日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

総説:ライフスタイルと乳癌予後との関連 (疫学.予防・予後との関連・ID41490)

乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(121-122ページ)

 これまで欧米諸国を中心に乳癌発症リスクと食物・栄養との関連が精力的に検討され,膨大なエビデンスが蓄積している。これらのエビデンスをもとに因果関係を評価した報告書として代表的なものにWorld Cancer Research Fund(WCRF,世界がん研究基金)/American Institute for Cancer Research(AICR,米国がん研究協会)が行った「食物・栄養・身体活動とがん予防:国際的な視点から」がある1)(詳細は疫学・予防:リスク―生活習慣と環境因子;総説に記載)。このContiuous Update Projectとして,2014年にDiet,Nutrition,Physical Activity, and Breast Cancer Survivorsが発表された。ここでは,この報告の内容を紹介したい。乳癌になった女性が,病気を克服するだけでなく,より長く生きるためにはライフスタイルが与える影響を調べることが重要である。比較的新しい分野であるため,まだまだ明らかにしなければならないことは多いものの,ライフスタイルによって,予後が改善されたり,二次がんのリスクが減少したりするかもしれないというエビデンスがいくつか示されるようになってきたため,これまでのエビデンスをまとめ,現時点でのサマリーを示すことを目的として行われた。

 この報告では,すでに治った人も含めて,がんと診断された女性乳癌患者を対象に,食事,体重,身体活動と,乳癌死亡,二次乳癌,他の疾患との関連が調べられた。この報告で検討を行った研究数は85,乳癌患者数は164,416,死亡数は42,572人にのぼる。結論として,これまでに行われた研究の質と量が十分でなく,乳癌予後に関して特別な推奨ができるほどエビデンスが強くないということであったが,いくつかの要因については,予後との関連が示唆されるものもあった。それは,「健康な体重」「活動的なこと」「食物繊維を含んだ食物を食べること」「大豆を含んだ食品を食べること」「総脂肪,特に飽和脂肪摂取を減らすこと」である。エビデンスのまとめを表1に示す。本書では,肥満,脂肪摂取,身体活動,アルコール摂取,喫煙,イソフラボン,乳製品に関してクリニカルクエスチョンとして取り扱っている。

P122_表1

 全体の推奨として,乳癌の治療後に対するアドバイスは,医療に関するアドバイスと矛盾しない限り,がん予防のガイドライン(疫学・予防:リスク―生活習慣と環境因子;総説を参照)に従う。つまり,健康的な食事,活動的であること,健康的な体重を維持すること,である。また,乳癌患者さんに特化した推奨を行うためには,質量ともにさらなる研究が必要である,としている。

 このプロジェクトでも日本人に関するエビデンスはほとんど含まれていない。現在,日本人乳癌対するコホート研究が開始されており,結果が待たれるところである。

参考文献

1) World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Continuous Update Project. Diet, Nutrition, Physical Activity, and Breast Cancer Survivors. 2014.

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