日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

出産は乳癌発症リスクと関連するか (疫学.予防・リスク―生活習慣と環境因子・ID41240)

CQ12 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(040-041ページ)
エビデンスグレード Convincing(確実) 出産経験のない女性は,出産経験のある女性と比較してホルモン受容体陽性の乳癌発症リスクが高いことは確実である。
Convincing(確実) 初産年齢が低い女性ほど乳癌発症リスクが減少し,初産年齢が高い女性では乳癌発症リスクが増加することは確実である。

背景・目的

 出産経験のない女性に乳癌発症リスクが高いことは1970年代から指摘され,多くの研究結果からすでに確立されたリスク因子として認識されている。その後の研究で初産年齢との関連,ホルモン受容体との関連などが検討されてきた。本項では,出産と乳癌発症リスクとの関連について検討する。

解 説

 出産と乳癌発症リスクとの関連についてはすでに多くの疫学的研究がなされており,1993年にKelseyらが詳細なレビューを行っている1)。それによれば,未経産の女性は経産女性と比較して乳癌発症リスクが高く,相対リスクは1.2—1.7と考えられる。また多経産はさらに乳癌発症リスクを減少させ,5経産以上の女性は未経産女性と比較してそのリスクはおよそ0.5となる。初産年齢については,低いほど乳癌発症リスクは減少し,その一方,30歳以上で初産を迎えた女性は未経産女性と比較して乳癌発症リスクは増加する。

 日本国内で行われたpopulation—basedのコホート研究では2),未経産女性は経産女性と比較し有意に乳癌発症リスクが高く(HR:2.23,95%CI:1.30—3.84),また出産回数の増加は乳癌発症リスクの減少につながっていた。ただし,本研究では初産年齢と乳癌発症リスクの間には関連はなかった。他のコホート研究の結果では3)4),未経産,少ない出産回数,遅い初産年齢は乳癌のリスクを増加させることが報告されており,欧米と同様の結果を得ている。

 以上より,出産経験のない女性は,出産経験のある女性と比較して乳癌発症リスクが高いことは確実であり,また,初産年齢が低い女性ほど乳癌発症リスクが減少し,初産年齢が高い女性では乳癌発症リスクが増加することは確実である。

 近年,出産などの生殖因子とホルモン受容体別に分類した乳癌発症リスク因子との関連性を検討した報告がある。2006年にMaらが行ったメタアナリシスでは5),出産はホルモン受容体陽性乳癌のリスクを11%低下させ(RR per birth=0.89,95%CI:0.84—0.94),また初産年齢が高い女性は低い女性と比較しホルモン受容体陽性乳癌のリスクが27%高かった(RR:1.27,95%CI:1.07—1.50)。しかし,ホルモン受容体陰性乳癌については出産経験と初産年齢のどちらも乳癌発症リスクとは関連がなかった。他のシステマティック・レビューにおいても,未経産と遅い初産はホルモン受容体陰性乳癌よりもホルモン受容体陽性乳癌のリスクを増加させると報告されている6)7)。日本においても,症例対照研究において,未経産はホルモン受容体陽性乳癌のリスクを増加させていた(OR:2.56,95%CI:1.61—4.07)が,ホルモン受容体陰性乳癌においてはリスク因子にならなかったという報告もあり8),出産経験および初産年齢は主にホルモン受容体陽性乳癌の発症リスクに関連している可能性が示唆されている。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms,Pregnancy,Reproductive History,childbirth,Riskのキーワードを用いて行った。検索期間は開始年指定なし~2014年12月とした。原文査読により8件を選択し,引用した。

参考文献

1) Kelsey JL, Gammon MD, John EM. Reproductive factors and breast cancer. Epidemiol Rev. 1993;15(1):36—47.
→PubMed

2) Kawai M, Minami Y, Kuriyama S, Kakizaki M, Kakugawa Y, Nishino Y, et al. Reproductive factors, exogenous female hormone use and breast cancer risk in Japanese:the Miyagi Cohort Study. Cancer Causes Control. 2010;21(1):135—45.
→PubMed

3) Tamakoshi K, Yatsuya H, Wakai K, Suzuki S, Nishio K, Lin Y, et al;JACC Study Group. Impact of menstrual and reproductive factors on breast cancer risk in Japan:results of the JACC study. Cancer Sci. 2005;96(1):57—62.
→PubMed

4) Iwasaki M, Otani T, Inoue M, Sasazuki S, Tsugane S;Japan Public Health Center—based Prospective Study Group. Role and impact of menstrual and reproductive factors on breast cancer risk in Japan. Eur J Cancer Prev. 2007;16(2):116—23.
→PubMed

5) Ma H, Bernstein L, Pike MC, Ursin G. Reproductive factors and breast cancer risk according to joint estrogen and progesterone receptor status:a meta—analysis of epidemiological studies. Breast Cancer Res. 2006;8(4):R43.
→PubMed

6) Althuis MD, Fergenbaum JH, Garcia—Closas M, Brinton LA, Madigan MP, Sherman ME. Etiology of hormone receptor—defined breast cancer:a systematic review of the literature. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004;13(10):1558—68.
→PubMed

7) Anderson KN, Schwab RB, Martinez ME. Reproductive risk factors and breast cancer subtypes:a review of the literature. Breast Cancer Res Treat. 2014;144(1):1—10.
→PubMed

8) Kawai M, Kakugawa Y, Nishino Y, Hamanaka Y, Ohuchi N, Minami Y. Reproductive factors and breast cancer risk in relation to hormone receptor and menopausal status in Japanese women. Cancer Sci. 2012;103(10):1861—70.
→PubMed

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