日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

局所再発切除後に薬物療法は勧められるか (薬物療法・転移・再発乳癌の治療・ID10280)

CQ26 乳癌診療ガイドライン1治療編(109-111ページ)
推奨グレード B ホルモン受容体陽性の局所再発切除後に内分泌療法は勧められる。
C1 局所再発切除後の化学療法は考慮してもよい。

推奨グレードを決めるにあたって

 局所再発切除後の薬物療法に関するランダム化比較試験の報告はあるが,術後のタモキシフェン投与と化学療法に関する2つの報告に限られ,いずれもサンプルサイズは小さい。どちらの試験もその有効性を示唆する結果である。内分泌療法は忍容性も高いため,グレードBとした。化学療法については,再発巣のERが陽性の場合は予後改善効果が低い可能性があるため,グレードC1とした。

背景・目的

 原発乳癌術後の化学療法や内分泌療法により予後が改善する。原発乳癌術後の遠隔転移を伴わない同側の胸壁,所属リンパ節および温存乳房内などの局所再発切除術後の薬物治療により,その後の予後が改善するかについて検証した(外科CQ 26放射線CQ 17参照)。

解 説

 原発乳癌術後で遠隔転移のない局所再発症例では,その後に遠隔転移を発症する割合が高く,予後不良であると報告されている1)。NSABPが施行した,腋窩リンパ節転移陽性患者に対する乳房温存手術の5つの臨床試験(B—15,B—16,B—18,B—22,B—25,計n=2,669)の統合解析結果から,温存乳房内再発率は9.7%,他の局所再発(同側胸壁および所属リンパ節)率は6.2%と報告され,温存乳房内再発後の5年distant DFSは51.4%,他の局所再発後では18.8%,また再発後の5年生存割合はおのおの59.9%および24.1%であった2)。さらに,NSABPが施行した腋窩リンパ節転移陰性患者に対する乳房温存手術の5つの臨床試験(B—13,B—14,B—19,B—20,B—23,n=3,799)の統合解析では,温存乳房内再発率は9.0%,他の局所再発率は2.0%と報告されており,温存乳房内再発後の5年生存割合は76.6%,他の局所再発後は34.9%であった3)

 原発乳癌術後の化学療法や内分泌療法については多くの臨床試験の結果から予後の改善が期待できる。しかし,局所再発切除後の薬物療法についての報告は限られている。局所再発切除後の薬物療法の有効性に関するランダム化第Ⅲ相比較試験の報告は2つあるが,いずれもサンプルサイズは小さい。局所再発切除後の内分泌療法の有効性に関する前向きの第Ⅲ相比較試験/SAKK 23/82(n=167,1982~1991)4)がSwiss Group for Clinical Cancer Research(SAKK)により行われた。原発乳癌に対して乳房切除後(術後タモキシフェンは全例未投与)の局所再発(同側胸壁,所属リンパ節再発)のうち,Good riskと以下のように定義した,DFI>12カ月,再発巣のエストロゲン受容体が陽性または不明,再発巣4個以下で最大3 cm以下の症例を対象として,局所再発切除と術後放射線照射施行後に無作為化し,タモキシフェン投与群と経過観察の2群に分けて検討した。観察期間の中央値11.6年の時点で局所再発切除後のDFSの中央値はタモキシフェン投与群で6.5年,経過観察群で2.7年(p=0.053)であった。5年DFSはタモキシフェン投与群で61%,経過観察群で40%であった。OSの中央値はタモキシフェン投与群で11.5年,経過観察群で11.2年と両群で差はなかった。

