日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

総論 (薬物療法・副作用対策・ID10420)

乳癌診療ガイドライン1治療編(159-166ページ)

 化学療法による副作用は,主に正常細胞が化学療法により傷害されることにより発生する。副作用は薬剤により異なるが,悪心・嘔吐,脱毛,心毒性,血液毒性,皮膚・爪障害,末梢神経障害,二次がん,薬物代謝による肝障害や腎障害など多岐にわたっており,治療を継続するためにはこれらの副作用のマネージメントが必須である。長い期間投与用量を制限する主な副作用であった,悪心・嘔吐と白血球減少症については,有効な治療法が開発されてきたものの(薬物CQ 39,40参照),他の副作用については対処が難しいものも少なくない。

 内分泌療法による副作用は薬剤ごとに異なるものの,主には女性ホルモンを抑制するために起こる。ほてり,発汗,動悸などの更年期障害様の症状が主である。これに加えて,卵巣機能抑制療法では,骨塩量の減少が起こる。タモキシフェンの重篤な副作用として,深部静脈血栓症と閉経後女性における子宮内膜癌の増加が挙げられるが,日本人のデータは限定的である。アロマターゼ阻害薬の重篤な副作用としては,骨塩量の低下と骨折が挙げられるが,これも日本人のデータは限定的である。

 抗HER2療法は,化学療法併用時に心毒性が増加するものの,アンスラサイクリンによる心毒性と異なり重篤になることは少なく,多くは可逆的である。

 なお,薬物療法で起こり得る副作用の対策法のうち,比較的エビデンスのあるものをクリニカルクエスチョンで取り上げ,あまりエビデンスのないものに関しては,以下に概説した。

1.内分泌療法
(1)脱 毛

 アロマターゼ阻害薬により頭髪が薄くなる場合がある。エストロゲンの減少によるものと思われるが,有効な対処方法は報告されていない。

(2)タモキシフェンによる子宮悪性腫瘍(子宮内膜癌と子宮肉腫)

 タモキシフェンは子宮内膜癌と子宮肉腫の発症リスクの症状に関与している。

 乳癌化学予防の臨床試験であるNSABP P—1(n=13,388)の結果1)によると,タモキシフェン5年内服による子宮内膜癌の相対リスクは3.28(95%CI:1.87—6.03)であった。子宮肉腫は試験全体で4例認め,うち3例はタモキシフェン群であった。子宮内膜癌は試験全体で70例(プラセボ群17例,タモキシフェン群53例)であったが,うち67例(96%)は病期Ⅰであり,早期に発見されるという結果であった。また,子宮内膜癌の増加は50歳以上の女性に認められたが,50歳未満の女性では両群に差はなかった。タモキシフェン5年内服とタモキシフェン内服なしを比較した20試験(n=10,645)を対象としたEBCTCGのメタアナリシス2)では,子宮内膜癌リスクは2.4倍に増加した。タモキシフェンによる子宮内膜癌リスクは,タモキシフェンの内服期間が長くなるほど発症リスクは増加するが3),内服を中止すれば子宮内膜癌リスクは低下することも知られている4)

 子宮肉腫はタモキシフェン内服によりわずかではあるが増加することがわかった5)。浸潤性乳癌の術後療法としてタモキシフェンを内服する場合には臨床的に問題となることはないが,非浸潤性乳癌に対する乳房内再発目的にタモキシフェン治療を考慮する場合には予後不良の本疾患は留意しておく必要があると考えられる。

 以上より,特に閉経後患者に対しては,タモキシフェン内服による上記のリスクを説明したうえで,不正出血などの症状があればすぐに連絡するように説明しておくことが重要である。また,タモキシフェン内服前にすでに良性の子宮ポリープがあるような「子宮内膜癌高リスク患者」でない限り,定期的な子宮体癌検診は,子宮内膜癌の早期発見に有効であるというエビデンスないことに加えて,子宮に対してより侵襲的な検査を行うことが多くなるなどの不利益を考慮して推奨されない67

