日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳癌検診においてデジタルマンモグラフィはスクリーンフィルムマンモグラフィと同等に勧められるか (検診.画像診断・検診・ID51650)

CQ3 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(171-173ページ)
推奨グレード A 乳癌検診においてデジタルマンモグラフィはスクリーンフィルムマンモグラフィと同等に強く勧められる。

背景・目的

 医療画像のデジタル化は,撮影効率の向上,多様な画像処理,画像保存,情報の伝達など,今までのアナログシステムに比較し大きな利点を有する。単純X線写真から超音波,CT,MRIに続いてマンモグラフィもデジタル化,モニタ診断に移行しつつある。マンモグラフィにおいては,空間分解能が他の画像診断より高度なものを要求されるため,デジタルマンモグラフィ(DM)が乳癌検診においてスクリーンフィルムマンモグラフィ(SFM)と同等の力を有するかどうかについて検討した。

解 説

 DMもSFMも,伸展固定された乳房へX線を曝射するまでは同じである。乳房を通過してきたX線を,増感紙(スクリーン)で光に変えてフィルムを感光させるのがSFMであるのに対して,直接もしくは間接的に電荷に変換しデジタル情報化したものがDMである。デジタル情報を可視化するには,SFMと同様にフィルムにプリントアウトするハードコピーと,モニタ診断を行うソフトコピーがある。乳房全体が撮影できる大きさのものをfull—field digital mammography(FFDM)と呼んでおり,その方式にはcomputed radiography(CR)システムとフラットパネル方式がある。現在,日本におけるDMはCRシステムのハードコピー診断がまだ多く見受けられるが,ソフトコピー診断をする施設も増加してきている。

(1)ランダム化比較試験

 DMのモニタ診断を用いた乳癌検診において,まとまった母数の比較試験が初めにオスロから報告された。OsloⅠ study1)では,3,683人の女性にDMとSFMの両方を撮影し総数で31人の乳癌が検出されている。DM群では23人,SFM群では28人の乳癌が検出されており,その乳癌発見率である0.62%と0.76%の間には有意差は認められなかった。続いて行われたOsloⅡ study2)では,45~69歳の女性23,929人を,無作為抽出によりDMあるいはSFMに振り分けた。DM群6,944人から41人,SFM群16,985人から64人の乳癌が検出され,DM群は乳癌発見率(0.59% vs 0.38%,p=0.03),感度(77.4% vs 61.5%,p=0.07)が高く,特異度が低かった(96.3% vs 97.9%,p<0.05)。OsloⅠ studyの乳癌発見率はSFM群のほうが高かったが,OsloⅡ studyでは逆転している。この原因としては,画像処理技術の進歩とともに,SFMの読影に慣れた読影医であっても,モニタ診断においては,読影環境を整え,モニタ読影への習熟が必要であることが指摘されている。

 DMIST(digital mammographic imaging screening trial)は,米国とカナダで行われた大規模な比較試験である3)。49,528人に対してDMとSFMの2方式を撮影した結果,5種類のデジタルシステムが全体としてはアナログと同等の成績であったことが示された。DMの診断はソフトコピーとハードコピーが混在している。サブグループ解析で,① 50歳未満(BI—RADSスコアの評価では,感度:SFM 51%,DM 78%,AUC差0.15),② 高濃度および不均一高濃度乳房(感度:SFM 55%,DM 70%,AUC差0.11),③ 閉経前,閉経直後(感度:SFM 51%,DM 72%,AUC差0.18)の女性においては,DMの正診率が有意にSFMより高かったことが示された。さらに,DMISTの発見癌を解析したところ,乳腺実質が多い乳房においてDMの乳癌検出率が高いのは,画像コントラストの高さが原因であることが示されている4)

(2)乳癌検診成績の比較

 Population—based screeningにおけるSFMとDMの精度を比較した10の研究のメタアナリシス5)では50歳以下でDMはSFMより精度が高いとされている。

 SFMからDMへの移行期に収集された大規模なNational Population Based Screening Program
の成績が複数の国から報告されている。オランダから2004~2010年の移行期における6,007,582人のデータ6)ではDMの乳癌検出率は49~54歳の群で有意に上昇し,原因として初回スクリーニングでのDCISとT1aの検出上昇が挙げられている。DMのPPVは18.4%(2004)から32.5%(2010)に上昇し,ラーニングカーブによるものと指摘されている。1,000人のスクリーニングに調整したリコールレイトは3.4 per 1,000(2004)から2 per 1,000(2010)に減少している。ドイツの隔年のスクリーニングプログラムの移行期(2003~2007年)1,198,493人のデータ7)ではDMはSFMと比較して臨床的意義のある浸潤癌やhigh grade DCISの早期発見に有利とされている。ノルウェーから1996~2010年に収集された557,942人(SFM:391,188人,DM:446,172人)の比較8)ではリコールレイト(SFM vs DM:3.4% vs 2.9%)(p<0.001),生検率(1.4% vs 1.1%)(p<0.001)とも有意にDMで減少し,過剰診断を防ぐとされている。さらにリコールのPPV(19.3% vs 48.3%)(p<0.001),生検のPPV(22.7% vs 57.5%)(p<0.001)いずれもDMで有意に上昇している。また移行期のラーニングカーブは一時的で元のレベルまで回復するのに25カ月かかっている。

