日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

葉状腫瘍と診断された場合に外科的切除が勧められるか (外科療法・その他・ID20910)

CQ34 乳癌診療ガイドライン1治療編(294-295ページ)
推奨グレード B 針生検にて葉状腫瘍と診断された場合には,腫瘍周囲の正常組織まで含めた部分切除が勧められる。

推奨グレードを決めるにあたって

 ランダム化比較試験が存在せず,エビデンスの多くは後ろ向き検討によるものであるが,腫瘍周囲の正常組織まで含めた部分切除が局所再発を低下させるとする報告は多く,推奨できると判断した。

背景・目的

 葉状腫瘍は,比較的稀な結合織性および上皮性混合腫瘍の一つであり,良性から悪性まで多様な生物学的特徴を呈する。組織学的には良性,境界病変,悪性の3つに分類される。形態は境界明瞭,多結節性,無痛性の腫瘤で線維腺腫との鑑別が問題となるが,急速に増大する場合は葉状腫瘍を疑う。葉状腫瘍の外科的治療について,今までに蓄積されたデータに基づいて検討した。

解 説

 葉状腫瘍は乳腺腫瘍の0.5%以下と頻度の少ない腫瘍であるため,エビデンスは主に症例集積や症例報告に基づいている。

 病理学的形態としては良性の線維腺腫に類似したものから高異型度の肉腫に近いものまで幅広いため,針生検では線維腺腫や肉腫との鑑別が難しい。

 164例の切除症例の後ろ向きの検討によると18.9%に局所再発がみられ,断端陽性と腫瘍径が局所再発のリスク因子であったことから,手術は断端陰性となるようにすべきであるとしている1)。172例の後ろ向きの検討では,多変量解析にて切除断端陽性は約4倍の再発リスク因子であった2)。多施設による前向きコホート研究の報告では,腫瘍辺縁から少なくとも1 cmの正常組織まで含めた乳房部分切除を勧めている3。術前診断にて,葉状腫瘍はしばしば線維腺腫と鑑別困難であるため,切除マージンをとらない腫瘍摘出術が行われると局所再発率は高くなる4)。部分切除後の局所再発率は,良性では8%,境界病変では21%,悪性では36%であったとしている3)。48人の高異型度の悪性葉状腫瘍における後ろ向きの検討4)によると,10例は切除マージン1 cm以下の局所切除,14例は切除マージンが1 cm以上の部分切除,24例の乳房切除が行われていた。平均腫瘍径は7.8 cm,経過観察の中央値は9年で,全体の局所再発率は44%であり,そのうち切除マージンが1 cm以下の局所切除後の再発率は60%であったが,1 cm以上の部分切除後の再発率は28%であった。局所再発と全生存率には腫瘍径と切除マージンが関連していた。初回切除後に切除マージンが近い場合は追加切除も考慮すべきである5)6)

 Surveillance,Epidemiology and End Results(SEER)に登録された悪性葉状腫瘍の治療を受けた821例を解析したところ,乳房切除術と乳房温存手術は52%と48%に行われていた7)。腫瘍径にかかわらず,乳房温存手術が行われた症例は,乳房切除術が行われた症例と比べて全生存率は同等かそれより良好であった。よって適応を選び,切除マージンが確保されている限り,乳房温存手術は適正な術式である。

 葉状腫瘍の腋窩リンパ節転移は非常に稀であるため,悪性葉状腫瘍であっても通常腋窩リンパ節郭清は行われない。SEERによると葉状腫瘍の腋窩リンパ節転移はわずか1.6%(8/498例)であった7)

 葉状腫瘍は,その画像所見や多様な病理学的形態のため術前の診断が難しい。細胞診の偽陰性率は高いため8),主に針生検が診断に用いられる。しかし,針生検でも25~30%の偽陰性率があるといわれている9)。よって,針生検にて線維腺腫と診断されても,臨床的に急速に増大するような症例では,葉状腫瘍の可能性を考え,摘出生検を行うべきである。また,針生検にて葉状腫瘍と線維腺腫との鑑別困難と診断された場合も,診断確定のために摘出生検が必要であろう。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Phyllodes Tumor/surgery,“Neoplasm Recurrence,Local”,Survival Rate,Treatment Outcomeのキーワードを用いて検索した。また,UpToDate 2014を参考資料として利用した。

参考文献

1) Jang JH, Choi MY, Lee SK, Kim S, Kim J, Lee J, et al. Clinicopathologic risk factors for the local recurrence of phyllodes tumors of the breast. Ann Surg Oncol. 2012;19(8):2612—7.
→PubMed

2) Spitaleri G, Toesca A, Botteri E, Bottiglieri L, Rotmensz N, Boselli S, et al. Breast phyllodes tumor:a review of literature and a single center retrospective series analysis. Crit Rev Oncol Hematol. 2013;88(2):427—36.
→PubMed

3) Barth RJ Jr, Wells WA, Mitchell SE, Cole BF. A prospective, multi—institutional study of adjuvant radiotherapy after resection of malignant phyllodes tumors. Ann Surg Oncol. 2009;16(8):2288—94.
→PubMed

4) Kapiris I, Nasiri N, A’Hern R, Healy V, Gui GP. Outcome and predictive factors of local recurrence and distant metastases following primary surgical treatment of high—grade malignant phyllodes tumours of the breast. Eur J Surg Oncol. 2001;27(8):723—30.
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5) Chen WH, Cheng SP, Tzen CY, Yang TL, Jeng KS, Liu CL,et al. Surgical treatment of phyllodes tumors of the breast:retrospective review of 172 cases. J Surg Oncol. 2005;91(3):185—94.
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6) Confavreux C, Lurkin A, Mitton N, Blondet R, Saba C, Ranchère D, et al. Sarcomas and malignant phyllodes tumours of the breast——a retrospective study. Eur J Cancer. 2006;42(16):2715—21.
→PubMed

7) Macdonald OK, Lee CM, Tward JD, Chappel CD, Gaffney DK. Malignant phyllodes tumor of the female breast:association of primary therapy with cause—specific survival from the Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)program. Cancer. 2006;107(9):2127—33.
→PubMed

8) Jacklin RK, Ridgway PF, Ziprin P, Healy V, Hadjiminas D, Darzi A. Optimising preoperative diagnosis in phyllodes tumour of the breast. J Clin Pathol. 2006;59(5):454—9.
→PubMed

9) Dillon MF, Quinn CM, McDermott EW, O’Doherty A, O’Higgins N, Hill AD. Needle core biopsy in the diagnosis of phyllodes neoplasm. Surgery. 2006;140(5):779—84.
→PubMed

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