(3)アロマターゼ阻害薬に関連した関節痛

 アロマターゼ阻害薬を使用すると,関節のこわばりや痛みが高率に出現する。ランダム化比較試験での報告ではアロマターゼ阻害薬を使用した治療群の15~25%程度に関節症状が出現している。しかし,実臨床ではもっと頻度が高いことが示唆されており,アロマターゼ阻害薬を使用した47%が関節痛を訴えたとする報告もある8)。典型的には内服開始後2カ月以内に起こり,治療中に消失することはほとんどないが,内服を止めると通常消失する。この関節症状は炎症によるものではなく,エストロゲンが枯渇したために二次的に起こると考えられる。

 関節症状に対する対症療法として,非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs),アセトアミノフェン,オピオイドなどが比較的有効で,使用した過半数の患者で効果が得られるとする報告もある。対症療法で対処困難な場合には,治療を中止するのではなく,他の内分泌療法薬(他のアロマターゼ阻害薬やタモキシフェン)を試みるべきである。アナストロゾール内服中に筋肉・骨症状のために内服中止となった患者に,レトロゾールに切り替えて治療を継続したところ,6カ月の時点で71.5%の患者で治療が継続できていたとする前向き研究結果がある9)

 鍼治療がアロマターゼ阻害薬による関節痛やこわばりに効果があることが,ランダム化比較試験で証明されている10)

2.化学療法
(1)脱 毛

 化学療法による脱毛は,患者に精神的なダメージを与え,患者が化学療法を拒否する大きな要因ともなる。

 化学療法による脱毛を予防する方法には大きく分けて2つある。一つは,①頭皮へ到達する化学療法薬の量を減少させる方法であり,もう一つが,②薬物による脱毛予防である。

 頭皮へ到達する化学療法薬の量を減少させる方法には,さらに,①頭皮の冷却,および②ターニケット(圧迫包帯)を用いた方法,がある。頭皮の冷却については比較的多くの研究結果が報告されている。頭皮の冷却による脱毛予防のメカニズムとしては2つの要因が考えられている。一つ目は,冷却によりその部の血管の収縮が起こり,毛囊の細胞への薬物の取り込み量を減少させること,二つ目は冷却により毛囊の細胞の生化学的な活性が下がり,薬物によるダメージを下げることである。化学療法による脱毛予防目的とした,頭皮冷却に関する3つのランダム化比較試験と7つの症例対照研究を対象としたメタアナリシスによると,頭皮の冷却は脱毛リスクを有意に軽減することが示された(HR:0.38,95%CI:0.32—0.45)11)。しかし,脱毛予防の評価方法は臨床試験によりさまざまであること,完全に脱毛を予防できるわけではないこと,脱毛予防の効果は,化学療法レジメン,化学療法の用量などにより大きく異なることなどさまざまな問題があり,日常診療に応用できるレベルには至っていない。一方,ターニケット(圧迫包帯)を用いた方法も有効とする報告もあるが,報告により手技が異なるなどの問題点が多く,これも日常診療には応用しづらいのが現状である11)

 薬物による脱毛予防に,minoxidilやAS101などが試みられているが,その有効性は実証されていない11)

(2)末梢神経障害

 乳癌の化学療法で用いられる薬剤のうち,末梢神経障害を引き起こす代表的なものはタキサン系化学療法薬である。タキサンで神経毒性の起こるメカニズムは明らかではないが,神経細胞から軸索の末端への蛋白やその他の分子の運搬に障害が起こることに起因する可能性が高い。タキサンによる神経毒性の出方は,その1サイクルあたりの用量,治療スケジュール,点滴の時間,累積用量,併存疾患などによって変わってくることが知られている。すなわち,パクリタキセルの場合,1サイクルあたりの用量が多いほうが,また,3週1回投与よりは毎週投与のほうが,また累積用量が多いほど神経毒性の発生頻度が高まる。合併症としては糖尿病の合併があると神経毒性の出現頻度が高くなる12)。タキサンによる神経毒性はその投与をやめると多くの場合は改善するが,一部の症例で末梢神経障害が遷延することがある。

