日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

閉経後ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌に対して内分泌療法は勧められるか (薬物療法・転移.再発乳癌の治療・ID10200)

一次内分泌療法 

CQ18-a 乳癌診療ガイドライン1治療編(073-075ページ)
推奨グレード A アロマターゼ阻害薬が強く勧められる。

推奨グレードを決めるにあたって

 タモキシフェンを標準治療とし,試験治療を第三世代アロマターゼ阻害薬として行われた複数の比較試験およびメタアナリシスの結果から,一次内分泌治療薬としてのアロマターゼ阻害薬を,グレードAとした。

背景・目的

 閉経後ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌に対して,生命に危険を及ぼす転移がない場合は,まず内分泌療法を考慮すべきである。しかし,転移・再発乳癌にはStage Ⅳなどの内分泌療法未治療例もあれば,術後内分泌療法後の転移・再発乳癌もある。前治療の有無,術後薬物療法終了からの期間等も考慮し,一次治療の手段としてどのような治療が推奨されるか検証した。

解 説

(1)内分泌療法抵抗性

 内分泌療法抵抗性に関しては,明確な基準はないものの,術後内分泌療法終了から再発までの期間を一つの基準としていることが多い。術後内分泌療法投与中および終了後時間が経過していない場合の再発では内分泌療法抵抗性があり,一方,術後内分泌療法終了後時間が経過している場合の再発では内分泌療法抵抗性がないと考えられている。臨床試験では,この内分泌療法抵抗性を分ける術後内分泌療法終了後の期間を12カ月としていることが多い。

 これらを踏まえ,一次内分泌療法の定義は,Stage Ⅳ乳癌および周術期に内分泌療法未使用の再発乳癌,あるいは,術後内分泌療法終了後時間が経過している(約12カ月以上)経過した再発乳癌に対する初回の内分泌療法とする。この場合,術後内分泌療法として用いた薬の再投与も可能である。

 二次治療の定義は,一次内分泌療法抵抗性乳癌に対する次の内分泌療法である。つまり,一次内分泌療法中および治療後の増悪,あるいは,周術期に内分泌療法使用の場合は,内分泌療法投与中および終了から時間が経過していない(約12カ月以内)に再発した乳癌に対する治療とする。

(2)一次内分泌療法のエビデンス

 閉経後ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌の一次内分泌療法として抗エストロゲン薬(タモキシフェン,トレミフェン),フルベストラント,アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール,レトロゾール,エキセメスタン)が挙げられる。一次内分泌療法として,それぞれの薬を比較したランダム化比較試験やメタアナリシスの結果が報告されている。

①第三世代アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの比較試験
 閉経後再発乳癌の一次治療としてアナストロゾールとタモキシフェンを比較した2つの第Ⅲ相試験の統合解析(n=1,021)が報告されている1)。全体では両群間のTTPに差はなかったが,ホルモン受容体陽性(n=611)に絞った後向き解析では,アナストロゾール群のTTPが延長した。また,別の第Ⅲ相試験(n=238)でもアナストロゾールの効果が優れていた(OS中央値17.4カ月vs 16.0カ月,HR:0.64,95%CI:0.47—0.86)2)。有害事象については,血栓症はアナストロゾール群でタモキシフェン群より有意に少なく,不正出血,浮腫やホットフラッシュはアナストロゾール群で少ない傾向にあり,全体の発生率はアナストロゾール群で少なかった。

 レトロゾールとタモキシフェンの再発一次治療(n=916)の比較試験においても同様にOS中央値34カ月vs 30カ月とレトロゾールのほうが治療効果が高かった。また,有害事象による投与中止は両者に差を認めなかった。レトロゾールの有害事象についてはタモキシフェンとほぼ同等であった。

 エキセメスタンについては,閉経後転移・再発乳癌(n=371)を対象にした非盲検第Ⅲ相試験で,PFS,奏効率においてエキセメスタン群がタモキシフェン群に比し有意に良好であった。OSに有意差はなかった。

 アロマターゼ阻害薬と当時の標準治療との比較試験のメタアナリシス(22試験,n=8,504)におけるOSの検討では,第三世代アロマターゼ阻害薬〔volozole(未承認),アナストロゾール,レトロゾール,エキセメスタン〕は標準治療に比較し,OSを改善した〔HR:0.87(95%CI:0.86—0.96)〕3)。一次治療における第三世代アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンとの比較〔4試験,n=2,195,HR:0.89(95%CI:0.81—0.99)〕においてもOSの改善をみとめた。

