日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

授乳は乳癌発症リスクと関連するか (疫学.予防・リスク―生活習慣と環境因子・ID41250)

CQ13 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(042-043ページ)
エビデンスグレード Convincing(確実) 授乳経験のない女性は,授乳経験のある女性と比較して乳癌発症リスクが増加することは確実である。
Convincing(確実) 授乳期間が長くなるほど乳癌発症リスクが減少することは確実である。

背景・目的

 従来,授乳経験のない女性に乳癌発症リスクが増加することが指摘されていた。またこれまでにいくつかの研究において乳癌発症リスクに対する授乳による予防的効果が示唆されている。授乳は育児において重要であるが,母体にとっても乳癌発症を減少させることが期待できるのであれば,その認識は非常に重要である。

解 説

 2002年,30カ国で行われた47件の疫学研究のレビューによれば,授乳期間が12カ月長くなるごとに乳癌の発症リスクは4.3%減少し,リスクは有意に減少するとされる。また,分娩ごとにみると7%減少するとされる1

 2007年のWorld Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research(WCRF/AICR)による4件のコホート研究と37件の症例対照研究に基づいたメタアナリシスからは,授乳期間5カ月ごとに2%の乳癌発症リスク減少が示された(二次資料①参照)。2010年のWCRF/AICR Breast Cancer 2010 Reportにおいても「授乳による乳癌発症リスクの減少は閉経前および閉経後の双方において確実(Convincing)である」という結論に変更はなかった(二次資料②参照)。2013年に報告されたメタアナリシスにおいても,授乳の既往はオッズ比0.72と有意に乳癌リスクを減少させるとしている2)

 また,乳癌の家族歴を有する女性においても,2009年に報告された60,075人の閉経前女性を対象にした大規模な前向きコホート研究において,授乳が乳癌の発症リスクの減少に寄与すると結論付けられている3)。これらの結果から,授乳経験により,さらに授乳期間が長くなるほど乳癌発症リスクが減少することは確実である。

 近年,授乳と他の乳癌発症リスク因子の関連性を検討した報告もみられる。BRCA遺伝子変異と授乳,乳癌発症リスクとの関連については4),BRCA1遺伝子変異のある場合には授乳により乳癌発症リスクが減少するが,BRCA2遺伝子変異には乳癌発症リスク減少は認められなかったと報告されている。

 授乳は,特に児にとっては母親とのスキンシップの面から重要である。さらに,授乳することが乳癌発症のリスクを減少させるという事実は,母体にとっても有益なことである。先進国では,発展途上国と比較して乳癌発症率が高いとされ,出産数の低さや授乳期間の短さなどが背景にあるという示唆もあり,授乳のメリットを再認識する必要があると考えらえる。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms,Breast Feeding,Lactation,Risk Factors,およびGoogleScholarにて,breast cancer,breastfeeding,lactationのキーワードを用いて行った。PubMedの検索期間は2010年1月~2014年12月とした。該当文献およびその参考文献から論文をリストアップした。原文査読により一次資料として4件,二次資料として2件,合計6件の文献を選択し,引用した。

参考にした二次資料

① ‌World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Washington DC, AICR, 2007.

② ‌World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Washington DC, AICR, 2010.

参考文献

1) Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Breast cancer and breastfeeding:collaborative reanalysis of individual data from 47 epidemiological studies in 30 countries, including 50302 women with breast cancer and 96973 women without the disease. Lancet. 2002;360(9328):187—95.
→PubMed

2) Anothaisintawee T, Wiratkapun C, Lerdsitthichai P, Kasamesup V, Wongwaisayawan S, Srinakarin J, et al. Risk factors of breast cancer:a systematic review and meta—analysis. Asia Pac J Public Health. 2013;25(5):368—87.
→PubMed

3) Stuebe AM, Willett WC, Xue F, Michels KB. Lactation and incidence of premenopausal breast cancer:a longitudinal study. Arch Intern Med. 2009;169(15):1364—71.
→PubMed

4) Kotsopoulos J, Lubinski J, Salmena L, Lynch HT, Kim—Sing C, Foulkes WD, et al;Hereditary Breast Cancer Clinical Study Group. Breastfeeding and the risk of breast cancer in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers. Breast Cancer Res. 2012;14(2):R42.
→PubMed

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