 タキサンを含む化学療法誘発性の末梢神経障害に対する「予防薬」として確立されたものはまだない13)。しかし,痛みを伴う化学療法誘発性の末梢神経障害が生じた場合の「治療薬」として,ランダム化比較試験(n=231)の結果,デュロキセチン(保険適応外)(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬;SNRI)の有効性が示された(HR:0.34,95%CI:0.01—0.66)14)。ASCOガイドラインにおいても,化学療法誘発性末梢神経障害に対してデュロキセチン(保険適応外)は中等度の推奨(moderate recommendation)という位置付けとなっている13)。一方,プレガバリン(保険適応外),3環系抗うつ薬のアミトリプチリン(保険適応外),ノルトリプチリン(保険適応外),amifostine(未承認),抗けいれん薬のガバペンチン(保険適応外)などの薬剤や,わが国においては,漢方薬の牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)15)が試みられることもあるが,臨床試験においてこれらの薬剤の有効性は示されていない。しかしながら,化学療法誘発性末梢神経障害の治療薬が限られている現状を考慮すると,日常臨床においてこれらの薬剤を治療薬の選択肢に入れてもよいのではないかと考えられている13)

(3)化学療法による白血病16)

 術後化学療法では,EBCTCGのメタアナリシスによると47の化学療法を用いたランダム化比較試験の結果によると,二次がんによる死亡率の有意な上昇はみられていない17)。下記の白血病は致死率が高いが,発生頻度が低いことによると思われる。

 Myelodysplastic syndrome(MDS)およびacute myeloid leukemia(AML)の発生は,化学療法と関連して認められる。化学療法関連のAMLには2つのタイプがある。一つは,アルキル化薬に関連したもので,曝露から平均5~7年後に発症し,通常MDSを経て発症する。もう一つのタイプはアンスラサイクリン系化学療法薬に関連し,曝露後1~2年で通常MDSを経ずに発症する。

 AMLの発生頻度は術後化学療法の臨床試験のほとんどで1%未満であり,用いられる薬剤,その用量,治療期間との関連が示唆されている。がん登録のデータからみるとCMF 6サイクルでのAML/MDSの相対リスクは2倍で,10年時で治療を受けた10,000人あたり5人多く発生する。

(4)心毒性

 アンスラサイクリンによる心毒性は,用量依存性(蓄積性)で,不可逆性であり,予後不良である18)。総投与量が最も強いリスク因子であるが,アンスラサイクリン投与時の年齢や,トラスツズマブなどの心毒性の副作用を有する薬剤との併用,縦隔への放射線照射,心血管系疾患の併存などがアンスラサイクリンによる心毒性のリスクを上げるとされる。

 ドキソルビシン治療歴のある3,941名を対象とした検討により,ドキソルビシン総投与量が400 mg/m2未満の場合,ドキソルビシンによるうっ血性心不全の割合は0.14%であるのに対して,550 mg/m2に達すると7%に上昇し,700 mg/m2を超えるとうっ血性心不全が18%に発症した19)。また,別のドキソルビシンの検討(n=630)ではドキソルビシン総投与量が550 mg/m2を超えるとうっ血性心不全を26%に認めた20)

 これらの報告を踏まえて,成人におけるドキソルビシンの総投与量は450~500 mg/m2を上限とすることが推奨される。しかしながら,ドキソルビシンによる心毒性の感受性には個人差を認め,1,000 mg/m2まで症状が出ない場合もあれば,300 mg/m2でうっ血性心不全を発症することもあることは留意する必要がある21)

 もうひとつのアンスラサイクリン系薬剤であるエピルビシンの総投与量に関しては,アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)は900 mg/m2を上限とすることを推奨している。しかし,投与開始年齢が60歳以上である場合,心血管系疾患の有無,縦隔照射の既往,などの要因が加わると,エピルビシンの総投与量が900 mg/m2以下であってもうっ血性心不全を起こすリスクが高くなることが報告されている22)

(5)手足症候群23)

 カペシタビンによる手足症候群がよく知られている。軽度のものを含めると28~63%に発生し,生命への影響はないものの患者のQOLを下げ,治療スケジュールに影響を与え得る。同系統の薬剤であるS—1でもみられるが,他には,ドキソルビシン,エピルビシン,シクロホスファミド,ドセタキセル,ビノレルビンなどが知られている。ここでは主にカペシタビンでの手足症候群について述べる。

