日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

閉経前ホルモン受容体陽性乳癌の術後内分泌療法としてLH-RH アゴニストとアロマターゼ阻害薬の併用は勧められるか (薬物療法・初期治療・ID10060)

CQ5 乳癌診療ガイドライン1治療編(022-024ページ)
推奨グレード C1 LH—RHアゴニストとエキセメスタンの併用は考慮してもよい。

 推奨グレードを決めるにあたって

 SOFT,TEXTの結果(後述)から閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後療法として,LH—RHアゴニストにエキセメスタンを併用することにより,無病生存期間を有意に延長した。しかし,ABCSG—12ではLH—RHアゴニストにアナストロゾールを併用しても無病生存期間は延長せず,全生存期間が劣る傾向にあり,両者で結果が一致していないため,グレードをC1とした。

 背景・目的

 閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法は,長らくタモキシフェンが標準療法であった。第三世代のアロマターゼ阻害薬が登場し,アロマターゼ阻害薬であるアナストロゾール(ATAC)1),レトロゾール(BIG 1—98)2),エキセメスタン(TEAM)3)とタモキシフェンとの比較が発表され,OSへの影響は定かではないが,DFSを改善することがわかってきた。

 閉経後のエストロゲンは,主に脂肪細胞などに存在するアロマターゼによって,副腎由来のアンドロゲンから変換されて産生される。したがって,閉経後ホルモン受容体陽性乳癌においては,アロマターゼ阻害薬が有用である。一方,閉経前においてはエストロゲンの主な産生場所は卵巣であり,アロマターゼ阻害薬単独ではエストロゲンの産生を抑えることはできない。そこで,LH—RHアゴニストにより卵巣機能抑制を行い,それにアロマターゼ阻害薬を加えエストロゲンレベルをさらに低下させることで,LH—RHアゴニストにタモキシフェンを併用するよりも,より高い治療効果が得られるのではないかと期待された。

 閉経前ホルモン受容体陽性乳癌において,LH—RHアゴニストにアロマターゼ阻害薬を併用することの有用性が確立されているかどうかについて検討した。

解 説

 閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後療法としてLH—RHアゴニスト+タモキシフェン±ゾレドロン酸を3年間投与と,LH—RHアゴニスト+アナストロゾール±ゾレドロン酸を3年間投与の4群が比較検討された(ABCSG—12)。観察期間中央値62カ月の時点で,タモキシフェン群とアナストロゾール群の比較では,DFSにおいて両群に差を認めなかった(HR:1.08,95%CI:0.81—1.44)4)。しかしながら,OSではアナストロゾール群が有意に不良であった(HR:1.75,95%CI:1.08—2.83)。さらに,body mass index(BMI)によりLH—RHアゴニスト+アナストロゾールの効果が異なることが示されている5)。LH—RHアゴニスト+アナストロゾールを投与された患者のうち,BMI>25 kg/m2の過体重の患者は正常体重の患者に比べ,DFS,OSとも有意に不良であった。また,過体重の患者の中では,アナストロゾールを投与された患者はタモキシフェンを投与された患者に比べ,DFSで不良な傾向にあり,OSでは有意に不良であった。有害事象に関しては,同試験で各群の骨塩量を比較すると,治療3年後の時点でゾレドロン酸未使用例では,ゴセレリン+タモキシフェン群で9.0%の骨塩量の減少があるのに対して,ゴセレリン+アナストロゾールでは13.6%の骨塩量の減少を認めた6)

 閉経前ホルモン受容体陽性乳癌を対象とした2つの第Ⅲ相試験(SOFTとTEXT)の統合解析結果が報告された7)。SOFT(n=3,066)は,タモキシフェン5年,タモキシフェン5年+OFS,エキセメスタン5年+OFSの3群を比較した試験である。TEXT(n=2,672)は,タモキシフェン5年+卵巣機能抑制(OFS)とエキセメスタン5年+OFSの2群を比較した試験である。これら2試験において,共通アームであるタモキシフェン5年+OFSとエキセメスタン5年+OFSの統合解析(n=4,690)がなされた。観察期間中央値68カ月の時点で,5年DFSは,エキセメスタン+OFS群で(2,346人)91.1%であり,タモキシフェン+OFS群(2,344人)87.3%と比較し有意な改善を認めた(HR:0.72,95%CI:0.60—0.85)。死亡イベントは194例(4.1%)で,全生存については両群間に有意差はみられなかった(エキセメスタン+卵巣機能抑制群の死亡 HR:1.14,95%CI:0.86—1.51)。
両群で多く発現したグレード3/4の有害事象(エキセメスタン+OFS群vsタモキシフェン+OFS群)は,ホットフラッシュ(10% vs 12%),筋骨症状(11% vs 5.2%),高血圧(6.5% vs 7.3%),うつ(3.8% vs 4.4%)などであった。また,骨粗鬆症(Tスコア<-2.5)は13.2% vs 6.4%であった。治療の早期中止例はそれぞれ16.1%と11.2%であったが,QOLは両群間で差はなかった。

