日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

 日本乳癌学会では,2004年に薬物療法ガイドラインを刊行以降,外科療法,放射線療法,検診・診断,予防・疫学の5分野のガイドラインを3年毎に発刊してきた。しかし,昨今の医療技術や薬物療法の進歩はめざましく,その変化に即応すべく,全分野を統合したWEB版ガイドラインを作成し,2011年9月1日より一般公開した。また,WEB版に合わせて従来からの書籍も治療編と疫学・診断編の2分冊とし,より臨床の現場で活用できるように配慮したものを同時に発刊し,2年に一度の改定を行っている。さらに,上記をもとに患者さんの視点からみたQに答える患者向けのガイドラインも,診療ガイドラインの翌年に,隔年ごとに書籍およびWEB版を刊行している。

 診療ガイドラインは,チーム医療を遂行するうえで,医師のみならずチームを構成するあらゆる職種の人が共通に理解し,実践すべきものである。たとえば,医師の処方オーダーを薬剤師が調剤の場でチェックし,さらには看護師が与薬の前に再確認するというプロセスにおいて,EBMが共有されていれば,二重三重のチェックがかけられ,医療過誤を防ぐことにつながる。また,地域医療連携の現場においても,専門性の高い急性期病院と地域の医療機関との間において乳癌に対する共通の理解がなければ,患者のサバイバーシップを支えたり緩和を含む在宅ケア等の円滑な診療は望めない。

 現在,NCD(National Clinical Database)の基盤上に当学会の乳癌登録のデータベースが構築され,大規模な診療実態や予後データが把握できるようになった。診療ガイドライン委員会のなかにはQI(Quality Indicator)小委員会が設置され,診療ガイドラインに基づくQIを定め,乳癌登録のデータをもとに医療の質の評価を行う活動が開始されている。

 分子標的薬をはじめとする新薬の開発や,次世代シーケンサーを用いた遺伝子検査の進歩はめざましく,治療の個別化がますます進み,患者個々のおかれている状況や人生観,価値観に照らし合わせた治療の選択はさらに複雑さを増している。こうしたなか,本書が幅広く活用され,個々の患者に相応しい治療の選択や乳癌診療の質向上に寄与することを期待している。

2015年6月

一般社団法人日本乳癌学会 理事長
昭和大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門
中 村 清 吾

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