 カペシタビンで手足症候群の起こるメカニズムはよくわかっていないが,皮膚でのフルオロウラシルの代謝産物の蓄積によるものと考えられている。

 手足症候群に対する確実な治療薬等はなく,休薬あるいは投与量の減量を行う。これ以外の予防あるいは治療法としては,手足への刺激となるものを排除するのがよいとされる。種々の薬剤による手足症候群の予防・治療にステロイドの局所あるいは全身投与が有効とする報告があるが,カペシタビンでの手足症候群の効果については証明されていない。ビタミンB6の予防効果ならびに治療効果を検討したランダム化比較試験ではその効果を認めていない24)。治療や予防に保湿クリームが使用されることが多いが,ランダム化比較試験では尿素/乳酸系クリームには予防効果を認めなかった25)

(6)口内炎

 口内炎はときに強い痛みを引き起こし,経口摂取を困難にする。ドキソルビシンや5—FUなどの化学療法だけでなく,mTOR阻害薬(エベロリムス)も高率に口内炎を引き起こすため,口内炎の管理は乳癌治療を継続するうえで今まで以上に重要となってきた。

 口内炎は,悪い口腔内の衛生状態や虫歯,歯周病などがあると発症リスクが増加することが知られている26)

 口内炎を予防するためには,まず化学療法施行前に口腔内のスクリーニングを行うことが望ましい27。エビデンスは限られるが,化学療法施行期間を通して,積極的な予防的口腔ケアを行うことで口腔内の合併症を減らすことが示唆されている。1979~1986年に頭頸部癌の治療を受けた患者の後ろ向き解析(n=495)の結果28),積極的な予防的口腔ケアを行うことによって,ケアを始める前年(1978年)に治療関連の口腔内合併症の割合が39%であったのに対して,1986年には13%に低下したことが報告された。また,日本人の乳癌患者を対象として,乳癌手術前から化学療法終了するまでの期間,①歯科医師による口腔ケアを毎週受ける群と,②患者自身による口腔ケアのみを行う群(対照群)の二群を比較した小規模なランダム化第Ⅱ相試験(n=26)の結果29)では,歯科医師による口腔ケアを毎週受ける群では口内炎をまったく認めなかったのに対して,対照群では4例(29%)に口内炎を認めた。

 以上より,化学療法やmTOR阻害薬投与前に口腔内のスクリーニングを行い,治療中も歯科医師などの専門家による口腔ケアを行うことが口内炎予防にはよい可能性がある。

 口内炎の治療は痛みのコントロール,栄養のサポート,口腔内の衛生状態の保持,積極的な治療などからなる。まず,痛みのコントロールには生理食塩水での口腔内の洗浄,氷の使用,リドカイン入りの口内洗浄液での洗浄などがある。高度の口内炎では鎮痛薬の全身投与を追加することもある。このときオピオイドを使用することもある。栄養のサポートでは通常の食事よりも摂りやすい柔らかい食事や流動食などを勧める。口腔内の衛生状態の保持は口内炎の患部での細菌叢の形成を防ぎ,口内炎の程度の軽減に役立つとされる。具体的には柔らかい歯ブラシでの歯磨き,生理食塩水などでの口腔内の洗浄などがある。

3.抗HER2療法

 トラスツズマブによる治療は心毒性のリスクを上げるが,心毒性のメカニズムはアンスラサイクリンによる心毒性とはまったく異なる。トラスツズマブによる心毒性は,無症候性の左室駆出率(left ventricular ejection fraction;LVEF)の低下として認められ,臨床的に問題となるようなうっ血性心不全症状を呈することは少ない。また,トラスツズマブによる心毒性はアンスラサイクリンの場合と異なり,多くの患者で「可逆性」であり,標準的なうっ血性心不全治療が有効である。

 トラスツズマブ投与に関連する心毒性は,アンスラサイクリン系薬剤の投与の既往や同時投与の有無,および投与開始年齢(50歳以上)がリスク因子となる。

 周術期におけるトラスツズマブ投与の際には,投与前および投与後の定期的なLVEFのモニタリングが強く推奨される。再発患者にトラスツズマブを投与する場合には,投与前の心機能評価後,うっ血性心不全の兆候がなければ,投与中のLVEFのモニタリングは頻回に行わなくてもよいと考えられる。

