日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

イソフラボン摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか (疫学.予防・予後との関連・ID41550)

CQ41 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(136-138ページ)
エビデンスグレード Limited-suggestive(可能性あり) 大豆食品,イソフラボンの摂取が乳癌再発のリスクを減少させる可能性がある。

背景・目的

 アジアでよく食されている大豆食品に含まれるイソフラボンは植物エストロゲンの一種であり,その抗エストロゲン作用からアジアと欧米の乳癌発症率の差を説明する要因として研究されてきた。いくつかのコホート研究で乳癌罹患の減少が観察されており,発症リスクを減少させる可能性がある。乳癌患者にもその抗エストロゲン作用から,再発リスクを減少させる可能性があると考えられる半面,弱いエストロゲン作用から再発リスクを高める可能性もあるとして欧米では摂取を控えるよう勧めるガイドラインもある。ここでは欧米とアジアの乳癌患者に対する研究結果について解説する。

解 説

 現時点において,乳癌患者に対するイソフラボンの影響を調べた質の高い臨床研究の数は限られている。他の生活習慣の予後への影響を調べる研究と同様,大規模前向きコホート研究が主な研究デザインとなるが,世界的にもまだ多くは行われていない。これまで,主なものとして,中国人を対象としたものが4つ,アメリカ人を対象としたものが2つ,米国在住の多民族を対象としたものが1つ報告されている程度である。中国の上海で,1996~1998年に登録された乳癌患者1,459人を5.2年(中央値)追跡した研究1)では,有意な関連が見られなかった。同地区で2002~2006年に登録された5,042人の乳癌患者を3.9年(中央値)追跡した研究2)では,最も高摂取の群が最も低摂取の群に比べて全死亡と再発が有意に少なかった。2002~2003年に術後内分泌療法を受けた524人の乳癌患者を5.1年(中央値)追跡した中国の研究3)では,閉経前患者では死亡との関連がみられなかったものの,閉経後患者では,イソフラボン低摂取群に対して,高摂取群の再発リスクが有意に低く,ホルモン受容体陽性乳癌でアナストロゾールを受けた患者では逆相関が観察された。2004~2006年に登録された616人の中国人患者を52.1カ月(中央値)追跡した研究4)では,大豆イソフラボンと死亡との間に逆相関がみられ,特にエストロゲン受容体陽性の患者でより強く関連がみられた。1997~2000年に登録された1,954人の米国女性乳癌患者のコホート研究5)では,6.31年の追跡データにより,再発に関して有意な減少傾向がみられた。タモキシフェンを投与した閉経女性では再発の有意な減少がみられた。もう一つの米国女性乳癌患者コホート6)では,1991~2000年に登録された3,088人の患者を7.3年(中央値)登録し,イソフラボン摂取量と死亡の間に有意な逆相関がみられた。2013年に報告されたハワイおよびカリフォルニア在住の多民族の乳癌患者3,842人を6.2年(平均値)追跡したコホート研究では,診断前の大豆およびイソフラボン摂取と全死亡,乳癌死亡との間に関連がみられなかった7)。これらの研究のうち,少なくとも4つの研究で有害事象がなかったことが確認されている。4つの研究のメタアナリシス8)では,再発減少と有意な関連がみられ,2つの米国データと1つの中国データの個人データの統合解析9)(メタアナリシスの一種)では死亡とは有意な傾向,再発とは有意な関連がみられた。2013年に報告された5つのコホート研究のメタアナリシスでは,診断後の大豆摂取と死亡に関して,ホルモン受容体陽性陰性によらず,死亡と再発に関して有意な逆相関がみられた10)(最も高摂取群の最も低摂取群に対する再発リスクは0.74,95%CI:0.64—0.85,死亡リスクは0.84,95%CI:0.71—0.99)。

 World Cancer Research Fund(WCRF)とAmerican Institute for Cancer Research(AICR)が共同で行っているFood,Nutrition,Physical Activity and the Prevention of Cancer:a Global Perspectiveでは,Continuous Update Reportとして,2014年にDiet,Nutrition,Physical Activity, and Breast Cancer Survivorsが発表された。この中では,これまでに報告された,大豆摂取と乳癌予後の関連についてのレビューが行われ,診断後12カ月以降の大豆および大豆たんぱく質摂取とその後の全死亡との関連について,limited—Suggestive(可能性あり),と結論付けている。

 より大規模かつ精度の高い研究を日本人も含め,他の集団で行う必要があるが,イソフラボン摂取で有害事象が増えたという報告はなく,再発リスク減少の可能性がある。

検索式

 2012年9月から2014年9月までを対象期間とし,PubMedにて,Breast Neoplasms,Soybeans,Soy Foods,Isoflavones,prognosis,recurrence,survivalをキーワードに検索を行った。検索結果の中から,本CQに関連するメタアナリシス1件,コホート研究1件を追加した。

参考にした二次資料

① ‌World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Continuous Update Project. Diet, Nutrition, Physical Activity, and Breast Cancer Survivors. 2014.

参考文献

1) Boyapati SM, Shu XO, Ruan ZX, Dai Q, Cai Q, Gao YT, et al. Soyfood intakeand breast cancer survival:a followup of the Shanghai Breast Cancer Study. Breast Cancer Res Treat. 2005;92(1):11‒7.
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2) Shu XO, Zheng Y, Cai H, Gu K, Chen Z, Zheng W, et al. Soy food intake and breast cancer survival. JAMA. 2009;302(22):2437-43.
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3) Kang X, Zhang Q, Wang S, Huang X, Jin S. Effect of soy isoflavones on breast cancer recurrence and death for patients receiving adjuvant endocrine therapy. CMAJ. 2010;182(17):1857-62.
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4) Zhang YF, Kang HB, Li BL, Zhang RM. Positive effects of soy isoflavone food on survival of breast cancer patients in China. Asian Pac J Cancer Prev. 2012;13(2):479-82.
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5) Guha N, Kwan ML, Quesenberry CP Jr, Weltzien EK, Castillo AL, Caan BJ. Soy isoflavones and risk of cancer recurrence in a cohort of breast cancer survivors:the Life After Cancer Epidemiology study. Breast Cancer Res Treat. 2009;118(2):395-405.
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6) Caan BJ, Natarajan L, Parker B, Gold EB, Thomson C, Newman V, et al. Soy food consumption and breast cancer prognosis. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2011;20(5):854-8.
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7) Conroy SM, Maskarinec G, Park SY, Wilkens LR, Henderson BE, Kolonel LN. The effects of soy consumption before diagnosis on breast cancer survival:the Multiethnic Cohort Study. Nutr Cancer. 2013;65(4):527-37.
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8) Dong JY, Qin LQ. Soy isoflavones consumption and risk of breast cancer incidence or recurrence:a meta-analysis of prospective studies. Breast Cancer Res Treat. 2011;125(2):315-23.
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9) Nechuta SJ, Caan BJ, Chen WY, Lu W, Chen Z, Kwan ML, et al. Soy food intake after diagnosis of breast cancer and survival:an in-depth analysis of combined evidence from cohort studies of US and Chinese women. Am J Clin Nutr. 2012;96(1):123-32.
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10) Chi F, Wu R, Zeng YC, Xing R, Liu Y, Xu ZG. Post-diagnosis soy food intake and breast cancer survival:a meta-analysis of cohort studies. Asian Pac J Cancer Prev. 2013;14(4):2407-12.
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