日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳製品の摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか (疫学.予防・予後との関連・ID41560)

CQ42 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(139-140ページ)
エビデンスグレード Limited-no conclusion(証拠不十分) 乳製品の摂取が乳癌の予後に影響するかどうかは結論付けられない

背景・目的

 乳製品は生活に密着した製品であり社会の関心は高い。乳癌の発症リスクに関しては,メタアナリシスが報告されており,データのばらつきはあるもののリスクが減少する傾向にある。乳癌患者における乳製品の摂取と予後についての研究も少ないが報告されている。

 乳製品といっても,牛乳,チーズ,アイスクリーム,ヨーグルト,バターなど種類はさまざまであり,構成成分も異なる。原料も,主に乳牛から作られるが,山羊,羊,水牛,馬などさまざまであり,一括りにリスクを考えるには注意が必要である。乳製品の中には,エストロゲンやインシュリン様成長因子などの増殖に関連する物質や抗腫瘍効果をもつ共役リノール酸の存在があり,乳製品が乳癌予後に影響を及ぼすか否かは興味深い課題である。

解 説

 牛乳・乳製品の摂取と乳癌予後との関連性を検討した前向き研究は5件と少数であり,内訳は診断時の乳製品摂取と予後を検討したコホート研究が2件1)2),診断後の乳製品摂取と予後との関連を検討したコホート研究3件であった3)~5)

 診断時の乳製品摂取と予後との関連を検討した研究のうち,米国の149例を対象とした小規模コホート研究では診断時のバター,マーガリンの摂取と乳癌再発や死亡リスクとの間に有意な関連は認められていない1)。一方,472例を対象とした米国のコホート研究では,乳製品(バター,マーガリン,ラード)の1日の摂取回数が1回増すたびに30%の有意な再発リスク増加(相対リスク:1.3,95%CI:1.03—1.64)を報告している2)

 乳癌術後3カ月目の乳製品の摂取と予後を検討したオーストラリアの103例を対象とした小規模コホート研究では乳製品の摂取と乳癌再発,死亡リスクとの間に有意な関連は認められていない3)。1,982例を対象とした最も大規模な米国Nurses’ Health Studyでは,乳製品の摂取量に基づき4つの群に分け,最少摂取群を基準に全死亡に関する相対リスクを算出したところ,摂取量が多い順に,0.72(95%CI:0.52—1.99),0.82(95%CI:0.6—1.11),0.93(95%CI:0.7—1.24)と全死亡リスクの低下傾向が認められている(傾向検定のp=0.04)4)

 1,893例の早期の浸潤性乳癌を対象とした大規模なコホート研究であるLife After Cancer Epidemiology(LACE)studyでは5)観察期間中(中央値11.8年)に349例の乳癌再発を認めた。全死亡数は372例でそのうち乳癌死亡は189例であった。乳製品摂取と乳癌死亡リスクには関連は認めなかったが,全死亡リスクとの関連においては,最少摂取群を基準とした最多摂取群の相対リスクは,1.39(95%CI:1.02—1.90)とリスク増加を認めた。高脂肪乳製品では再発リスクは高めないが(HR:1.22,95%CI:0.91—1.65),全死亡リスクは最も多く摂取する場合で1.64(95%CI:1.24—2.17),乳癌死亡に限定しても1.49(1.00—2.24)とリスク増加を認めた。しかしながら,低脂肪乳製品に関しては全死亡リスク,乳癌死亡リスクとも摂取量との間に相関は認めなかった。

 2014年にWorld Cancer Research Fund(WCRF)が出版した報告書(二次資料①)では,総脂肪摂取量と乳癌患者の全死亡リスクの増加の可能性,特に,飽和脂肪酸の摂取がリスクを増加する可能性があると報告している。乳製品は,飽和脂肪酸が含まれているものが多く,生活に必要なものが多い。今後は,乳製品の種類や組成などを考慮した詳細な研究が待たれる。

検索式

 検索はPubMedにて,Breast Neoplasms/Dairy Products,Prognosis,Recurrence,Human,のキーワードを用いて行い,検索期間は2012年9月~2014年9月とした。文献は21件の同定し,3件を選択し論文査読を行った。そのうち1件を選択し,2013年版での引用文献4件と合わせて計5件の構造化抄録を作成し,本解説に引用した。

参考にした二次資料

① ‌World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, Nutrition. Physical Activity, and the Prevention of Cancer:a Global Perspective. Washington DC, AICR, 2014.

参考文献

1) Saxe GA, Rock CL, Wicha MS, Schottenfeld D. Diet and risk for breast cancer recurrence and survival. Breast Cancer Res Treat. 1999;53(3):241―53.
→PubMed

2) Hebert JR, Hurley TG, Ma Y. The effect of dietary exposures on recurrence and mortality in early stage breast cancer. Breast Cancer Res Treat. 1998;51(1):17-28.
→PubMed

3) Ingram D. Diet and subsequent survival in women with breast cancer. Br J Cancer. 1994;69(3):592-5.
→PubMed

4) Holmes MD, Stampfer MJ, Colditz GA, Rosner B, Hunter DJ, Willett WC. Dietary factors and the survival of women with breast carcinoma. Cancer. 1999;86(5):826-35.
→PubMed

5) Kroenke CH, Kwan ML, Sweeney C, Castillo A, Caan BJ. High-and low-fat dairy intake, recurrence, and mortality after breast cancer diagnosis. J Natl Cancer Inst. 2013;105(9):616-23.
→PubMed

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