日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

トモシンセシスはマンモグラフィ検診に勧められるか (検診.画像診断・検診・ID51660)

CQ4 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(174-176ページ)
推奨グレード C1 トモシンセシスを用いたマンモグラフィ検診に,いまだ十分な科学的根拠はないが,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。

背景・目的

 Full field digital mammography(FFDM)の登場によって乳腺X線検査においてもデジタル化が急速に進み,新しい画像診断法としてdigital breast tomosynthesis(DBT)乳腺トモシンセシス検査が注目されている。DBTでは乳腺の重なりが少ない断層画像が得られるため,従来のマンモグラフィでは描出困難な高濃度乳腺において臨床的有用性が報告されている。今回,トモシンセシスを用いたマンモグラフィ検診が有用かどうかを検証した。

解 説

 トモシンセシス(Tomosynthesis)とはTomography(断層)とSynthesis(合成)の2つの意味から作られた造語であり,1回の断層撮影で任意の高さの裁断面を再構成する撮影技術である。トモシンセシスの原理は,1930年代にZiedses des Planes1)が発表し,臨床医学へは1971年にMiller2)らにより報告された。近年,FPD(flat panel detector)の登場により,トモシンセシスは低線量で高い分解能による高精細な断層像を提供できるデジタルトモシンセシスとして注目されるようになった。マンモグラフィのデジタルトモシンセシス(DBT)はNiklason3)らによって1997年にファントムと乳房全摘標本を用いた研究にて有用性が報告されている。

 DBTではX線管が異なる限られた角度(-θ~+θ)まで移動し,複数回撮影することによって得られたプロジェクション像から断層像を再構成することにより,重なりの少ない画像が再構成される。現在各装置メーカーによってX線管の移動角度(15~50度),照射回数(9~25回),撮影時間(2D+トモシンセシスモード:3.7~25秒),画像再構成法(シフト加算法,FBP;filtered back—projection法,逐次近似法;interative reconstruction)等は大きく異なり,得られる画質も大きく異なっている4)

(1)診断精度の比較

 DBTは2DMMGが直面していた乳腺の重なりを減少させることから,腫瘤,distortion,FAD等の石灰化以外の診断精度を有意に改善する5)。よって,乳癌検出を改善し,偽陽性を減少させるとした報告が多数認められる。診断における20の研究のメタアナリシスでも感度,特異度の上昇が報告されている6)

(2)乳癌検診成績の比較

 スクリーニングにおいて2DとDBTの診断能を比較した大規模研究の報告は多数認められる。Community—basedの大規模スクリーニング7)におけるDBT群20,943人と2D群38,674人の臨床成績の比較にてDBTでは2Dよりも有意差をもって,乳癌検出率は28.6%上昇,リコールレイトは16.1%低下,陽性反応適中度は58.3%上昇した。

 さらに大規模な454,850人の多施設研究8)では2D群281,187人と2D+DBT併用群173,663人の比較を1,000人のスクリーニングに調整した結果では2D+DBT併用群で乳癌検出率は1.2人上昇,リコールレイトは16人減少し,リコールの陽性反応適中度は2.1%上昇したとされている。

 前向き臨床試験としては,現在世界で複数のスクリーニングトライアルが走行しているが2つのトライアルでpreliminaryな報告がされている。オスロから報告された12,631人のOTST(Oslo Tomosynthesis Screening Trial)9では2D群と2D+DBT併用群の比較で,DBT使用により乳癌検出率は27%上昇(特に浸潤癌では40%上昇),リコールレイトは15%減少した。また,イタリアから報告された7,292人のSTORM(Screening with Tomosynthesis OR standard Mammography)10でもリコールレイトは17.2%低下しており,今後,ランダム化比較試験の必要性が示唆されている。

 DBTの問題点としては,被曝量の増加,読影時間の延長,コスト,および画像容量増加が挙げられる。特に被曝に関しては,2D撮影にDBTを加えることにより通常の約2倍の線量となる。しかし,被爆線量に関しては装置により差があり,また,その対処方法に関しても装置メーカーごとに異なる。例えば,DBTの3Dデータから2D画像を再構成することで2D撮影を省略して被曝量を半減する手法も報告されている11)

