日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳房切除術後の再建乳房に対する放射線療法は勧められるか (放射線療法・乳房手術後放射線療法―その他・ID31030)

 背景・目的

 乳房切除術に伴う身体的・精神的負担を緩和させるため乳房再建術が行われる。一次再建術は身体的・精神的負担が少ないとされ,再発率の増加もないと報告されているものの1)~3),術後放射線治療を行った場合,有害事象の増加を懸念する見解もある4)~6)

 再建乳房に対する放射線療法の安全性や整容性に対する影響について検討する。放射線療法後の乳房再建術については外科CQ 23を参照されたい。

自家組織による再建乳房に対する放射線療法は勧められるか

CQ11-a 乳癌診療ガイドライン1治療編(342-345ページ)
推奨グレード C1 細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。

推奨グレードを決めるにあたって

 術後放射線療法による脂肪壊死の増加,整容性の低下などが指摘されているが,皮弁の喪失等の大きな有害事象が増えるとの報告はなく,術後放射線療法による生存率改善が優先されると判断した。

解 説

 報告により再建方法はさまざまであるが,自家組織を用いた乳房再建術後に放射線療法を行った患者における局所再発率は,再建術を施行しない場合に比べて特に高いものではない7)。自家組織を用いた再建術後の放射線療法に関する報告は多くが後ろ向きのものではあるが,Schaverienらは25の報告のメタアナリシス(n=3,916)およびレビューを行い,術後放射線療法を行った群では非照射例より脂肪壊死は増えるものの,全有害事象や再手術は増加していないと報告した。一方,整容性が低下する,もしくは再建乳房の容積が有意に減少するとする報告もあるが,メタアナリシスでは有意なものはなかった4)。一方,Shahらは33の報告のレビューを行い,術後放射線療法群で整容性は低下する傾向にあると指摘している6)

 再建術後に放射線療法を行う場合には,術後変化のために治療計画に影響を及ぼすことが報告されている。再建術後の照射で,線量分布の不良や肺・心臓への照射体積増加が起こる可能性が示されており89照射方法には注意が必要である。現時点では,自家組織を用いた再建乳房に対する放射線療法の安全性についての情報は十分とはいえないが,乳房切除術後放射線療法が必要な患者では十分な注意のもと行うことを考慮する。乳房切除術後放射線療法の適応については放射線CQ 7を参照されたい。

エキスパンダー挿入中の再建乳房に対する放射線療法は勧められるか

CQ11-b 乳癌診療ガイドライン1治療編(342-345ページ)
推奨グレード C2 エキスパンダー挿入中の放射線療法においては,インプラントへの置換後と比較して有害事象が増えるとの報告があり,基本的には勧められない。

推奨グレードを決めるにあたって

 術後放射線療法による重篤な有害事象が少なくないことと,術後化学療法を先行することなどでインプラントへの置換後に術後放射線療法を行うようにすることも可能であるため,基本的に勧められないとした。

解 説

 インプラントを用いた再建術後の放射線療法については放射線CQ11‒cを参照のこと。

 Navaらはインプラントを用いた再建術後放射線療法の時期と有害事象を前向きに比較し,非照射群やインプラントに入れ替えた後に放射線療法を行った群と比較して,エキスパンダー挿入中に放射線療法を行った群で有意に重篤な有害事象やインプラントの逸脱が増えたと報告している9)。また,Lamらは12の報告のメタアナリシス(n=1,853)を行い,エキスパンダー挿入中に放射線療法を行った群では29.7%(非照射群で5%)の症例でエキスパンダーの除去を要したと報告している10)

 また,エキスパンダーの生理食塩水注入用の金属ポート周囲の線量分布が低下するとの報告があり11),治療計画時には留意する必要がある。

 以上より,有害事象が増えるとの報告があり,エキスパンダー挿入中の放射線療法は基本的に勧められない。行う場合にはインプラントへの入れ替え後が望ましい。

インプラントによる再建乳房に対する放射線療法は勧められるか

CQ11-c 乳癌診療ガイドライン1治療編(342-345ページ)
推奨グレード C1 安全性については十分な情報がないが,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。

推奨グレードを決めるにあたって

 術後放射線療法によりインプラントの逸脱などの有害事象が増えるが,術後放射線療法による生存率改善が優先される場合には行う必要があると判断した。

解 説

 インプラントを用いた再建術の後に放射線療法を受けた患者を対象にした報告の多くは後ろ向きなものであり,被膜拘縮やインプラントの逸脱,痛み,感染などの有害事象に関する見解にはばらつきがある。