 他の抗HER2療法薬(ラパチニブ,トラスツズマブエムタンシン,ペルツズマブ)の心毒性のリスクはトラスツズマブと比較して相対的に低いと考えられている。

 ラパチニブはトラスツズマブより心機能への影響は低いと考えられている。再発乳癌に対する第Ⅲ相試験(ラパチニブ+カペシタビンvsカペシタビン;n=324)のデータ30)によると,患者はアンスラサイクリン,トラスツズマブの使用歴があるにもかかわらず,治療に関連する心臓のイベントはわずか2.5%(4/155)であった。されにその4例中3例は無症候性でLVEF低下も認めなかった30)。ラパチニブ関連心毒性を検討したプール解析(n=3,689)31)によると,ラパチニブ服用患者のうち心機能イベントが発症した割合はわずか1.6%(60名)であり,症状を有するうっ血性心不全を呈したのは0.2%(7名)のみであった。

 トラスツズマブエムタンシンにおけるLVEFの低下(LVEF:50%未満)は,再発乳癌に対する第Ⅲ相試験(EMILIA:トラスツズマブエムタンシンvsラパチニブ+カペシタビン;n=991)のデータ32)によると,わずか1.7%(8/481)であり,ラパチニブ+カペシタビン群の1.6%(7/445)と差がなかった。

 ペルツズマブにおける心毒性は,再発乳癌に対する第Ⅲ相試験(CLEOPATRA:トラスツズマブ+ドセタキセル+ペルツズマブorプラセボ;n=808)において検証された33)。投与前のLVEFが10%以上低下,かつ,LVEF 50未満の割合は,ペルツズマブ群とプラセボ群で,それぞれ3.8%と6.6%であった。また,ペルツズマブ群の87%とプラセボ群の72%の患者はLVEFが50以上に回復したと報告された33)

4.ビスフォスフォネート・デノスマブ
(1)低カルシウム血症

 低カルシウム血症の発生頻度はゾレドロン酸で4~6%,デノスマブで9~13%と報告されている34)。デノスマブ市販後に投与された約7,300人に対し重篤な低カルシウム血症が32例報告され,うち死亡との関連が否定できない症例が2例認められた。デノスマブ投与時は血清電解質濃度のモニターリングとカルシウムやビタミンDの適切な補充などが必須である。

(2)顎骨壊死

 顎骨壊死の重要なリスク因子は歯科治療である。投与前に歯科を受診し,感染巣になり得る部分を治療するほか,投与中は口腔内の衛生を保つことが勧められる。症状は口腔内の予期しない骨壊死が特徴で,強い痛みがあるが無症状のこともあり,虫歯や歯周病の症状と類似している。顎骨壊死発生のリスクとビスフォスフォネートによる治療効果を勘案し,骨転移のコントロール状況も加味しながら,原則的にビスフォスフォネート投与を継続し,侵襲的歯科治療(抜歯等)はできるだけ避ける35)。ゾレドロン酸とデノスマブの顎骨壊死の発生頻度はほぼ同等である。

(3)腎機能低下

 ビスフォスフォネートでは決められた投与時間・期間を守れば,腎機能低下の頻度は少ない。腎機能低下が起きた場合は,減量または中止することが勧められる(デノスマブでは重篤な腎機能低下は少ない)。腎機能障害が起きた場合,ビスフォスフォネート投与は減量あるいは中止すべきである。ゾレドロン酸であれば,クレアチニンクリアランス(Ccr)が60 mL/分より良好であれば減量の必要はないが,50~60 mL/分の場合には3.5 mgに,40~49 mL/分の場合には3.3 mgに,30~39 mL/分の場合には3.0 mgに減量することが推奨される。

参考文献 

1) Fisher B, Costantino JP, Wickerham DL, Cecchini RS, Cronin WM, Robidoux A, et al. Tamoxifen for the prevention of breast cancer:current status of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P‒1 study. J Natl Cancer Inst. 2005;97(22):1652‒62.
→PubMed

2) Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG), Davies C, Godwin J, Gray R, Clarke M, Cutter D, et al. Relevance of breast cancer hormone receptors and other factors to the efficacy of adjuvant tamoxifen:patient‒level meta‒analysis of randomised trials. Lancet. 2011;378(9793):771‒84.
→PubMed

3) Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG). Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15‒year survival:an overview of the randomised trials. Lancet. 2005;365(9472):1687‒717.
→PubMed

