日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

CT、MRIは乳房内病変の診療方針決定に勧められるか (検診.画像診断・画像診断―CT・MRI・ID51750)

CQ6 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(197-200ページ)
推奨グレード B MRIは乳房内病変の診療方針決定に勧められる。
D CTは乳房内病変の診療方針決定に勧められない。

背景・目的

 MRIは乳癌に対し,高い感度を有する一方,特異度は相対的に低いと報告されている。その要因として標準化された撮像方法や診断基準がないことが指摘されていた。それらの標準化を目的として2003年米国放射線専門医会(ACR)からBI—RADS—MRI1)が提唱され,わが国でも導入が進んでいる。さらに2008年には欧米から相次いで乳房MRIの適応や撮像方法に関するガイドラインが公表され2)3),乳房MRIの撮像方法や診断基準は次第に標準化されており,MRIの診断能は向上している。わが国においても日本乳癌検診学会により乳がん発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドラインが策定され,その中で乳房MRIの撮像法が細かく論じられ,標準化が進められている。また,BI—RADS—MRIでは,MRIで同定された病変に対し用語を規定し,さらに悪性の程度に応じた診療方針をカテゴリー分類で示すことが求められている。MRIが乳房内病変の診療方針を決定する際に有用かどうか検討した。

 一方,CTはわが国・欧米では撮影法や読影に関する標準化はなされていない。また,乳房内病変の良悪性鑑別を含めた診療方針決定に用いられることはほとんどなく,BI—RADSによる評価の対象とはなっていない。

解 説

 MRIの乳癌に対する診断能は,メタアナリシスでは感度と特異度は0.90(95%CI:0.52—1.00),0.72(95%CI:0.21—1.00)であり,高い感度を示す一方で特異度は相対的に低く,ばらつきも大きい4)。ただし,これらの研究では対象患者,撮像方法,および診断基準はさまざまであり,MRIの特異度のばらつきの要因となっている。さらに,撮像方法や診断基準を統一した多施設共同研究によるMRIの診断能は,マンモグラフィのBI—RADSカテゴリー4または5,あるいは臨床上または超音波検査上での異常所見により生検が考慮された患者に対し,感度は88.1%,特異度は67.7%,陽性適中度72.4%,陰性適中度85.4%であり,MRIの陽性適中度はマンモグラフィより高いが,生検を回避できるほどの陰性適中度ではないと報告されている5)。しかしながら,この多施設共同研究ではBI—RADS—MRIで分類されているような腫瘤性病変と非腫瘤性病変を区別した診断基準での評価は行われていない。

 BI—RADS—MRIに基づいた2003年以降のMRIの報告では,単一施設での腫瘤性病変に対するMRIの診断能は,感度99%,特異度89%,陽性適中度96%,陰性適中度98%であり6),読影者間での所見の評価や診断の一致率も高い7)。一方,非腫瘤性病変においても読影者間の所見の評価の一致率は高く7),BI—RADS—MRIでの評価に従来の検査法を加えることにより,読影者内および読影者間での高い診断の一致率と高い正診度が得られ,生検の適応決定に有用であることが報告されている8)。また,BI—RADS—MRIを用いた前向きの多施設共同研究では,新しく診断された乳癌患者の対側乳房においてマンモグラフィおよび超音波にて異常所見が認められず,MRIでのみ指摘された病変について,腫瘤および非腫瘤性病変いずれにおいてもカテゴリーが上昇するに従い,陽性適中度が上昇し,BI—RADS—MRIによるカテゴリー判定が生検の適応を決定するうえで有用であることが報告されている9)。さらに,造影MRIでおそらく良性と考えられるカテゴリー3と判断された病変の悪性の頻度は,非腫瘤性病変のみの0.9%(1/106)と高い陰性適中度を示すこと10)や,ハイリスクグループを対象とした乳癌スクリーニングにおける非触知病変においても,MRIの診断能は,感度92.6%,特異度98.4%,陽性適中度48.0%,陰性適中度99.9%,ROC解析における曲線下面積は0.91と,マンモグラフィや超音波と比較し,高い感度,陽性適中度および正診度が報告されている11)。これらの前向き多施設共同研究が示すようにBI—RAD—MRIに基づいたカテゴリー判定を行うことにより,MRIは高い診断能を示すことが証明されており,生検の適応など,その後の診療方針を決定するうえで有用と考えられる。

