日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

総論 (外科療法・乳房再建・ID20760)

  乳癌診療ガイドライン1治療編(259-260ページ)

総論

 近年,乳癌に対する根治性同様,術後のボディイメージが損なわれることによる生活の質低下が問題視されることに伴い,整容性にも配慮した乳癌術式への関心が急速に高まっている。乳房切除に伴う乳房再建は,再建の材料や時期によってさまざまで,それぞれの利点・問題点についての説明を十分に行ったうえで再建術を実施する必要がある。

(1)再建材料

 広背筋皮弁,腹直筋皮弁などの自家組織を用いる場合と,人工乳房(インプラント)を用いる場合がある。

自家組織

 広背筋皮弁,腹直筋皮弁を用いた再建術では有茎皮弁移植であり,皮弁の採取は高度な技術を要する。挙児希望のある患者では腹直筋を温存する必要があるため,広背筋皮弁を用いる。腹直筋皮弁は挙児希望がなく健側が比較的大きな乳房の再建に用いられることが多い。自家組織であるがゆえに生涯やわらかい触感が実現するが,皮弁の採取部位に残る大きな創痕,背部あるいは腹部の非対象性などが難点である。一般的に手術時間も長く,侵襲は大きい。術後合併症として移植片の血流不良や感染により壊死を生じることがある。血管柄付き遊離皮弁を用いた再建を行うこともあるが,マイクロサージェリーを用いた高度な血管吻合の技術が要求される。遊離脂肪弁は乳房温存術後の欠損,変形に対して適用される場合があり,腹部の余剰な脂肪を一塊に採取し,欠損部に充填される。比較的簡便な手技だが,懐疑的な意見もあり,今後質の高いエビデンスが待たれる。

インプラント

 乳房インプラントは,ラウンドタイプとアナトミカルタイプの二種類があり,健側乳房の形状にあった型,サイズを使用する。乳房切除後の血流が激減している皮下ではなく,大胸筋下に留置する。健側乳房の縦(Height),横(Width),高さ(Projection)の測定により,最も近似したインプラント(保険診療の対象になるインプラントは約340タイプ)を選択する。ドナーを必要とせず,形状を比較的簡便に再現できるのが最大の利点であるが,形状を保つ必要があるため,触感はやや硬い。手術時間は短く,低侵襲であるため安全性が高いことに加え,保険収載されたことによって需要は急速に高まっている。術後合併症としては,皮膚,乳頭乳輪の壊死,インプラント関連の感染などがある。

(2)再建時期

 乳房切除の際に再建まで考慮する一次(primary)再建と,乳房切除後に再建を考慮する二次(secondary)再建がある。さらに一期(one—stage)再建とは皮膚伸展のための段階を経ずに直接人工乳房(インプラント)や自家組織を用いて再建を行い,二期(two—stage)再建ではまず組織拡張器(tissue expander;TE)を用いて皮膚を伸展させてから後日再建(TEをインプラントまたは自家組織に置き換える)する方法である。例えばTE挿入を乳房切除術と併施する場合を一次(primary)二期再建,乳房切除後に改めてTE挿入を経て再建する場合を二次(secondary)二期再建という。つまり乳房再建は乳房切除と再建との時期,皮膚伸展措置の有無によって4通りの組み合わせがあり,いわゆる「同時再建」とは一次再建の一期もしくは二期再建を意味する。

(3)乳頭乳輪再建

 乳頭乳輪切除を伴う術式(乳房切除術,皮膚温存乳腺全摘術)を行った後に再建を行うときには,乳頭乳輪も再建することが可能であり,自家組織またはインプラントによる乳房再建を行った後に行われる。乳頭再建には対側乳頭の移植,皮弁による形成術が,乳輪再建には医療用色素を用いた刺青法,外陰部の色素沈着の強い皮膚を移植方法などがある。

 早期乳癌に対する一次再建は有害事象が増えることなく安全に行える方法として確立している。一方,術前薬物療法が必要な症例の場合は,乳輪乳頭壊死などの合併症の発生率がやや高くなるが,慎重に対象を選べば可能な選択肢であるとされており,患者の希望を十分に考慮して治療方針を決定することが重要である。

参考文献

1) 山田 敦編著. 乳房・乳頭の再建 最新の進歩. 東京, 克誠堂出版, 1999.

2) 日本乳癌学会編. 乳腺腫瘍学(第1版). 東京, 金原出版, 2012.

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