日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

初経年齢、閉経年齢は乳癌発症リスクと関連するか (疫学.予防・リスク―生活習慣と環境因子・ID41230)

CQ11 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(037-039ページ)
エビデンスグレード Probable(ほぼ確実) 早い初経年齢は乳癌発症リスクを増加させることはほぼ確実である。
Probable(ほぼ確実) 遅い閉経年齢は乳癌発症リスクを増加させることはほぼ確実である。

背景・目的

 早い初経年齢や遅い閉経年齢と乳癌発症リスクの関連については1970年代から検討されてきた。その後も継続的に多くの疫学研究がなされ,危険因子としてほぼ確立していると考えられるが,近年ではホルモン受容体別の乳癌リスクとの関連に注目した報告も増えてきている。

解 説

(1)早い初経年齢

 欧米の3件のメタアナリシス1)~3)では,早い初経は乳癌発症のリスク因子であると結論付けられている。2012年に報告されたメタアナリシスでは,初経が1年早まるごとに5%ずつ有意にリスクが増加すると報告されている2メタアナリシスに含まれていない欧米のコホート研究4)では,早い初経は閉経前乳癌の発症リスクを有意に増加させ,閉経後乳癌では有意ではないがリスクを増加させる傾向があると報告されている。また,早い初経自体は乳癌発症リスクではないが,月経の期間が長いほどリスクが増加するという報告もある5)。日本人が含まれている国際的な症例対照研究では,早い初経は閉経前乳癌・閉経後乳癌ともにリスクを増加させると報告されており6),閉経前乳癌に影響するのか閉経後乳癌に影響するのかは結論が一致していない。

 日本国内の研究を対象としたメタアナリシスでは7),初経年齢13歳以下の女性を1とすると,14~15歳での相対リスクは0.96(95%CI:0.83—1.12),16歳以上で0.68(95%CI:0.59—0.77)と早い初経によるリスクの増加が報告されており,やはり日本人女性においても早い初経年齢は乳癌発症リスクを増加させることが示されている。日本人を対象としたコホート研究では,早い初経が閉経前乳癌の発症リスクを増加させるとする報告8),閉経前・閉経後乳癌の発症リスクに関係は認められないとする報告9),閉経前後の区別はないが乳癌発症リスクを増加させるとする報告10),関係は認められないとする報告11)がある。メタアナリシスに含まれなかった症例対照研究では,早い初経で閉経前乳癌の発症リスクは増加しないが閉経後乳癌の発症リスクを増加させる報告12)があり,閉経前,閉経後乳癌に分けて影響をみるとどちらに対してリスクを増加させるかの結論は一致していない。

 したがって,日本人に関しては必ずしも結論は一致しないが,大規模なコホート研究のメタアナリシスから早い初経が乳癌発症リスクを増加させることはほぼ確実であると考えられる。

 また,初経年齢と乳癌発症リスクはホルモン受容体陽性乳癌においてより顕著であるとする報告が多くみられる。米国でのメタアナリシス13では,遅い初経年齢はホルモン受容体陰性乳癌(相対リスク:0.84,95%CI:0.75—0.94)よりもホルモン受容体陽性乳癌(相対リスク:0.72,95%CI:0.64—0.80)のリスク低下に寄与していたとされ,多人種によるコホート研究14)では,初経が15歳以上の女性では初経年齢12歳以下の女性と比較しホルモン受容体陽性乳癌のリスクが低かった(相対リスク:0.82,95%CI:0.69—0.97)が,ホルモン受容体陰性乳癌とは関係していなかったとしている。一方,日本で行われた症例対照研究15)では,遅い初経年齢はホルモン受容体陽性乳癌とホルモン受容体陰性乳癌の両方においてリスクの減少に関係していたと報告されている。

(2)遅い閉経年齢

 1993年にKelseyが行った詳細なレビューにおいて,遅い閉経年齢は乳癌の発症リスク増加因子であり,閉経年齢が5年遅くなると乳癌発症リスクがおよそ17%増加すると述べられている16)。欧米のメタアナリシス1)では,遅い閉経は乳癌発症のリスク因子であると結論付けられており,2012年に報告されたメタアナリシスでは閉経年齢が1年遅れるごとに2.9%ずつ乳癌発症リスクが増加するとされている2)。コホート研究では閉経年齢自体は乳癌発症リスクではないが月経の期間が長いほどリスクが増加するという報告がある5)

 日本人を対象としたコホート研究では遅い閉経が閉経後乳癌の発症リスクを増加させるとする報告と8)11),乳癌発症リスクと関係は認められないとする報告がある9)

 日本人を対象とした症例対照研究のメタアナリシス7)ではリスクの増加は認められていない。メタアナリシスに含まれなかった症例対照研究12)では,遅い閉経が閉経後乳癌の発症リスクを増加させるとはいえないとしている。

 したがって日本人に関しては必ずしも結論は一致しないが,大規模なコホート研究のメタアナリシスの結果を優先すれば,遅い閉経が乳癌発症リスクを増加させることはほぼ確実である。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms,Menarche,Menopause,Menstruation,Age Factors,age,aged,Risk,Humansのキーワードを用いて行った。検索期間は2012年9月~2014年9月とした。文献は123件同定し,論文タイトルと抄録で2件を選択,2013年版での引用文献14件と合わせて計16件の構造化抄録を作成し,本解説に引用した。

参考文献

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