日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

腋窩リンパ節の評価に画像診断は勧められるか (検診.画像診断・画像診断―腋窩リンパ節・ID51790)

CQ10 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(210-211ページ)
推奨グレード B 超音波検査を腋窩リンパ節の術前評価に使用することは勧められる。
C2 CTやPETを腋窩リンパ節の評価の目的のみで使用することについては科学的根拠が十分とはいえず,実践することは基本的に勧められない。

推奨グレードを決めるにあたって

 病期診断において腋窩リンパ節の評価は,視触診に加え超音波検査を使用することで正診率が改善する。非侵襲的で乳癌の検出や良悪の鑑別診断に使用されている超音波検査を,腋窩の評価にも使用することは勧められる。

背景・目的

 腋窩リンパ節転移の診断は,触診と画像診断で行うことが一般的である。近年では,触診および画像診断でリンパ節転移が指摘できないN0乳癌に対してセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy;SNB)を施行し,腋窩リンパ節郭清を省略する手法が乳癌の標準治療になりつつある。病期診断およびSNBの適応決定において精度の高い腋窩リンパ節評価が必要とされている。

解 説

 触診による腋窩リンパ節評価の正診率は術者の技量に大きく左右され,約30~70%程度と一定していない1)。近年では超音波検査は乳癌術前評価において一般化されており,腋窩リンパ節の評価も同時に行うことが多い。腋窩リンパ節転移の正診率は,触診よりも触診に超音波検査を加えたほうが高く1),近年は,非触知リンパ節群の診断において,大きさ(感度49~87%,特異度56~97%)や,形態による基準(円形,低エコー,中心リンパ節門の消失,偏在性の皮質肥大を陽性;感度26~76%,特異度88~98%)を用いた評価の有用性が報告されている2)~4)。また,カラードプラでは辺縁の血流が悪性リンパ節を示唆する所見と報告されており(感度77%,特異度72%)5),この辺縁の血流の有無をBモード超音波に付加すると,特異度は94%のままで感度は81%から86%に改善するとの報告もある6)

 CTにおける腋窩リンパ節評価は,その感度が80%を超えるものが報告されている7)8)。術者の技量に依存する超音波検査と比較して客観性のある画像が得られることが利点であるが,現時点で有効であると断定できる根拠はまだ十分ではない。FDG—PETは機能画像であり,超音波検査およびCTの形態学的評価とは異なる情報が得られる。しかし,腋窩リンパ節評価におけるFDG—PETの正診率はさまざまである9)~11)。8論文からのレビュー(847例)では,腋窩リンパ節評価の感度は46~95%,特異度は66~100%9),Cooperらの26論文のレビュー(2,591例)では,感度は63%,特異度は94%と報告されている11)

 超音波検査,CT,FDG—PETを用いた腋窩リンパ節の評価に関して,感度の優れる報告も散見され,触診に比べて正診率は高い。また,いずれの手法においても画像診断での特異度は比較的高く,臨床上十分に利用できるものと考えられる。しかし,画像診断の陰性所見のみでSNBを省略することや,画像診断の陽性所見のみで腋窩リンパ節郭清を選択することは避けなければならない。また,超音波検査以外のCTやFDG—PETを,腋窩リンパ節評価の目的のみで使用することについて,推奨できる根拠は十分ではない。

検索式・参考にした二次資料

 2013年版での検索結果に加え,PubMedにて,breast,axillary lymph node,metastasis,PET,CT,USのキーワードを用いて検索した。検索期間は2012年以降とした。

参考文献

1) Ertan K, Linsler C, di Liberto A, Ong MF, Solomayer E, Endrikat J. Axillary ultrasound for breast cancer staging:an attempt to identify clinical/histopathological factors impacting diagnostic performance. BreastCancer(Auckl). 2013;7:35—40.
→PubMed

2) Alvarez S, Añorbe E, Alcorta P, López F, Alonso I, Cortés J. Role of sonography in the diagnosis of axillary lymph node metastases in breast cancer:a systematic review. AJR Am J Roentgenol. 2006;186(5):1342-8.
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3) Lee B, Lim AK, Krell J, Satchithananda K, Coombes RC, Lewis JS, et al. The efficacy of axillary ultrasound in the detection of nodal metastasis in breast cancer. AJR Am J Roentgenol. 2013;200(3):W314-20.
→PubMed

4) Cools-Lartigue J, Meterissian S. Accuracy of axillary ultrasound in the diagnosis of nodal metastasis in invasive breast cancer:a review. World J Surg. 2012;36(1):46-54.
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5) Yang WT, Chang J, Metreweli C. Patients with breast cancer:differences in color Doppler flow and gray-scale US features of benign and malignant axillary lymph nodes. Radiology. 2000;215(2):568-73.
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6) Esen G, Gurses B, Yilmaz MH, Ilvan S, Ulus S, Celik V, et al. Gray scale and power Doppler US in the preoperative evaluation of axillary metastases in breast cancer patients with no palpable lymph nodes. Eur Radiol. 2005;15(6):1215-23.
→PubMed

7) 鈴木正人,長嶋 健,矢形 寛,橋本秀行,宍倉朋胤,今中信弘,他.CTによる乳癌の腋窩リンパ節転移評価.日臨外会誌.1999;60(4):898-903.

8) 西江 浩,広岡保明,貝原信明,塩田摂成.術前CTによる乳癌リンパ節転移診断の予備的検討.日臨外会誌.2000;61(5):1118-22.

9) Quon A, Gambhir SS. FDG-PET and beyond:molecular breast cancer imaging. J Clin Oncol. 2005;23(8):1664-73.
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10) Wahl RL, Siegel BA, Coleman RE, Gatsonis CG;PET Study Group. Prospective multicenter study of axillary nodal staging by positron emission tomography in breast cancer:a report of the staging breast cancer with PET Study Group. J Clin Oncol. 2004;22(2):277-85.
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11) Cooper KL, Harnan S, Meng Y, Ward SE, Fitzgerald P, Papaioannou D, et al. Positron emission tomography(PET)for assessment of axillary lymph node status in early breast cancer:A systematic review and meta-analysis. Eur J Surg Oncol. 2011;37(3):187-98.
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