 第三世代アロマターゼ阻害薬同士の比較であるエキセメスタンとアナストロゾールの比較試験ではTTP,OSに差はなかった4)

 以上からタモキシフェンと比べ第三世代アロマターゼ阻害薬は予後を改善する。

②フルベストラントとタモキシフェンやアロマターゼ阻害薬との比較
 フルベストラント250 mgとタモキシフェンの二重盲検ランダム化比較試験が587人を対象に行われた。観察期間14.5カ月(中央値)で,TTP 6.8カ月vs 8.3カ月(HR:1.18,95%CI:0.98—1.44)とタモキシフェン群のほうが良好であったが統計学的有意差はなかった2)。フルベストラント500 mgとアナストロゾール1 mgの閉経後再発乳癌一次治療のランダム化第Ⅱ相試験の最終報告5)では,TTP 23.4カ月vs 13.1カ月;(HR:0.66,95%CI:0.47—0.92),OS 54.1カ月vs 48.4カ月(HR:0.70,95%CI:0.50—0.98)とフルベストラント500 mgの効果が高い可能性が示された。

 アナストロゾール+フルベストラント併用群とアナストロゾール単独群の一次治療のランダム化第Ⅲ相試験のFACTとSWOG 0226の2つの統合解析が報告された。両群間にOS(HR:0.88,95%CI:0.72—1.08)と差がなく,フルベストラントの上乗せ効果は認められていない6)

 以上よりフルベストラント500 mg単独投与はアナストロゾールと同等以上の効果が期待されるが,一次療法として推奨するには現在進行中である第Ⅲ相試験(FALCON)の結果を待つ必要がある。

(3)一次内分泌療法の治療方針

 以上より,閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する一次内分泌療法としてアロマターゼ阻害薬が推奨される。

 二次以降の内分泌療法

CQ18-b 乳癌診療ガイドライン1治療編(075-078ページ)
推奨グレード  A タモキシフェン耐性乳癌に対してアロマターゼ阻害薬は強く勧められる。
B  アロマターゼ阻害薬耐性乳癌に対して以下の内分泌治療薬は勧められる。
・タモキシフェン,トレミフェン,フルベストラント
・ステロイドアロマターゼ阻害薬耐性の場合,上記に加え非ステロイドアロマターゼ阻害薬
・非ステロイドアロマターゼ阻害薬耐性の場合,上記に加えエキセメスタン±エベロリムス

推奨グレードを決めるにあたって

 タモキシフェン耐性に対する二次治療についてはエビデンスレベルの高い報告が多く,結果も一貫しており,グレードAとした。一方,アロマターゼ阻害薬耐性に対する二次治療については比較試験の結果が少ないが,転移・再発乳癌に対する内分泌療法の基本は,少しでも内分泌感受性があると判断され,生命に危険を及ぼさない転移であれば可能な限り内分泌療法を継続することであり,グレードBとした。

背景・目的

 ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌に対する治療方針は,生命に危険の及ばない状態であれば可能な限り内分泌療法の継続することである。一次内分泌療法で効果が認められた転移・再発乳癌には,一次内分泌療法抵抗性となっても二次内分泌療法の効果が期待できる。さらに,二次内分泌療法に効果が得られた場合は三次内分泌療法においても効果が期待される。そこで一次内分泌療法抵抗性転移・再発乳癌の二次以降の内分泌療法としてどのような治療が推奨されるか検証した。

解 説

(1)タモキシフェン抵抗性の二次内分泌療法

 前述のアロマターゼ阻害薬と当時の標準治療の比較試験のメタアナリシスにおける二次治療以降での第Ⅲ世代アロマターゼ阻害薬とプロゲスチンとの比較(5試験,n=3,138)において,有意なOS改善(HR:0.86,95%CI:0.79—0.94)を認めている3)

 抗エストロゲン薬耐性となった閉経後進行再発乳癌713人に対するレトロゾールとアナストロゾールのランダム化比較試験の報告がある。奏効率はレトロゾールで良好であったがTTF,OSは両群間に差がなかった。

