日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳癌初期治療後の脂肪の食餌摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか (疫学.予防・予後との関連・ID41510)

CQ37 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(126-127ページ)
エビデンスグレード Limited-no conclusion(証拠不十分) 乳癌初期治療後の総脂肪摂取の増加が乳癌再発リスクを増加させるかどうかは結論付けられない。

背景・目的

 疫学・予防CQ 3で論じられているように,総脂肪摂取の増加が乳癌発症リスクを増加させるかどうかは結論付けられない。一方で,疫学・予防CQ 36では乳癌初期治療後の肥満は乳癌再発リスクを増加させる可能性があることが示唆されており,肥満を招く脂肪を多く食餌摂取することが乳癌再発リスクを増加させるかもしれないという仮説が成り立つ。この仮説を検証することは初期治療後患者の日常生活を指導するうえで重要と考えられる。本項では乳癌初期治療後の総脂肪摂取と乳癌再発リスクの間に関連性があるか否かを検討した。

解 説

 2014年12月の検索時点で総脂肪摂取と乳癌患者の乳癌再発リスク,乳癌死亡リスクに関する論文は極めて少なく,乳癌初期治療後の総脂肪摂取を経時的に調査して乳癌再発,死亡リスクとの関係を調査した論文は7件のみであった1)~7)。すべて2005年以降の論文で,5件13)~57は数千人規模の大規模コホート研究であり,うち4件13)~5では乳癌初期治療後の高脂肪食,総脂肪摂取と乳癌再発,死亡リスクの関連性を認めなかったが,1件7は高脂肪食で乳癌死亡リスクの増加を認めた。残り2件は大規模なランダム化比較試験で,1件は乳癌初期治療後に脂肪からのカロリー摂取を15~20%にすることなどを目標とした個別指導による介入をした群(n=1,537)とパンフレット指導にとどめた群(n=1,551)を比較する試験(WHEL)2)であったが,10年無再発生存率,10年全生存率に差は認められなかった。もう一方の試験は脂肪からのカロリー摂取を15%以内にすることを目標とした個別指導による介入をした群(n=975)と一般的な食事指導にとどめた群(n=1,462)を比較する試験(WINS)6)で,5年無再発生存率に有意な差を認めた(HR:0.76,95%CI:0.60—0.98,p=0.034)。しかし,この試験では介入群の体重が対照群に比較して減少しており,これが結果に影響を与えたのではないかと考察されている。したがって,脂肪摂取制限が直接結果に影響したかどうかについての解釈は難しい。

 以上より,検索した論文は最近の信頼性の高いものばかりであったが,その多くが初期治療後の総脂肪摂取の増加と乳癌再発死亡リスクに関連はないとしている点,関連ありとしたコホート研究は1件である点,ランダム化比較試験の1件は結果の解釈が困難である点を鑑みて,両者の関連は結論付けられないと判断した(Limited—no conclusion)。疫学・予防CQ 36の結論と合わせて考えるのであれば,日常診療においては患者に脂肪制限食を指導するのではなく,運動や総カロリー制限による肥満防止を指導することが望ましい。

検索式

 2013年版と同様にPubMedにて,breast neoplasms,neoplasm recurrence,local recurrence,dietary fats,fat intakeのキーワードを用いて2012年10月以降の論文を2014年12月に検索した。該当13件のうちタイトルと抄録から本CQの趣旨に合致する論文は1件であり,原論文査読の結果,この1件を新たに参考文献に加えた。

参考文献

1) Kroenke CH, Fung TT, Hu FB, Holmes MD. Dietary patterns and survival after breast cancer diagnosis. J Clin Oncol. 2005;23(36):9295‒303.
→PubMed

2) Pierce JP, Natarajan L, Caan BJ, Parker BA, Greenberg ER, Flatt SW, et al. Influence of a diet very high in vegetables, fruit, and fiber and low in fat on prognosis following treatment for breast cancer:the Women’s Healthy Eating and Living(WHEL) randomized trial. JAMA. 2007;298(3):289‒98.
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3) Holmes MD, Chen WY, Hankinson SE, Willett WC. Physical activity’s impact on the association of fat and fiber intake with survival after breast cancer. Am J Epidemiol. 2009;170(10):1250‒6.
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4) Kim EH, Willett WC, Fung T, Rosner B, Holmes MD. Diet quality indices and postmenopausal breast cancer survival. Nutr Cancer. 2011;63(3):381‒8.
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5) Beasley JM, Newcomb PA, Trentham‒Dietz A, Hampton JM, Bersch AJ, Passarelli MN, et al. Post‒diagnosis dietary factors and survival after invasive breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 2011;128(1):229‒36.
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6) Chlebowski RT, Blackburn GL, Thomson CA, Nixon DW, Shapiro A, Hoy MK, et al. Dietary fat reduction and breast cancer outcome:interim efficacy results from the Women’s Intervention Nutrition Study. J Natl Cancer Inst. 2006;98(24):1767‒76.
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7) Kroenke CH, Kwan ML, Sweeney C, Castillo A, Caan BJ. High‒and low‒fat dairy intake, recurrence, and mortality after breast cancer diagnosis. J Natl Cancer Inst. 2013;105(9):616‒23.
→PubMed

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