 ABCSG—12の結果と一致はしていないものの,SOFT,TEXTの結果から閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後療法として,LH—RHアゴニストにエキセメスタンを併用することにより,無病生存期間を有意に延長した。そのため,リスク・ベネフィットを十分考慮したうえで,LH—RHアゴニストにエキセメスタンの併用投与を検討してもよい。今後,SOFT,TEXTの長期フォローアップの結果が待たれる。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Breast Neoplasms,Premenopause,hormone receptor positive,goserelin,LHRH analog,Gonadotropin—Releasing Hormone,Aromatase Inhibitors,Aromatase,Drug Administration Schedule,“Drug Therapy,Combination”,Survival Analysis,disease—free survival,relapse—free survival,Survival Rate,Treatment Outcomeのキーワードを用いて検索した。

参考文献

1) Cuzick J, Sestak I, Baum M, Buzdar A, Howell A, Dowsett M, et al;ATAC/LATTE investigators. Effect of anastrozole and tamoxifen as adjuvant treatment for early—stage breast cancer:10—year analysis of the ATAC trial. Lancet Oncol. 2010;11(12):1135—41.
→PubMed

2) Regan MM, Neven P, Giobbie—Hurder A, Goldhirsch A, Ejlertsen B, Mauriac L, et al;BIG 1—98 Collaborative Group;International Breast Cancer Study Group(IBCSG). Assessment of letrozole and tamoxifen alone and in sequence for postmenopausal women with steroid hormone receptor—positive breast cancer:the BIG 1—98 randomised clinical trial at 8・1 years median follow—up. Lancet Oncol. 2011;12(12):1101—8.
→PubMed

3) van de Velde CJ, Rea D, Seynaeve C, Putter H, Hasenburg A, Vannetzel JM, et al. Adjuvant tamoxifen and exemestane in early breast cancer(TEAM):a randomised phase 3 trial. Lancet. 2011;377(9762):321—31.
→PubMed

4) Gnant M, Mlineritsch B, Stoeger H, Luschin—Ebengreuth G, Heck D, Menzel C, et al;Austrian Breast and Colorectal Cancer Study Group, Vienna, Austria. Adjuvant endocrine therapy plus zoledronic acid in premenopausal women with early—stage breast cancer:62—month follow—up from the ABCSG—12 randomised trial. Lancet Oncol. 2011;12(7):631—41.
→PubMed

5) Pfeiler G, Königsberg R, Fesl C, Mlineritsch B, Stoeger H, Singer CF, et al. Impact of body mass index on the efficacy of endocrine therapy in premenopausal patients with breast cancer:an analysis of the prospective ABCSG—12 trial. J Clin Oncol. 2011;29(19):2653—9.
→PubMed

6) Gnant M, Mlineritsch B, Luschin—Ebengreuth G, Kainberger F, Kässmann H, Piswanger—Sölkner JC, et al;Austrian Breast and Colorectal Cancer Study Group(ABCSG). Adjuvant endocrine therapy plus zoledronic acid in premenopausal women with early—stage breast cancer:5—year follow—up of the ABCSG—12 bone—mineral density substudy. Lancet Oncol. 2008;9(9):840—9.
→PubMed

7) Pagani O, Regan MM, Walley BA, Fleming GF, Colleoni M, Láng I, et al;TEXT and SOFT Investigators;International Breast Cancer Study Group. Adjuvant exemestane with ovarian suppression in premenopausal breast cancer. N Engl J Med. 2014;371(2):107—18.
→PubMed

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