 乳腺疾患の良悪性鑑別において,画像診断により良性と悪性を完全に区別することは困難であり,画像診断に求められる一つの役割は,このようなBI—RADSカテゴリー分類に従って生検が必要な症例か否かを判断することである。実際の臨床の場では,マンモグラフィや超音波にて同定される病変は,それぞれの検査法のカテゴリー分類に従って生検の適応が決定され,画像ガイド下生検が行われるため,MRIが乳房内病変の治療方針決定に用いられることは少ない。しかしながら,MRIはマンモグラフィや超音波と比較し,高い診断能を示すことは明らかであり,臨床所見,マンモグラフィや超音波にて所見が一致せず,生検の適応決定に迷う症例やマンモグラフィや超音波での画像ガイド下生検が困難な症例においては,MRIを施行することは有用と考えられる。EUSOBIのガイドラインにおいても,従来の画像診断法にて診断不確定(inconclusive)な病変の評価はMRIの適応の一つとなっている3)さらに欧米のガイドラインではMRIでのみ描出されるいわゆる“MRI only lesion”の存在が明記されMRIを中心とした生検を含む診断体制の必要性が明文化されている23

 また,血性乳汁など臨床的に悪性を疑わせるような症例に関して,MRIはマンモグラフィや超音波にて同定できない乳癌を検出し12),診療方針決定に役立つことが報告されている13)。NCCNのガイドラインにおいても単孔性の乳頭異常分泌があり,マンモグラフィや超音波でカテゴリー3以下の場合にはMRI(または乳管造影)が追加する検査のオプションとして示されている14)。わが国における乳管造影の普及度を考慮すると,臨床的に悪性が否定できない乳頭異常分泌症例に対して,MRIを行うことはその後の診療方針を決定するうえで有用であると考えられる。

 一方,石灰化病変に関してはMRIの有用性は低いとする報告が多い15)~17)。EUSOBIのガイドラインにおいても,石灰化病変はマンモグラフィの所見に基づき生検の適応を決定することが推奨されている3)。しかしながら,これらの報告は,BI—RADS—MRI発表以前のもの,もしくは,BI—RADS—MRIに基づく病変の評価は行われていない。BI—RADS—MRIに基づいて病変の評価を行った単一施設での研究では,石灰化病変に対し造影MRIを加えることにより,診断能は向上し,MRIが石灰化病変のステレオガイド下吸引式乳房組織生検の適応決定に有用であることが報告されている18)19)現時点では石灰化病変に対するMRIの有用性を示す根拠は十分ではないが,今後のさらなる検討が期待される。

 以上のように,MRIは乳房内病変に対する診療方針決定において,マンモグラフィや超音波にて診断不確定な病変や画像ガイド下生検が困難な症例の診療方針決定に有用である。ただし,MRIが高い診断能を示すためには高い精度管理のもとで行われる必要がある。NCCNガイドラインにおいても,乳房専用コイルを使用し,乳房MRIの適応や撮像に精通した画像診断医が,BI—RADS—MRIに基づいて読影することを推奨している20)。今後MRIの診断能を向上させるためには撮像法を含めた読影システムの標準化とよりいっそうの高い精度管理が求められる。

 CTの単一施設での乳腺疾患に対する診断能は,感度89.6%,特異度54.5%,陽性適中度93.2%,陰性適中度39.3%および正診率84.7%であり21),造影MRIより低い特異度および陰性反応適中度を示している。一方,感度92.6%,特異度100%,陽性適中度100%,陰性適中度100%,および正診率95.7%と高い診断能の報告もあるが22),症例数は少なく,対象症例は腫瘤のみであり,非腫瘤性病変は含まれていない。また,CTがマンモグラフィや超音波と比較して診断能が優れることを証明した研究もない。したがって,CTが乳房内病変の診療方針決定に有用であるとする根拠は十分ではない。さらに,CTでは血流動態の評価のために多時相撮像を行うとX線被曝が増加するという短所もあり,乳房内病変の診療方針決定のためにCTを施行することは推奨できない。

検索式・参考にした二次資料

 2013年版の検索結果に加え,PubMedにて,2003年以後のbreast,MRI,CT,BI—RADS,sensitivity,specificity,breast×MR imaging×meta—analysis or multicenter,およびbreast×MR imaging×microcalcification or nipple dischargeのキーワードを用いて検索した。

参考文献

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