(3)今後の課題

 現在トモシンセシスを検診に使用する際の明確な基準はない。高濃度乳房や乳癌発症リスクが高い症例に対するスクリーニングでの使用が期待されるが,今後どのような対象にDBTによるスクリーニングを行うのか,統一した基準を設ける必要がある12)また,装置メーカーによりかなり撮影技術が異なる現状も踏まえ,検診のみならず,診療においてDBTを2D撮影に加えることで診断能が向上することの日本国内での検証,多施設での臨床試験が行われることも重要であると考える。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,tomosynthesis,mammography,screening,early detection of cancerのキーワードを用いて検索した。検索期間は2000~2014年とした。ハンドサーチで検索された重要文献も追加した。

参考文献

1) Ziedses des Plantes BG. Serieskopie. Eine rontgenographische Methode, welche ermoglicht, mit Hilfe eintger Aufnahmen eine unendliche reihe paralleier Ebenen in Reihenfolge gesondert zu betrachten. Fortschr Röntgenstr. 1938;57:605—16.

2) Miller ER, McCurry EM, Hruska B. An infinite number of laminagrams from a finite number of radiographs. Radiology. 1971;98(2):249—55.
→PubMed

3) Niklason LT, Christian BT, Niklason LE, Kopans DB, Castleberry DE, Opsahl—Ong BH, et al. Digital tomosynthesis in breast imaging. Radiology. 1997;205(2):399—406.
→PubMed

4) Sechopoulos I. A review of breast tomosynthesis. Part I. The image acquisition process. Med Phys. 2013;40(1):014301.
→PubMed

5) Zuley ML, Bandos AI, Ganott MA, Sumkin JH, Kelly AE, Catullo VJ, et al. Digital breast tomosynthesis versus supplemental diagnostic mammographic views for evaluation of noncalcified breast lesions. Radiology. 2013;266(1):89—95.
→PubMed

6) Alakhras M, Bourne R, Rickard M, Ng KH, Pietrzyk M, Brennan PC. Digital tomosynthesis:a new future for breast imaging? Clin Radiol. 2013;68(5):e225—36.
→PubMed

7) Greenberg JS, Javitt MC, Katzen J, Michael S, Holland AE. Clinical performance metrics of 3D digital breast tomosynthesis compared with 2D digital mammography for breast cancer screening in community practice. AJR Am J Roentgenol. 2014;203(3):687—93.
→PubMed

8) Friedewald SM, Rafferty EA, Rose SL, Durand MA, Plecha DM, Greenberg JS, et al. Breast cancer screening using tomosynthesis in combination with digital mammography. JAMA. 2014;311(24):2499—507.
→PubMed

9) Skaane P, Bandos AI, Gullien R, Eben EB, Ekseth U, Haakenaasen U, et al. Comparison of digital mammography alone and digital mammography plus tomosynthesis in a population—based screening program. Radiology. 2013;267(1):47—56.
→PubMed

10) Ciatto S, Houssami N, Bernardi D, Caumo F, Pellegrini M, Brunelli S, et al. Integration of 3D digital mammography with tomosynthesis for population breast—cancer screening(STORM):a prospective comparison study. Lancet Oncol. 2013;14(7):583—9.
→PubMed

11) Skaane P, Bandos AI, Eben EB, Jebsen IN, Krager M, Haakenaasen U, et al. Two—view digital breast tomosynthesis screening with synthetically reconstructed projection images:comparison with digital breast tomosynthesis with full—field digital mammographic images. Radiology. 2014;271(3):655—63.
→PubMed

12) Hardesty LA, Kreidler SM, Glueck DH. Digital breast tomosynthesis utilization in the United States:a survey of physician members of the Society of Breast Imaging. J Am Coll Radiol. 2014;11(6):594—9.
→PubMed

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.