 同様にアナストロゾールとエキセメスタンとの比較4),アナストロゾールとレトロゾールの比較ではそれぞれ両群間の効果に有意差はなかった。このことから二次内分泌療法での第三世代アロマターゼ阻害薬の効果は同等といえる。

 二次内分泌療法としての酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の効果は,転移・再発乳癌に対して6カ月以上のタモキシフェン投与後の増悪例に対するタモキシフェン+MPAとMPA単独とのランダム化比較試験(n=215)で示されている7)。この試験では,MPA単独(n=106)では奏効率9%,TTP 4.5カ月,OS 18.4カ月の結果が得られており,タモキシフェン+MPA群と治療効果は同等であった。MPAは,血栓症や体重増加などの有害事象の面を考慮すると三次内分泌療法以降での使用が望ましい。

 タモキシフェン既治療後の二次治療としてフルベストラント250 mg群とアナストロゾール1 mg群の比較第Ⅲ相試験(n=432)では,奏効率,TTP,ともフルベストラント250 mg群とアナストロゾール1 mg群間の有意差はみられなかった8)。骨関連有害事象は0.9% vs 1.2%とフルベストラント250 mg群が有意に少ない傾向であった。

(2)アロマターゼ阻害薬耐性後の二次以降の内分泌療法

 非ステロイド系アロマターゼ阻害薬投与後の再発乳癌693人に対するフルベストラントとエキセメスタンとの比較試験ではTTP中央値(3.7カ月vs 3.7カ月;HR:0.963,95%CI:0.819—1.133),ORR 7.4% vs 6.7%,CBR 32.2% vs 31.5%,と両群間に有意差はなかった9)

 フルベストラントの効果には用量依存性があることが知られており,これを検証するためにフルベストラントの投与量(500 mg vs 250 mg)による第Ⅲ相試験10)(CONFIRM,n=736)が行われた。フルベストラント500 mgは250 mgに比較しPFS(6.5カ月vs. 5.5カ月,HR:0.80,95%CI:0.68—0.94)を延長した。最終解析では統計学的に有意とはいえないがOS〔26.4カ月vs 22.3カ月;HR:0.81(95%CI:0.69—0.96)〕を改善した。重篤な有害事象について両群間差を認めないことからフルベストラントの至適投与量として500 mgが推奨された。

 非ステロイド系アロマターゼ阻害薬に耐性となった91人をトレミフェン120 mgとエキセメスタン25 mgにランダム化し臨床的有用率を検討した第Ⅱ相試験では,トレミフェン群44.2%に対してエキセメスタン群26.7%であり,トレミフェン群が優れる傾向にあった11)。PFSの中央値はトレミフェン群5.9カ月に対してエキセメスタン群3.5カ月であり,トレミフェン群が良好であった(HR:0.62,p=0.047)。

 二重盲検ランダム化比較第Ⅲ相試験BOLERO—2において,PI3K/AKT経路の下流に位置し癌細胞の生存,増殖に重要な役割を果たすmTOR(mammalian target of rapamycin)の阻害薬であるエベロリムスのエキセメスタンへの上乗せ効果が検証された12)。エベロリムスとエキセメスタン併用はエキセメスタン単独に比較し,PFS(6.9カ月vs 2.8カ月,HR:0.43,95%CI:0.35—0.54)を有意に延長した。しかしながら,本試験の最終解析ではOS(31.0カ月vs 26.6カ月,HR:0.89,95%CI:0.73—1.1)の有意な延長は得られなかった。治療関連グレード3,4以上の有害事象が40.9%(コントロール8.4%),治療継続困難となる有害事象が29.0%(コントロール5.0%)があり,使用に際しては十分な副作用対策が必要である。

(3)二次内分泌療法の治療方針

 以上より,タモキシフェン耐性の二次内分泌療法としては,アロマターゼ阻害薬やフルベストラントが有用である。また,アロマターゼ阻害薬耐性の二次内分泌療法としては,フルベストラント,SERM(タモキシフェン,トレミフェン),作用機序が異なるアロマターゼ阻害薬が有用と考えられる。mTOR阻害薬とアロマターゼ阻害薬の併用に関しては,PFSの大幅な延長や高い臨床的有用性が確認されているが,有害事象が高頻度であることも報告されているため適応に十分注意して使用する。

