日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

Stage IV乳癌に対する原発巣への放射線療法は勧められるか (放射線療法・転移・再発乳癌に対する放射線療法・ID31060)

CQ14 乳癌診療ガイドライン1治療編(352-353ページ)
推奨グレード C1 非切除または切除不能例は,QOLを保つために放射線療法を考慮してもよい。
C2 切除術後の放射線療法は,エビデンスがまだ十分ではなく,基本的に勧められない。

推奨グレードを決めるにあたって

 エビデンスレベルの高い論文はなく,いくつかの症例対照研究の内容をもとに決定した。

背景・目的

 近年の乳癌に対する集学的治療法の進歩に伴い,遠隔転移を有するStage Ⅳ乳癌においても長期の予後が期待されるようになり,原発巣の局所制御に難渋し,QOL(quality of life)が損なわれる患者に遭遇することも多い。今回,Stage Ⅳ乳癌の原発巣への放射線療法の意義について検討した。

解 説

 遠隔転移を有するStage Ⅳ乳癌患者に対する原発巣を手術することにより,良好な結果が得られる可能性があることが次第に分かってきており1),本ガイドライン外科療法CQ24においては,「遠隔転移を有する乳癌においては,原発巣の外科的切除により長期の局所制御を得る可能性がある。生存率の改善効果は不明であるが,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。」としている。

 遠隔転移を有するStage Ⅳ乳癌患者に対する原発巣への放射線療法についても有用性が認識されてはきたが,データは限られている。

 1988~2003年のSurveillance,Epidemiology,and End Results(SEER)からの解析結果によると,Stage Ⅳ乳癌において,放射線療法を受けた群は,受けなかった群に比べて生存率が改善するとしている2)。しかしながら,放射線療法の効果は認められないとしている報告もある3)

 また,フランスからの研究では,Stage Ⅳの乳癌患者に対して,局所治療が生存率に寄与する影響が後ろ向きに解析された。Stage Ⅳの乳癌患者581人に対し,原発巣局所治療群320人(A群),原発巣無治療群261人(B群)を検討し,A群の内訳は,249人は放射線療法単独,41人は原発巣手術+術後照射,30人は原発巣手術のみであった。3年全生存率は,A群で43.4%,B群で26.7%でありA群(78%が放射線療法単独)において有意に良好であった4)

 また,カナダからの報告では,Stage Ⅳ乳癌において,局所治療群と無局所治療群の5年全生存率は21%と14%(p<0.001)と局所治療群で良好であった。局所治療の内訳は,手術のみ,放射線療法のみ,手術+術後照射であり,各群間で有意差はなかったとしている5)

 ギュスタフ・ルーシー研究所の報告では,239人のStage Ⅳ患者に対し同様の検討を行った。147人は原発巣局所放射線療法のみ,92人で原発巣手術+術後照射を施行した。前者において,85%で長期の局所制御が得られ,両群とも全生存率では同等の効果であったとしている6)

 以上のように,病態の性質上,ランダム化比較試験などのエビデンスレベルの高い報告はされていない。また,局所放射線療法を施行した群は比較的全身状態もよく,長期の予後が期待される患者群が選択されている可能性が高いため,評価が困難である。しかしながらStage Ⅳ乳癌の原発巣に対する放射線治療は,手術療法同様,転移巣の状態を考慮し,原発巣制御が患者に寄与すると判断されれば,行ってもよいと考えられる。

 一方で,Stage Ⅳ乳癌に対する原発巣の切除後の放射線療法に関しては,術後放射線療法の有用性を示す根拠はなく,推奨できない5)6)。原発巣切除後は,定期的にフォローアップを行い,局所再発時に,病勢を考慮したうえで,原発巣再手術または原発巣局所放射線療法などその後の方針を検討することがよいと考えられる。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Breast neoplasms,radiotherapy,radiation,Mastectomy,conserving,conservation,local therapy,local control,Stage Ⅳ,metastasis,oligometastasis,chemoradio-therapy のキーワードを用いて検索した,一部をハンドサーチで追加した。

参考文献

1) Ali D, Le Scodan R. Treatment of the primary tumor in breast cancer patients with synchronous metastases. Ann Oncol. 2011;22(1):9‒16.
→PubMed

2) Gnerlich J, Jeffe DB, Deshpande AD, Beers C, Zander C, Margenthaler JA. Surgical removal of the primary tumor increases overall survival in patients with metastatic breast cancer:analysis of the 1988‒2003 SEER data. Ann Surg Oncol. 2007;14(8):2187‒94.
→PubMed

3) Hazard HW, Gorla SR, Scholtens D, Kiel K, Gradishar WJ, Khan SA. Surgical resection of the primary tumor, chest wall control, and survival in women with metastatic breast cancer. Cancer. 2008;113(8):2011‒9.
→PubMed

4) Le Scodan R, Stevens D, Brain E, Floiras JL, Cohen‒Solal C, De La Lande B, et al. Breast cancer with synchronous metastases:survival impact of exclusive locoregional radiotherapy. J Clin Oncol. 2009;27(9):1375‒81.
→PubMed

5) Nguyen DH, Truong PT, Alexander C, Walter CV, Hayashi E, Christie J, et al. Can locoregional treatment of the primary tumor improve outcomes for women with stage Ⅳ breast cancer at diagnosis? Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2012;84(1):39‒45.
→PubMed

6) Bourgier C, Khodari W, Vataire AL, Pessoa EL, Dunant A, Delaloge S, et al. Breast radiotherapy as part of loco‒regional treatments in stage Ⅳ breast cancer patients with oligometastatic disease. Radiother Oncol. 2010;96(2):199‒203.
→PubMed

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