 Memorial Sloan—Kettering Cancer Centerでは,インプラントを用いて両側再建術を受けた12人で片側のみに放射線療法を行い,その後の経過を比較検討している。7人で照射した乳房の拘縮が強く,また1人で重篤な感染症を認めたが,有害事象は許容範囲内であったと報告している12)。Kronowitzは放射線療法と再建術の併用について49の報告をレビューし,現在用いられている標準的な放射線治療方法でもインプラント後の有害事象は41%で認められ,15%でインプラントの逸脱をきたしたと報告している13)。同様に,Momohらは,23の報告をレビューし,20%でインプラントの逸脱などをきたしたと報告している5)。また,Barryは11の報告のメタアナリシス(1,105人)を行い,乳房再建術後の有害事象は,筋皮弁を用いたときよりインプラントを用いた場合で有意に増えることを示している14)

 以上より,現時点では安全性について十分な情報はないが,必要な場合においては細心の注意のもと行うことを考慮してよい。

検索式・参考にした二次資料

 「乳癌診療ガイドライン①治療編2013年版」の参考文献に加え,PubMedにて,Breast Neoplasms/radiotherapy,Mastectomy,Mammaplasty,flaps,flap,implants,implant のキーワードを用いて検索した。また,他のガイドラインや二次資料などから重要と思われる文献を採用した。

参考文献

1) Nedumpara T, Jonker L, Williams MR. Impact of immediate breast reconstruction on breast cancer recurrence and survival. Breast. 2011;20(5):437‒43.
→PubMed

2) Yi M, Kronowitz SJ, Meric—Bernstam F, Feig BW, Symmans WF, Lucci A, et al. Local, regional, and systemic recurrence rates in patients undergoing skin—sparing mastectomy compared with conventional mastectomy. Cancer. 2011;117(5):916—24.
→PubMed

3) Wright JL, Cordeiro PG, Ben—Porat L, Van Zee KJ, Hudis C, Beal K, et al. Mastectomy with immediate expander‒implant reconstruction, adjuvant chemotherapy, and radiation for stage Ⅱ‒Ⅲ breast cancer:treatment intervals and clinical outcomes. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008;70(1):43‒50.
→PubMed

4) Schaverien MV, Macmillan RD, McCulley SJ. Is immediate autologous breast reconstruction with postoperative radiotherapy good practice?:a systematic review of the literature. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2013;66(12):1637‒51.
→PubMed

5) Momoh AO, Ahmed R, Kelley BP, Aliu O, Kidwell KM, Kozlow JH, et al. A systematic review of complications of implant‒based breast reconstruction with prereconstruction and postreconstruction radiotherapy. Ann Surg Oncol. 2014;21(1):118‒24.
→PubMed

6) Shah C, Kundu N, Arthur D, Vicini F. Radiation therapy following postmastectomy reconstruction:a systematic review. Ann Surg Oncol. 2013;20(4):1313‒22.
→PubMed

7) Huang CJ, Hou MF, Lin SD, Chuang HY, Huang MY, Fu OY, et al. Comparison of local recurrence and distant metastases between breast cancer patients after postmastectomy radiotherapy with and without immediate TRAM flap reconstruction. Plast Reconstr Surg. 2006;118(5):1079‒86;discussion 1087‒8.
→PubMed

8) Schechter NR, Strom EA, Perkins GH, Arzu I, McNeese MD, Langstein HN, et al. Immediate breast reconstruction can impact postmastectomy irradiation. Am J Clin Oncol. 2005;28(5):485‒94.
→PubMed

9) Nava MB, Pennati AE, Lozza L, Spano A, Zambetti M, Catanuto G. Outcome of different timings of radiotherapy in implant‒based breast reconstructions. Plast Reconstr Surg. 2011;128(2):353‒9.
→PubMed

10) Lam TC, Hsieh F, Boyages J. The effects of postmastectomy adjuvant radiotherapy on immediate two‒stage prosthetic breast reconstruction:a systematic review. Plast Reconstr Surg. 2013;132(3):511‒8.
→PubMed

11) Chen SA, Ogunleye T, Dhabbaan A, Huang EH, Losken A, Gabram S, et al. Impact of internal metallic ports in temporary tissue expanders on postmastectomy radiation dose distribution. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2013;85(3):630‒5.
→PubMed

12) McCarthy CM, Pusic AL, Disa JJ, McCormick BL, Montgomery LL, Cordeiro PG. Unilateral postoperative chest wall radiotherapy in bilateral tissue expander/implant reconstruction patients:a prospective outcomes analysis. Plast Reconstr Surg. 2005;116(6):1642‒7.
→PubMed

13) Kronowitz SJ, Robb GL. Radiation therapy and breast reconstruction:a critical review of the literature. Plast Reconstr Surg. 2009;124(2):395‒408.
→PubMed

14) Barry M, Kell MR. Radiotherapy and breast reconstruction:a meta‒analysis. Breast Cancer Res Treat. 2011;127(1):15‒22.
→PubMed

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