日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

原発乳癌に対するdose-dense 化学療法は勧められるか (薬物療法・初期治療・ID10170)

CQ16 乳癌診療ガイドライン1治療編(062-063ページ)
推奨グレード B 投与間隔を短縮したdose—dense化学療法は勧められる。

推奨グレードを決めるにあたって

 Dose—dense化学療法とそれまでの標準化学療法を比較した統合解析において,dose—dense化学療法群においてそれぞれ16%,17%の再発率低下,死亡率低下が示されているため,グレードBとした。

背景・目的

 Norton—Simonの仮説1)に基づき化学療法薬の投与間隔を短縮するdose—dense(DD)化学療法が,術後乳癌患者において有用であるかどうかを検討した。狭義のDD化学療法とはG—CSF補助を併用し,薬剤量は減らさず投与間隔を短くする方法をいう。広義にはG—CSFの併用なしに薬剤量を減らし,投与間隔を短縮したものも含まれる。

解 説

 術後乳癌に対するDD化学療法の仮説を純粋に検証した試験はCALGB 97412)である。ドキソルビシン,パクリタキセル,シクロホスファミドのDDを高めた投与間隔と標準的な投与間隔の有用性の比較検討,および順次投与とドキソルビシンとシクロホスファミドの同時投与後にパクリタキセルを投与した場合の有用性を比較検討した。3週と2週毎のDDの比較と順次と同時の投与順序の比較を2×2 factorial designによって行った。観察期間3年の中間解析1)では,DD化学療法は有害事象の増加なく,予後を改善した。しかし,DD群ではG—CSFが予防的に併用され,貧血に対する輸血の頻度が高かった。

 ドイツからの報告ではリンパ節転移4個以上の術後乳癌に対してエピルビシン,パクリタキセル,シクロホスファミドの順次投与するDD化学療法についてエピルビシンとシクロホスファミドの同時投与後にパクリタキセルを投与した場合と比較した3)。観察期間62カ月ではRFS,OSともにDD化学療法が有意に優れていたが,両群で各薬剤の総投与量が異なり,純粋にDDを上げた効果を検証した試験とはいえない。

 ECOG 1199ではDD化学療法の一つの形態であるとしてG—CSFを使用しないタキサン毎週投与方法を3週1回投与と比較している。ACに引き続くドセタキセルまたはパクリタキセルのそれぞれの週1回投与(DD化学療法)と3週1回投与をランダム化比較した。DD化学療法のパクリタキセルが3週1回投与よりDFS,OSともに優れていた4)。ドセタキセルにおいてはDD化学療法と3週1回投与との間にDFS,OSの改善は認められなかった。この試験も毎週投与群と3週投与群で投与量が異なり,狭義のDD化学療法の効果を検証した試験ではない。

 さらに,GIM2ではFEC療法,あるいはEC療法に引き続くパクリタキセルの3週毎あるいは2週毎投与が比較され2週群の5年における無増悪生存率(HR:0.77,95%CI:0.65—0.92,p=0.004),生存率(HR:0.65,95%CI:0.51—0.84,p=0.001)ともに優れていた。しかし,2週群では副作用としてグレード3,4の貧血がより多く認められている。FEC療法のEF療法に対する優越性は証明されず,嘔気,発熱,骨髄抑制などの副作用の増加が報告されている5)

 DD化学療法とconventionalな投与方法との比較試験の統合解析が報告されている6)(JNCI 2010)。化学療法の種類や量が同じで,投与間隔が単順に異なる試験が前出の3つの試験と,化学療法の種類,量,投与間隔を変えた7つの比較試験のそれぞれ統合解析を行っている。いずれの場合も,DD化学療法群において,DFS,OSの有意な改善を認めているが(n=3,337,HR:0.84,95%CI:0.72—0.98;HR:0.83,95%CI:0.73—0.94;n=8,652,HR:0.85,95%CI:0.75—0.96;HR:0.81,95%CI:0.73—0.88),特にホルモン受容体陰性の患者群においてDD化学療法群が良好であった。ホルモン受容体陽性患者では有意な差を認めていない6)

 以上より,原発乳癌患者の周術期療法としてDD化学療法は有用である。

検索式・参考にした二次資料

 UpToDate 2014,およびSan Antonio Breast Cancer Symposium,American Society of Clinical Oncologyの抄録を参考に作成した。

参考文献

1) Norton L, Simon R. Tumor size, sensitivity to therapy, and design of treatment schedules. Cancer Treat Rep. 1977;61(7):1307‒17.
→PubMed

2) Citron ML, Berry DA, Cirrincione C, Hudis C, Winer EP, Gradishar WJ, et al. Randomized trial of dose‒dense versus conventionally scheduled and sequential versus concurrent combination chemotherapy as postoperative adjuvant treatment of node‒positive primary breast cancer:first report of Intergroup Trial C9741/Cancer and Leukemia Group B Trial 9741. J Clin Oncol. 2003;21(8):1431‒9.
→PubMed

3) Moebus VJ, Lueck HJ, Thomssen C, Kuhn W, Kurbacher C, Nitz U, et al. Dosedense sequential chemotherapy with epirubicin (E), paclitaxel (T)and cyclophosphamide (C)(ETC)in comparison to conventional schedule chemotherapy in high‒risk breast cancer patients (≥4 LN). Mature results of an AGO‒trial, SABCS 2006 (abstract 43).

4) Sparano JA, Wang M, Martino S, Jones V, Perez EA, Saphner T, et al. Weekly paclitaxel in the adjuvant treatment of breast cancer. N Engl J Med. 2008;358(16):1663‒71.
→PubMed

5) Del Mastro L, De Placido S, Bruzzi P, De Laurentiis M, Boni C, Cavazzini G, et al. Fluorouracil and dose‒dense chemotherapy in adjuvant treatment of patients with early‒stage breast cancer:an open‒label, 2×2 factorial, randomised phase 3 trial. Lancet. 2015. pii:S0140‒6736(14)62048‒1.
→PubMed

6) Bonilla L, Ben‒Aharon I, Vidal L, Gafter‒Gvili A, Leibovici L, Stemmer SM. Dose‒dense chemotherapy in nonmetastatic breast cancer:a systematic review and meta‒analysis of randomized controlled trials. J Natl Cancer Inst. 2010;102(24):1845‒54.
→PubMed

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.