 フラットパネル方式(direct digital MMG;DM),computed radiography(CR)システム,SFMの成績を比較した2つの大規模なコホート研究の対象はいずれも50~74歳である。2008~2010年フランスの123施設によるNational Routine Population—Based Screening Program9)ではDM 23,423人,CR 73,320人,SFM 65,514人において乳癌検出率はDM,CR,SFM:0.71%,0.55%,0.66%でCRはSFMよりも低く,またカナダから2008~2009年のOntario Breast Screening Program(OBSP)の報告10)(DR 220,520人,CR 64,210人,SFM 403,688人)でも乳癌検出率はDR 4.9 per 1,000,SFM 4.8 per 1,000であったのに対し,CRは3.4 per 1,000と有意に低いと報告されている。

 わが国ではいまだCRの割合が高いことから,モダリティにより乳癌検出率には差があり,特にCRでは低くなる可能性があることを認識し,注意する必要がある。

検索式・参考にした二次資料

 2013年度版での検索結果に加え,PubMedにて,digital,Sensitivity and Specificity,Mammography,Breast Neoplasms,Mass Screening,digital mammographyのキーワードを用いて検索した。検索期間は2012~2014年とした。

参考文献

1) Skaane P, Skjennald A, Young K, Egge E, Jebsen I, Sager EM, et al. Follow‒up and final results of the Oslo I Study comparing screen‒film mammography and full‒field digital mammography withsoft‒copy reading. Acta Radiol. 2005;46(7):679‒89.
→PubMed

2) Skaane P, Hofvind S, Skjennald A. Randomized trial of screen‒film versus full‒field digital mammography with soft‒copy reading in population‒based screening program:follow‒up and final results of Oslo II study. Radiology. 2007;244(3):708‒17.
→PubMed

3) Pisano ED, Gatsonis C, Hendrick E, Yaffe M, Baum JK, Acharyya S, et al;Digital Mammographic Imaging Screening Trial(DMIST)Investigators Group. Diagnostic performance of digital versus film mammography for breast‒cancer screening. N Engl J Med. 2005;353(17):1773‒83.
→PubMed

4) Pisano ED, Acharyya S, Cole EB, Marques HS, Yaffe MJ, Blevins M, et al. Cancer cases from ACRIN digital mammographic imaging screening trial:radiologist analysis with use of a logistic regression model. Radiology. 2009;252(2):348‒57.
→PubMed

5) Souza FH, Wendland EM, Rosa MI, Polanczyk CA. Is full‒field digital mammography more accurate than screen‒film mammography in overall population screening? A systematic review and meta‒analysis. Breast. 2013;22(3):217‒24.
→PubMed

6) van Luijt PA, Fracheboud J, Heijnsdijk EA, den Heeten GJ, de Koning HJ;National Evaluation Team for Breast Cancer Screening in Netherlands Study Group(NETB). Nation‒wide data on screening performance during the transition to digital mammography:observations in 6 million screens. Eur J Cancer. 2013;49(16):3517‒25.
→PubMed

7) Bluekens AM, Holland R, Karssemeijer N, Broeders MJ, den Heeten GJ. Comparison of digital screening mammography and screen‒film mammography in the early detection of clinically relevant cancers:a multicenter study. Radiology. 2012;265(3):707‒14.
→PubMed

8) Hofvind S, Skaane P, Elmore JG, Sebuødegård S, Hoff SR, Lee CI. Mammographic performance in a population‒based screening program:before, during, and after the transition from screen‒film to full‒field digital mammography. Radiology. 2014;272(1):52‒62.
→PubMed

9) Séradour B, Heid P, Estève J. Comparison of direct digital mammography, computed radiography, and film‒screen in the French national breast cancer screening program. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(1):229‒36.
→PubMed

10) Chiarelli AM, Edwards SA, Prummel MV, Muradali D, Majpruz V, Done SJ, Brown P, Shumak RS, Yaffe MJ. Digital compared with screen‒film mammography:performance measures in concurrent cohorts within an organized breast screening program. Radiology. 2013;268(3):684‒93.
→PubMed

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.