 局所再発切除後の化学療法の有効性に関する前向きの第Ⅲ相比較試験,CALOR(n=162,2003~2010)5)は当初予定の977症例から途中265例へとサンプルサイズの変更をしたが,症例の集積が遅く試験が早期終了した。その結果について報告されている。乳房切除または乳房温存手術後の局所再発(温存乳房,胸壁および所属リンパ節)切除例を対象として,術後化学療法(担当医選択)施行群と非施行群の2群で予後について比較検討している。本試験では上述のSAKK23/82の試験結果を考慮して再発巣のエストロゲン受容体陽性では再発切除後内分泌療法が行われている。また,病理学的断端陽性では放射線照射が施行されている。観察期間の中央値4.9年の時点で局所再発切除後の5年DFSは化学療法施行群で69%,非施行群で57%(HR:0.59,95%CI:0.35—0.99),5年OSは化学療法施行群で88%,非施行群で76%(HR:0.41,95%CI:0.19—0.89)であった。再発巣のERの発現別のサブセット解析では,ER陰性群において術後化学療法による5年DFS(67% vs 35%)の改善がみられ(HR:0.32,95%CI:0.14—0.73),ER陽性群(70% vs 69%)(HR:0.94,95%CI:0.47—1.89)とは改善効果に相違を認めた。また,原発巣のERの発現状況別で差はなかった。CALORより以前にも,同様に局所再発切除後における化学療法の有効性に関する第Ⅲ相比較試験が計画されたが症例の集積が進まず結果の報告には至っていない6)

 以上より,局所再発切除後の内分泌療法によりDFSの延長が,さらに化学療法によりDFSおよびOSの延長が期待できる可能性がある。内分泌療法については限られた症例数によるアロマターゼ阻害薬登場前の試験結果であること,再発巣のエストロゲン受容体陽性例で検討されていること,至適投与期間が不明なことなどに留意が必要である。化学療法については,早期終了となった試験の結果であること,観察期間が短いこと,至適レジメンが不明であること,再発巣のエストロゲン受容体陽性例では予後改善効果が低い可能性があることに留意が必要である。いずれにせよ,今後新たに局所再発術後の薬物療法の有効性に関する報告は期待しにくいため,原発乳癌術後の薬物療法のエビデンスを参考に,初回手術後に用いた薬剤の種類,再発までの期間および患者の嗜好・合併症を考慮して個別に検討すべきと考えられる7)8)

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Breast Neoplasms,Neoplasm Recurrence,adjuvant therapy,Postoperative Care,Local recurrence,isolated,local therapyのキーワードを用いて検索した。加えて重要文献をハンドサーチで検索した。

参考文献

1) Wapnir IL, Aebi S, Geyer CE, Zahrieh D, Gelber RD, Anderson SJ, et al;IBCSG;BIG;NSABP. A randomized clinical trial of adjuvant chemotherapy for radically resected locoregional relapse of breast cancer:IBCSG 27‒02, BIG 1‒02, and NSABP B‒37. Clin Breast Cancer. 2008;8(3):287‒92.
→PubMed

2) Wapnir IL, Anderson SJ, Mamounas EP, Geyer CE Jr, Jeong JH, Tan‒Chiu E, et al. Prognosis after ipsilateral breast tumor recurrence and locoregional recurrences in five National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project node‒positive adjuvant breast cancer trials. J Clin Oncol. 2006;24(13):2028‒37.
→PubMed

3) Anderson SJ, Wapnir I, Dignam JJ, Fisher B, Mamounas EP, Jeong JH, et al. Prognosis after ipsilateral breast tumor recurrence and locoregional recurrences in patients treated by breast‒conserving therapy in five National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project protocols of node‒negative breast cancer. J Clin Oncol. 2009;27(15):2466‒73.
→PubMed

4) Waeber M, Castiglione‒Gertsch M, Dietrich D, Thürlimann B, Goldhirsch A, Brunner KW, et al;Swiss Group for Clinical Cancer Research (SAKK). Adjuvant therapy after excision and radiation of isolated postmastectomy locoregional breast cancer recurrence:definitive results of a phase Ⅲ randomized trial (SAKK 23/82) comparing tamoxifen with observation. Ann Oncol. 2003;14(8):1215‒21.
→PubMed

5) Aebi S, Gelber S, Anderson SJ, Láng I, Robidoux A, Martín M, et al;CALOR investigators. Chemotherapy for isolated locoregional recurrence of breast cancer (CALOR):a randomised trial. Lancet Oncol. 2014;15(2):156‒63.
→PubMed

6) Rauschecker H, Clarke M, Gatzemeier W, Recht A. Systemic therapy for treating locoregional recurrence in women with breast cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2001;(4):CD002195.
→PubMed

7) NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Breast Cancer ver3. 2014. http://www.nccn.org

8) Cardoso F, Costa A, Norton L, Senkus E, Aapro M, André F, et al. ESO‒ESMO 2nd international consensus guidelines for advanced breast cancer (ABC2). Ann Oncol. 2014;25(10):1871‒88.
→PubMed

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