日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

総論 (外科療法・転移・再発乳癌の外科治療・ID20800)

乳癌診療ガイドライン1治療編(269-270ページ)

総論

1)治療の目的

 転移・再発乳癌の治療の基本は薬物療法による全身治療であり,その目的は生存期間の延長と生活の質(QOL)の改善である。しかし,再発部位によっては外科療法を含めた集学的治療を行うことで治癒を目指せる可能性がある。よって,再発の種類を分類する必要がある。

2)再発の種類

 再発については,NCCNガイドラインでは,局所再発,領域再発と全身転移の3つに分類し,さらに局所再発を温存療法後局所再発,乳房切除後局所再発の2つに分類している。一方で,日本の「乳癌取扱い規約」においては再発を,a)温存乳房,b)局所(患側胸壁),c)所属リンパ節,d)遠隔の4つに分類している。

 両者の対応を下表に示した。

P269_表

局所・領域再発は遠隔転移を伴って出現する場合や,遠隔転移が出現する前兆として出現する場合があるので,外科的治療を選択するにあたっては遠隔転移を伴っていないことを確認する必要がある。

3)局所再発に対する治療(外科療法CQ 51627参照)

 温存療法後の局所再発は,いわゆる温存乳房内再発であり,もとの癌の遺残による真の再発と,初発の癌とは別に発生した新発生癌とが含まれ,後者では治癒の可能性がより高いが,両者の区別は正確には困難である。初回治療における腋窩郭清の有無によって腋窩のマネージメントも行う。

 乳房切除後の局所再発では,初回治療における腋窩郭清や放射線療法の有無に分けて治療方針を立てる。真の局所再発か,または遠隔転移の一部としての再発かの鑑別は困難であるが,領域再発や全身転移を伴っていない場合には外科的切除の適応がある。

4)領域再発に対する治療(外科CQ 25参照)

 所属リンパ節再発は,腋窩リンパ節再発,鎖骨上リンパ節再発,胸骨傍リンパ節再発の3つに分類される。腋窩リンパ節再発は,センチネルリンパ節生検の普及に伴い今後増加してくる可能性がある。遠隔転移を伴わない腋窩リンパ節再発は,初回手術時の遺残である可能性があり,手術の適応がある。鎖骨上リンパ節や胸骨傍リンパ節再発は原則的には放射線療法の適応である。

5)遠隔転移に対する外科的切除(外科CQ 2728参照)

 遠隔転移に対する外科的切除に関しては生存期間の延長に寄与するエビデンスはないため,限られたケースを除き勧められない。本ガイドラインでは,比較的頻度の高い肺,骨,肝,脳転移巣の外科的切除をCQとして取り上げたので詳細は各論に譲るが,いずれの臓器転移においても,外科的切除を考慮する条件としては,①切除による速やかな救命や症状緩和を必要とする場合,②単発の転移で無再発期間が長い場合,③単発の新規病変であり,転移か原発性腫瘍かの鑑別が切除でしか得られない場合,④薬物療法選択のために転移巣のバイオロジー(ER,PgR,HER2)の確認が必要な場合に限られる。

6)Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除(外科CQ 24参照)

 初発時に遠隔転移を認める乳癌であり,遠隔再発同様に治癒は困難である。よって治療の目的は延命と症状緩和であり,治療の主体は薬物療法である。原発巣切除の目的は出血や感染の予防による局所コントロールである。原発巣切除をしたほうが生存期間が延長したというメタアナリシスの報告もあるが解析した試験にランダム化比較試験は存在せず,選択バイアスの可能性を考慮に入れる必要性がある。現在わが国においてStage Ⅳ乳癌に対する原発巣切除の意義を検討するランダム化比較試験JCOG1017(UMIN 000005583)が進行中であり,その結果が待たれる。

参考にした二次資料

 UpToDate 2015,NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. Breast Cancer. ver. 3. 2014,乳癌取扱い規約(第17版),乳腺腫瘍学(第1版)を参考にした。

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