 二次内分泌療法で治療効果が得られた場合は生命予後に影響するような病勢進行でなければ三次内分泌療法を行う。この三次内分泌療法で使用する内分泌療法薬は一次,二次内分泌療法で用いられていない薬を選択する。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Breast Neoplasms/drug therapy,Hormone Replacement Therapy,“Antineoplastic Agents,Hormonal”,Neoplasm Metastasis,secondary,Metastasis,metasta,recurrenのキーワードを用いて検索し,さらに検索結果を症例報告を除いた治療に関する文献に限定した。加えて重要文献をハンドサーチで検索した。ほかにUpToDate 2014の“Treatment approach to metastatic hormone receptor—positive breast cancer:Endocrine therapy”の項を参考にした。

 参考文献

1) Bonneterre J, Buzdar A, Nabholtz JM, Robertson JF, Thürlimann B, von Euler M, et al;Arimidex Writing Committee;Investigators Committee Members. Anastrozole is superior to tamoxifen as first‒line therapy in hormone receptor positive advanced breast carcinoma. Cancer. 2001;92(9):2247‒58.
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2) Howell A, Robertson JF, Abram P, Lichinitser MR, Elledge R, Bajetta E, et al. Comparison of fulvestrant versus tamoxifen for the treatment of advanced breast cancer in postmenopausal women previously untreated with endocrine therapy:a multinational, double‒blind, randomized trial. J Clin Oncol. 2004;22(9):1605‒13.
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3) Mauri D, Pavlidis N, Polyzos NP, Ioannidis JP. Survival with aromatase inhibitors and inactivators versus standard hormonal therapy in advanced breast cancer:meta‒analysis. J Natl Cancer Inst. 2006;98(18):1285‒91.
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4) Campos SM, Guastalla JP, Subar M, Abreu P, Winer EP, Cameron DA. A comparative study of exemestane versus anastrozole in patients with postmenopausal breast cancer with visceral metastases. Clin Breast Cancer. 2009;9(1):39‒44.
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5) Robertson JF, Lindemann JP, Llombart‒Cussac A, Rolski J, Feltl D, Dewar J, et al. Fulvestrant 500 mg versus anastrozole 1 mg for the first‒line treatment of advanced breast cancer:follow‒up analysis from the randomized ‘FIRST’ study. Breast Cancer Res Treat. 2012;136(2):503‒11.
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6) Tan PS, Haaland B, Montero AJ, Lopes G. A meta‒analysis of anastrozole in combination with fulvestrant in the first line treatment of hormone receptor positive advanced breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2013;138(3):961‒5.
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7) Byrne MJ, Gebski V, Forbes J, Tattersall MH, Simes RJ, Coates AS, et al. Medroxyprogesterone acetate addition or substitution for tamoxifen in advanced tamoxifen‒resistant breast cancer:a phase Ⅲ randomized trial. Australian‒New Zealand Breast Cancer Trials Group. J Clin Oncol. 1997;15(9):3141‒8.
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8) Robertson JF, Osborne CK, Howell A, Jones SE, Mauriac L, Ellis M, et al. Fulvestrant versus anastrozole for the treatment of advanced breast carcinoma in postmenopausal women:a prospective combined analysis of two multicenter trials. Cancer. 2003;98(2):229‒38.
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9) Chia S, Gradishar W, Mauriac L, Bines J, Amant F, Federico M, et al. Double‒blind, randomized placebo controlled trial of fulvestrant compared with exemestane after prior nonsteroidal aromatase inhibitor therapy in postmenopausal women with hormone receptor‒positive, advanced breast cancer:results from EFECT. J Clin Oncol. 2008;26(10):1664‒70.
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10) Di Leo A, Jerusalem G, Petruzelka L, Torres R, Bondarenko IN, Khasanov R, et al. Final overall survival:fulvestrant 500 mg vs 250 mg in the randomized CONFIRM trial. J Natl Cancer Inst. 2014;106(1):djt337.
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12) Baselga J, Campone M, Piccart M, Burris HA 3rd, Rugo HS, Sahmoud T, et al. Everolimus in postmenopausal hormone‒receptor‒positive advanced breast cancer. N Engl J Med. 2012;366(6):520‒9.
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