日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

アルコール飲料の摂取は乳癌患者の予後と関連するか (疫学.予防・予後との関連・ID41530)

CQ39 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(132-133ページ)
エビデンスグレード Limited-no conclusion(証拠不十分) アルコール飲料の摂取が乳癌患者の予後と関連するかどうかは結論付けられない。

背景・目的

 飲酒は,国際的な評価により乳癌の確実なリスク要因の一つとされている。また個人の努力によりリスクを変えることができる数少ない要因の一つである。同様に乳癌患者のおいても,飲酒が予後に関連することが懸念されており,乳癌患者を対象としたコホート研究においてその関連が検討されている。

解 説

 これまでに,アルコール飲料の摂取と乳癌患者の予後に関するメタアナリシス1件が報告されている1)。このメタアナリシスでは25件のコホート研究が厳密に選択されている。14件が診断前におけるアルコール摂取と乳癌死亡リスク,10件が診断後におけるアルコール摂取と乳癌死亡リスク,1件が診断前後のアルコール摂取についての報告で,乳癌患者10,912例(うち乳癌再発2,027例)を含む719,555例を対象としている。最も摂取量が多い群と最も少ない群を比較し,ハザード比(HR)を算出している。その結果,乳癌診断前後の時期を問わず,アルコール摂取と乳癌死亡リスクに有意な関連は認めなかった(HR比:1.06,95%CI:0.97—1.17)。閉経状況による層別解析でも,閉経前のハザード比は1.05(95%CI:0.81—1.36),閉経後は1.17(95%CI:0.94—1.44)と有意な関連を認めなかった。診断時期別によるアルコール摂取と乳癌死亡のリスクを検討でも,診断前のアルコール摂取(HR比:1.05,95%CI:0.93—1.19),診断後のアルコール摂取(HR比:1.08,95%CI:0.94—1.25)ともに乳癌死亡リスクとの間に有意な関連は認めなかった。エストロゲン受容体別による層別解析でも,エストロゲン受容体陽性乳癌(HR比:1.03,95%CI:0.77—1.37),陰性乳癌(HR比:0.98,95%CI:0.69—1.40)ともアルコール摂取と乳癌死亡リスクに関連は認めなかった。

 また,アルコール摂取量と乳癌死亡リスクについての用量反応関係は認めなかったが,1日20 g以上のアルコール摂取をした場合には,ハザード比が1.14(95%CI:1.02—1.27)と乳癌死亡リスクの増加を認めている。

 2014年にWorld Cancer Research Fund(WCRF)が出版した報告書(二次資料①)では,診断前のアルコール摂取と診断後1年以降のアルコール摂取について全死亡リスクと乳癌死亡リスクについてそれぞれで検討している。その結果,乳癌患者における全死亡リスクと診断前アルコール摂取について,用量反応関係に関しては7件のコホートが選択され,相対リスクは1.00(95%CI:0.99—1.00)であった。また,アルコールの最小摂取群を基準とした最大摂取群の相対リスクに関しては6件のコホートが選択され,0.93(95%CI:0.82—1.06)といずれも有意な関連を認めなかった。

 診断後,1年以上経過した後のアルコール摂取と全死亡リスクにおいても検討されたが,用量反応関係に関しては相対リスク0.98(95%CI:0.93—1.03),最大摂取群の相対リスクは0.89(95%CI:0.72—1.09)といずれも関連を認めなかった。

 同様に,乳癌患者における診断前アルコール摂取と乳癌死亡リスクとについて,用量反応関係に関しては4件のコホートが選択され,相対リスクは1.00(95%CI:0.97—1.02)であった。また,アルコールの最小摂取群を基準とした最大摂取群の相対リスクに関しては5件のコホートが選択され,1.18(95%CI:0.81—1.72)といずれも関連を認めなかった。

 診断後,1年以上経過した後のアルコール摂取と乳癌死亡リスクについても検討され,用量反応関係に関しては3件のコホートが選択され,相対リスクが1.06(95%CI:0.79—1.42),最大摂取群の相対リスクは3件のコホートが選択され,1.22(95%CI:0.88—1.69)といずれも関連を認めなかった。

 以上のように多量飲酒者で乳癌死亡リスクが増加するという報告もあるが,全体として予後に関連することを示唆する結果は得られていない。エビデンスは増えつつあるが,日本人を対象とした研究結果はなく,2014年のWCRFの報告書でも,証拠不十分という評価であることを考慮して,アルコール飲料の摂取は乳癌患者の予後と関連するかどうかは結論付けられないと判断した。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms,breast cancer,Alcohol Drinking,alcohol consumption,drinking,Prognosis,Recurrence,“Neoplasm Recurrence,Local”,Humansのキーワードを用いて行った。検索期間は2012年9月~2014年9月とした。文献は19件同定し,4件を選択し論文査読を行った。そのうち,1件のメタアナリシスを選択し構造化抄録を作成し,本解説に引用した。

参考にした二次資料

① ‌World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition. Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Washington DC, AICR, 2014.

参考文献

1) Gou YJ, Xie DX, Yang KH, Liu YL, Zhang JH, Li B, et al. Alcohol Consumption and Breast Cancer Survival:A Meta— analysis of Cohort Studies. Asian Pac J Cancer Prev. 2013;14(8):4785—90.
→PubMed

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