日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

術前検査として肝臓超音波検査、胸腹部CT、術前検査として肝臓超音波検査、胸腹部CT、骨シンチグラフィ、FDG-PETは勧められるか (検診.画像診断・画像診断―術前ステージング・ID51780)

CQ9 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(207-209ページ)
推奨グレード C2 遠隔転移を疑わせる症状や所見のないStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者に,術前検査(staging)として肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PETを勧められる十分な科学的根拠はなく,積極的には勧められない。
B 遠隔転移を強く疑わせる症状や臨床所見のあるStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者,およびStage Ⅲ以上の初発乳癌患者に対して,術前検査(staging)として肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PETを行うことは勧められる。

推奨グレードを決めるにあたって

 遠隔転移を疑わせる症状や所見のないStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者に画像診断検査を行っても転移が見つかる可能性は少なく,上述の画像診断検査の有用性は低いと考えられた。一方,遠隔転移を強く疑わせる症状や臨床所見のあるStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者,およびStage Ⅲ以上の初発乳癌患者では,遠隔転移が見つかることでStageが変わり,治療方針も変わることから,肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PET(PET/CTを含む)といった画像診断検査を行うことの有用性は高いと考えられた。

背景・目的

 一般的に術前に乳癌患者に対して肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ等の全身検索が実施されることが多く,近年はFDG—PET(特にPET/CTとして)が施行されることが多くなっている。これらの有用性について検討した。

解 説

 遠隔転移を疑わせる症状や所見のないStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者に肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PETを施行しても転移が見つかる可能性は少ない。骨シンチグラフィ,胸部X線,胸部・腹部のCT,FDG—PET(あるいはPET/CT)を用いた遠隔転移検索についてのシステマティック・レビュー1)では,乳癌患者の7.0%で転移が見つかったが,StageⅠ,Ⅱで転移の存在する割合はそれぞれ0.2%,1.2%と非常に低く,Stage Ⅲでは13.9%,炎症性乳癌では39.6%と高率であったと報告されている。

 転移の検索において,肝臓超音波検査は感度50~100%(中央値100%),特異度は91~100%(中央値96.7%)と報告され,胸腹部CTでは感度87~100%(中央値100%),特異度86~98%(中央値93.1%),骨シンチグラフィは感度33~100%(中央値98.0%),特異度は85~100%(中央値93.5%),FDG—PETでは感度78~100%(中央値100%),特異度82~100%(中央値96.5%),FDG—PET/CTでは感度96~100%(中央値100%),特異度91~100%(中央値98.1%),という高い診断能が報告されている1)。しかし,いくつかの報告の再集計による検討では,偽陽性率は骨シンチグラフィでは10~22%,肝臓超音波検査では33~66%と高く2),不要な精密検査によるコストの上昇や患者の不安をもたらすことも指摘されている2)3)。骨シンチグラフィや肝臓超音波と比べてFDG—PET/CTは有用と報告されているが,コストや有病率の低さからStageⅠの初発乳癌患者における有用性は低いと考えられている1)4)~6)。NCCNガイドラインでも臨床症状や兆候のないStageⅠ,Ⅱの浸潤性乳癌では,病期診断に肝臓超音波検査,骨シンチグラフィ,胸腹部CT,およびFDG—PETは推奨されていない。

 40歳未満の初発乳癌患者においては,FDG—PET/CTによってStageⅠで5%(1/20),StageⅡAで5%(2/44),StageⅡBで17%(8/47)に遠隔転移が見つかったという報告もあり,若年者においては症状がない場合でも施行することが,生存率や不要なコストや治療の削減に役立つと思われる7)。また,StageⅡ患者についてものサブタイプ別の解析において,骨転移および肝転移がLuminal BH,HER2過剰発現およびBasal—likeに,肺転移がBasal—likeサブタイプにおいて検出されることが多く,転移の早期検出目的に術前検査を施行することが役立つ場合があるとされている8)。したがって,遠隔転移率の低いStageⅠ,Ⅱの初発乳癌の術前検査として肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PETを施行する場合には細心の注意のもと行うべきである。

 しかしながらStageⅠ,Ⅱの初発乳癌患者であっても限局性の骨痛や腹部症状など転移に関連するような臨床症状がある場合,アルカリフォスファターゼの上昇や肝機能異常などの血液検査の異常がある場合のように,身体所見や他の検査所見から遠隔転移が強く疑われる症例においては,転移検索を行うことが診療方針決定に有用と考えられる。StageⅢ以上の乳癌においては遠隔転移のリスクが高く,転移の有無を確認することが診療方針決定のために有用と考えられる。肝臓超音波検査,胸腹部CT,骨シンチグラフィ,FDG—PET(PET/CTを含む)は十分な感度・特異度を有していると考えられ,これらの患者に対して術前検査(staging)として行うことは有用と考えられる145

検索式・参考にした二次資料

 2013年版での検索結果に加え,PubMedにて,breast cancer,staging,bone,liver,FDG—PET,fluorodeoxyglucose—positron—emission—tomographyのキーワードを用いて検索した。検索期間は2013年以降とした。また,ガイドライン(NCCN)を参考にした。

参考文献

1) Brennan ME, Houssami N. Evaluation of the evidence on staging imaging for detection of asymptomatic distant metastases in newly diagnosed breast cancer. Breast. 2012;21(2):112—23.
→PubMed

2) Myers RE, Johnston M, Pritchard K, Levine M, Oliver T;Breast Cancer Disease Site Group of the Cancer Care Ontario Practice Guidelines Initiative. Baseline staging tests in primary breast cancer:a practice guideline. CMAJ. 2001;164(10):1439-44.
→PubMed

3) Gerber B, Seitz E, Müller H, Krause A, Reimer T, Kundt G, et al. Perioperative screening for metastatic disease is not indicated in patients with primary breast cancer and no clinical signs of tumor spread. Breast Cancer Res Treat. 2003;82(1):29-37.
→PubMed

4) Riegger C, Herrmann J, Nagarajah J, Hecktor J, Kuemmel S, Otterbach F, et al. Whole-body FDG PET/CT is more accurate than conventional imaging for staging primary breast cancer patients. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2012;39(5):852-63.
→PubMed

5) Koolen BB, Vrancken Peeters MJ, Aukema TS, Vogel WV, Oldenburg HS, van der Hage JA, et al. 18F-FDG PET/CT as a staging procedure in primary stage Ⅱ and Ⅲ breast cancer:comparison with conventional imaging techniques. Breast Cancer Res Treat.2012;131(1):117-26.
→PubMed

6) Cochet A, Dygai-Cochet Ⅰ, Riedinger JM, Humbert O, Berriolo-Riedinger A, Toubeau M, et al. 18F-FDG PET/CT provides powerful prognostic stratification in the primary staging of large breast cancer when compared with conventional explorations. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2014;41(3):428-37.
→PubMed

7) Riedl CC, Slobod E, Jochelson M, Morrow M, Goldman DA, Gonen M, et al. Retrospective analysis of 18F-FDG PET/CT for staging asymptomatic breast cancer patients younger than 40 years. J Nucl Med. 2014;55(10):1578-83.
→PubMed

8) Chen X, Sun L, Cong Y, Zhang T, Lin Q, Meng Q, et al. Baseline staging tests based on molecular subtype is necessary for newly diagnosed breast cancer. J Exp Clin Cancer Res. 2014;33:28.
→PubMed

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.