4) Cuzick J, Forbes JF, Sestak I, Cawthorn S, Hamed H, Holli K, et al;International Breast Cancer Intervention Study I Investigators. Long‒term results of tamoxifen prophylaxis for breast cancer‒‒96‒month follow‒up of the randomized IBIS‒I trial. J Natl Cancer Inst. 2007;99(4):272‒82.
→PubMed

5) Curtis RE, Freedman DM, Sherman ME, Fraumeni JF Jr. Risk of malignant mixed mullerian tumors after tamoxifen therapy for breast cancer. J Natl Cancer Inst. 2004;96(1):70‒4.
→PubMed

6) Berlière M, Radikov G, Galant C, Piette P, Marbaix E, Donnez J. Identification of women at high risk of developing endometrial cancer on tamoxifen. Eur J Cancer. 2000;36 Suppl 4:S35‒6.
→PubMed

7) Committee Opinion No. 601:Tamoxifen and uterine cancer. Obstet Gynecol. 2014;123(6):1394‒7.
→PubMed

8) Crew KD, Greenlee H, Capodice J, Raptis G, Brafman L, Fuentes D, et al. Prevalence of joint symptoms in postmenopausal women taking aromatase inhibitors for early‒stage breast cancer. J Clin Oncol. 2007;25(25):3877‒83.
→PubMed

9) Briot K, Tubiana‒Hulin M, Bastit L, Kloos I, Roux C. Effect of a switch of aromatase inhibitors on musculoskeletal symptoms in postmenopausal women with hormone‒receptor‒positive breast cancer:the ATOLL (articular tolerance of letrozole) study. Breast Cancer Res Treat. 2010;120(1):127‒34.
→PubMed

10) Crew KD, Capodice JL, Greenlee H, Brafman L, Fuentes D, Awad D, et al. Randomized, blinded, sham‒controlled trial of acupuncture for the management of aromatase inhibitor‒associated joint symptoms in women with early‒stage breast cancer. J Clin Oncol. 2010;28(7):1154‒60.
→PubMed

11) Shin H, Jo SJ, Kim do H, Kwon O, Myung SK. Efficacy of interventions for prevention of chemotherapy‒induced alopecia:a systematic review and meta‒analysis. Int J Cancer. 2015;136(5):E442‒54.
→PubMed

12) Lee JJ, Swain SM. Peripheral neuropathy induced by microtubule‒stabilizing agents. J Clin Oncol. 2006;24(10):1633‒42.
→PubMed

13) Hershman DL, Lacchetti C, Dworkin RH, Lavoie Smith EM, Bleeker J, Cavaletti G, et al;American Society of Clinical Oncology. Prevention and management of chemotherapy‒induced peripheral neuropathy in survivors of adult cancers:American Society of Clinical Oncology clinical practice guideline. J Clin Oncol. 2014;32(18):1941‒67.
→PubMed

14) Smith EM, Pang H, Cirrincione C, Fleishman S, Paskett ED, Ahles T, et al;Alliance for Clinical Trials in Oncology. Effect of duloxetine on pain, function, and quality of life among patients with chemotherapy‒induced painful peripheral neuropathy:a randomized clinical trial. JAMA. 2013;309(13):1359‒67.
→PubMed

15) Tawata M, Kurihara A, Nitta K, Iwase E, Gan N, Onaya T. The effects of goshajinkigan, a herbal medicine, on subjective symptoms and vibratory threshold in patients with diabetic neuropathy. Diabetes Res Clin Pract. 1994;26(2):121‒8.
→PubMed

16) Matesich SM, Shapiro CL. Second cancers after breast cancer treatment. Semin Oncol. 2003;30(6):740‒8.
→PubMed

17) Polychemotherapy for early breast cancer:an overview of the randomized trials. Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group. Lancet. 1998;352(9132):930‒42.
→PubMed

18) Von Hoff DD, Layard MW, Basa P, Davis HL Jr, Von Hoff AL, Rozencweig M, et al. Risk factors for doxorubicin‒induced congestive heart failure. Ann Intern Med. 1979;91(5):710‒7.
→PubMed

19) Bristow MR, Mason JW, Billingham ME, Daniels JR. Dose‒effect and structure‒function relationships in doxorubicin cardiomyopathy. Am Heart J. 1981;102(4):709‒18.
→PubMed

