な歯科治療を避けることが推奨されるが,侵襲的歯科治療を行った場合は,十分な骨性治癒がみられる2カ月後から投与を再開する。早期の投与再開が必要な場合は,術創部の上皮化がほぼ終了する2週間後に術部に感染がないことを確認する。

顎骨壊死発症後はその治療が完了するまで骨吸収抑制薬の休薬が望まれるが,ポジションペーパーにはがん患者では原則として休薬しないと記載されている。日常診療では顎骨壊死の状態,骨転移の状況,抗悪性腫瘍治療の効果,患者の希望などを勘案して方針決定する。

検索キーワード・参考にした二次資料

PubMedで“Breast Neoplasms”,“Neoplasm Metastasis”,“Neoplasm Recurrence, Local”,“Bone Neoplasms”,“Denosumab”,“Diphosphonate”のキーワードで検索した。検索期間は2014年から2016年11月までとし,35件がヒットした。ほかにUpToDate 2016の“Osteoclast inhibitors for patients with bone metastases from breast, prostate, and other solid tumors”,(last updated:Aug. 18, 2015)の項を参照した。

参考文献

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2)Coleman RE, McCloskey EV. Bisphosphonates in oncology. Bone. 2011;49(1):71―6. [PMID:21320652]

3)Wong MH, Stockler MR, Pavlakis N. Bisphosphonates and other bone agents for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2012;(2):CD003474. [PMID:22336790]

4)Hortobagyi GN, Theriault RL, Lipton A, Porter L, Blayney D, Sinoff C, et al. Long―term prevention of skeletal complications of metastatic breast cancer with pamidronate. Protocol 19 Aredia Breast Cancer Study Group. J Clin Oncol. 1998;16(6):2038―44. [PMID:9626201]

5)Rosen LS, Gordon DH, Dugan W Jr, Major P, Eisenberg PD, Provencher L, et al. Zoledronic acid is superior to pamidronate for the treatment of bone metastases in breast carcinoma patients with at least one osteolytic lesion. Cancer. 2004;100(1):36―43. [PMID:14692022]

6)Kohno N, Aogi K, Minami H, Nakamura S, Asaga T, Iino Y, et al. Zoledronic acid significantly reduces skeletal complications compared with placebo in Japanese women with bone metastases from breast cancer:a randomized, placebo―controlled trial. J Clin Oncol. 2005;23(15):3314―21. [PMID:15738536]

7)Wardley A, Davidson N, Barrett―Lee P, Hong A, Mansi J, Dodwell D, et al. Zoledronic acid significantly improves pain scores and quality of life in breast cancer patients with bone metastases:a randomised, crossover study of community vs hospital bisphosphonate administration. Br J Cancer. 2005;92(10):1869―76. [PMID:15870721]

8)Amadori D, Aglietta M, Alessi B, Gianni L, Ibrahim T, Farina G, et al. Efficacy and safety of 12―weekly versus 4―weekly zoledronic acid for prolonged treatment of patients with bone metastases from breast cancer(ZOOM):a phase 3, open―label, randomised, non―inferiority trial. Lancet Oncol. 2013;14(7):663―70. [PMID:23684411]

9)Himelstein AL, Foster JC, Khatcheressian JL, Roberts JD, Seisler DK, Novotny PJ, et al. Effect of longer―interval vs standard dosing of zoledronic acid on skeletal events in patients with bone metastases:a randomized clinical trial. JAMA. 2017;317(1):48―58. [PMID:28030702]

10)Hortobagyi GN, Van Poznak C, Harker WG, Gradishar WJ, Chew H, Dakhil SR, et al. Continued treatment effect of zoledronic acid dosing every 12 vs 4 weeks in women with breast cancer metastatic to bone:The OPTIMIZE―2 randomized clinical trial. JAMA Oncol. 2017;3(7):906―12. [PMID:28125763]

11)Lipton A, Fizazi K, Stopeck AT, Henry DH, Brown JE, Yardley DA, et al. Superiority of denosumab to zoledronic acid for prevention of skeletal―related events:a combined analysis of 3 pivotal, randomised, phase 3 trials. Eur J Cancer. 2012;48(16):3082―92. [PMID:22975218]

12)Wang X, Yang KH, Wanyan P, Tian JH. Comparison of the efficacy and safety of denosumab versus bisphosphonates in breast cancer and bone metastases treatment A meta―analysis of randomized controlled trials. Oncol Lett. 2014;7(6):1997―2002. [PMID:24932278]

13)Stopeck AT, Lipton A, Body JJ, Steger GG, Tonkin K, de Boer RH, et al. Denosumab compared with zoledronic acid for the treatment of bone metastases in patients with advanced breast cancer:a randomized, double―blind study. J Clin Oncol. 2010;28(35):5132―9. [PMID:21060033]

14)Van Poznak C, Somerfield MR, Barlow WE, Biermann JS, Bosserman LD, Clemons MJ, et al. Role of bone―modifying agents in metastatic breast cancer:an American Society of Clinical Oncology―Cancer Care Ontario Focused Guideline Update. J Clin Oncol. 2017;35(35):3978―86. [PMID:29035643]

15)Shapiro CL. Bisphosphonate―related osteonecrosis of jaw in the adjuvant breast cancer setting:risks and perspective. J Clin Oncol. 2013;31(21):2648―50. [PMID:23796994]

16)Yoneda T, Hagino H, Sugimoto T, Ohta H, Takahashi S, Soen S, et al;Japanese Allied Committee on Osteonecrosis of the Jaw. Antiresorptive agent―related osteonecrosis of the jaw:position paper 2017 of the Japanese allied committee on osteonecrosis of the jaw. J Bone Miner Metab. 2017;35(1):6―19. [PMID:28035494]

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