日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

マンモグラフィの乳腺濃度は乳癌発症リスクと関連するか (疫学.予防・リスク―評価と予防・ID41410)

CQ29 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(085-087ページ)
エビデンスグレード Convincing(確実) マンモグラフィの高濃度乳腺では,乳癌リスクが増加することは確実である。

背景・目的

 乳腺実質は間質と乳腺上皮から構成され,周囲の脂肪組織に比べX線の透過性が低く,マンモグラフィではこれらの組織構成がコントラストとして反映される。X線透過性の低い領域をdense areaと呼び,間接的に乳房全体に占める乳腺実質の割合を示している(mammograhic density;MD)。MDは年齢とともに低下し,body mass index(BMI)と反比例する。またMDは乳癌発症リスクと関連する女性ホルモン補充療法,出産数,授乳経験などのホルモン環境や,遺伝子多型の影響を受けるとの報告がある(二次資料①)。MDは客観的評価や数値化が可能であることから,乳癌発症リスクモデルの因子として,あるいは予防介入の有効性を評価する代替指標として使用できる可能性がある。前述したように,年齢やBMIはMDに強く影響すると同時に,乳癌発症リスクとも関連することから,MDと乳癌発症リスクとの関連性を検討する場合には,少なくとも年齢やBMIの影響を考慮する必要がある。

 解 説

 1976年,Wolfeら1)により初めてMDと乳癌発症リスクとの関連性が報告されて以後,現在までに少なくとも60以上の症例対照研究,あるいはコホート研究が報告されている(二次資料①)。MDの評価にはWolfeの分類1),Breast Imaging Reporting and Data System(二次資料②),Tabár分類(二次資料③)などのカテゴリー分類やパーセントMDが用いられており,近年ではコンピュータによる画像解析手法を用いた評価が検討されている2)

 2006年,McCormackらは42の研究報告のメタアナリシスの結果,MDが5%未満を基準とし,5~24%の一般女性の乳癌の相対リスクは1.79(95%CI:1.48—2.16),25~49%で2.11(95%CI:1.70—2.63),50~74%で2.92(95%CI:2.49—3.42),75%以上で4.64(95%CI:3.64—5.91)と報告しており,その関係性は強固であると結論付けている32007年以後には横断研究が1件,症例対照研究が7件,コホート内症例対照研究が5件,コホート研究が5件報告されており,いずれの研究においてもMDは乳癌発症リスクと関連すると結論付けている(二次資料①)。

 日本人を対象とした研究は,3件の症例対照研究が報告されており,いずれも高濃度乳腺は有意な乳癌発症リスク因子であったと結論付けている4)~6)。また,日本人を含む多人種のコホート内症例対照研究でも同様の結論が得られている7)。以上より,マンモグラフィ高濃度乳腺では乳癌発症リスクが増加することは確実である。

 MDと乳癌のサブタイプ別のリスクを評価した研究報告のメタアナリシスによると,MDが最も低いカテゴリー分類された女性を基準とし,最も高いカテゴリーの相対リスクはエストロゲン受容体陽性乳癌で3.1(95%CI:2.2—4.2),エストロゲン受容体陰性乳癌で3.2(95%CI:1.7—5.9)であった8)。各々の相対リスク比は1.13(95%CI:0.89—1.42)であり,高いMDはエストロゲン受容体の発現にかかわらずリスク増加と有意に関連し,その相対リスクに相違なかった2。またMDとHER2の発現にも有意な関連性は認められず8)現在のところMDは乳癌のサブタイプに関係なく,乳癌全般の発症リスクに関連すると考えられている。

 ハイリスク群に対するタモキシフェンとプラセボを比較したランダム化比較試験(International Breast Cancer Intervention Study)における,MDに関する症例対照研究では,12~18カ月後にMDが10%以上低下した女性の割合は,タモキシフェン群で48%,プラセボ群で26%とタモキシフェンによるMD低下効果が明らかにされている9)。さらに,タモキシフェン群で12~18カ月後にMDが10%以上低下した女性では,プラセボ群に比べ63%のリスク低減効果が認められたが,MDが低下しなかった女性では有意なリスク低減効果が認められていない。MDは乳癌のリスク評価因子として,あるいは予防介入の有効性を評価する代替指標として期待されるが,臨床応用にはMD測定の標準化が課題である。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms,breast density,Breast,mammography,mammographic,density,riskのキーワードを用いて行った。検索期間は2014年9月30日以前とした。

参考にした二次資料

① ‌Huo CW, Chew GL, Britt KL, Ingman WV, Henderson MA, Hopper JL, et al. Mammographic density—a review on the current understanding of its association with breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2014;144(3):479—502.

② ‌Breast Imaging Reporting and Data System. 5th ed, American College of Radiology, Reston, 2013.

③ ‌He W, Denton ERE, Stafford K, Zwiggelaar R. Mammographic image segmentation and risk classification based on mammographic parenchymal patterns and geometric moments. Biomed Signal Process Control. 2011;6(3):321—329.

参考文献

1) Wolfe JN, Saftlas AF, Salane M. Mammographic parenchymal patterns and quantitative evaluation of mammographic densities:a case‒control study. AJR Am J Roentgenol. 1987;148(6):1087‒92.
→PubMed

2) Boyd NF, Guo H, Martin LJ, Sun L, Stone J, Fishell E, et al. Mammographic density and the risk and detection of breast cancer. N Engl J Med. 2007;356(3):227‒36.
→PubMed

3) McCormack VA, dos Santos Silva I. Breast density and parenchymal patterns as markers of breast cancer risk:a meta‒analysis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2006;15(6):1159‒69.
→PubMed

4) Nagao Y, Kawaguchi Y, Sugiyama Y, Saji S, Kashiki Y. Relationship between mammographic density and the risk of breast cancer in Japanese women:a case‒control study. Breast Cancer. 2003;10(3):228‒33.
→PubMed

5) Nagata C, Matsubara T, Fujita H, Nagao Y, Shibuya C, Kashiki Y, et al. Mammographic density and the risk of breast cancer in Japanese women. Br J Cancer. 2005;92(12):2102‒6.
→PubMed

6) Kotsuma Y, Tamaki Y, Nishimura T, Tsubai M, Ueda S, Shimazu K, et al. Quantitative assessment of mammographic density and breast cancer risk for Japanese women. Breast. 2008;17(1):27‒35.
→PubMed

7) Maskarinec G, Pagano I, Lurie G, Wilkens LR, Kolonel LN. Mammographic density and breast cancer risk:the multiethnic cohort study. Am J Epidemiol. 2005;162(8):743‒52.
→PubMed

8) Antoni S, Sasco AJ, dos Santos Silva I, McCormack V. Is mammographic density differentially associated with breast cancer according to receptor status? A meta‒analysis. Breast Cancer Res Treat. 2013;137(2):337‒47.
→PubMed

9) Cuzick J, Warwick J, Pinney E, Duffy SW, Cawthorn S, Howell A, et al. Tamoxifen‒induced reduction in mammographic density and breast cancer risk reduction:a nested case‒control study. J Natl Cancer Inst. 2011;103(9):744‒52.
→PubMed

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