20) Swain SM, Whaley FS, Ewer MS. Congestive heart failure in patients treated with doxorubicin:a retrospective analysis of three trials. Cancer. 2003;97(11):2869‒79.
→PubMed

21) Shan K, Lincoff AM, Young JB. Anthracycline‒induced cardiotoxicity. Ann Intern Med. 1996;125(1):47‒58.
→PubMed

22) Ryberg M, Nielsen D, Cortese G, Nielsen G, Skovsgaard T, Andersen PK. New insight into epirubicin cardiac toxicity:competing risks analysis of 1097 breast cancer patients. J Natl Cancer Inst. 2008;100(15):1058‒67.
→PubMed

23) Gressett SM, Stanford BL, Hardwicke F. Management of hand‒foot syndrome induced by capecitabine. J Oncol Pharm Pract. 2006;12(3):131‒41.
→PubMed

24) Kang YK, Lee SS, Yoon DH, Lee SY, Chun YJ, Kim MS, et al. Pyridoxine is not effective to prevent hand‒foot syndrome associated with capecitabine therapy:results of a randomized, double‒blind, placebo‒controlled study. J Clin Oncol. 2010;28(24):3824‒9.
→PubMed

25) Wolf SL, Qin R, Menon SP, Rowland KM Jr, Thomas S, Delaune R, et al;North Central Cancer Treatment Group Study N05C5. Placebo‒controlled trial to determine the effectiveness of a urea/lactic acid‒based topical keratolytic agent for prevention of capecitabine‒induced hand‒foot syndrome:North Central Cancer Treatment Group Study N05C5. J Clin Oncol. 2010;28(35):5182‒7.
→PubMed

26) Barasch A, Peterson DE. Risk factors for ulcerative oral mucositis in cancer patients:unanswered questions. Oral Oncol. 2003;39(2):91‒100.
→PubMed

27) Consensus statement:oral complications of cancer therapies. National Institutes of Health Consensus Development Panel. NCI Monogr. 1990;(9):3‒8.
→PubMed

28) Sonis S, Kunz A. Impact of improved dental services on the frequency of oral complications of cancer therapy for patients with non‒head‒and‒neck malignancies. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1988;65(1):19‒22.
→PubMed

29) Saito H, Watanabe Y, Sato K, Ikawa H, Yoshida Y, Katakura A, et al. Effects of professional oral health care on reducing the risk of chemotherapy‒induced oral mucositis. Support Care Cancer. 2014;22(11):2935‒40.
→PubMed

30) Geyer CE, Forster J, Lindquist D, Chan S, Romieu CG, Pienkowski T, et al. Lapatinib plus capecitabine for HER2‒positive advanced breast cancer. N Engl J Med. 2006;355(26):2733‒43.
→PubMed

31) Perez EA, Koehler M, Byrne J, Preston AJ, Rappold E, Ewer MS. Cardiac safety of lapatinib:pooled analysis of 3689 patients enrolled in clinical trials. Mayo Clin Proc. 2008;83(6):679‒86.
→PubMed

32) Verma S, Miles D, Gianni L, Krop IE, Welslau M, Baselga J, et al;EMILIA Study Group. Trastuzumab emtansine for HER2‒positive advanced breast cancer. N Engl J Med. 2012;367(19):1783‒91.
→PubMed

33) Swain SM, Ewer MS, Cortés J, Amadori D, Miles D, Knott A, et al. Cardiac tolerability of pertuzumab plus trastuzumab plus docetaxel in patients with HER2‒positive metastatic breast cancer in CLEOPATRA:a randomized, double‒blind, placebo‒controlled phase Ⅲ study. Oncologist. 2013;18(3):257‒64.
→PubMed

34) Stopeck AT, Lipton A, Body JJ, Steger GG, Tonkin K, de Boer RH, et al. Denosumab compared with zoledronic acid for the treatment of bone metastases in patients with advanced breast cancer:a randomized, double‒blind study. J Clin Oncol. 2010;28(35):5132‒9.
→PubMed

35) ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会編.ビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジション ペーパー(改訂追補 2012 年版).http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/bronjpositionpaper2012.pdf

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.