日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳房温存手術において、術中病理組織診断による断端検索は勧められるか (病理診断・断端検索・ID61990)

CQ14 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(272-274ページ)
推奨グレード C1 乳房温存手術において,術中病理組織診断による断端検索は,細心の注意のもと行うことを考慮してもよい。

推奨グレードを決めるにあたって

 術中迅速診断による断端検索は,一期的に手術を終了し再手術を避けられるメリットがあるが,実施可能な施設が限られる。また,一定頻度でサンプリングエラーが生じ得ること,鑑別困難病変が断端にみられた場合,正診に至ることが困難であることに留意する必要がある。

背景・目的

 乳房温存手術が施行され,断端陽性の場合は局所再発率が高くなることが知られている1)2)。したがって,乳房温存手術標本の断端診断は,局所再発の予測に有用で,強く勧められる(病理診断CQ 13参照)。断端診断を術中に行い断端陰性を確認した場合,乳房温存手術を一期的に行うことが可能となる。しかし,術中の組織学的断端検索方法や断端陽性の判定基準は各施設において一定ではなく,標準化が課題である。また,術中組織診断に適さない病変の存在も知られている。

解 説

 乳房温存手術における術中の切除断端検索には,統一された方法はなく,各々の施設でさまざまな工夫を加え,施行されているのが現状である。切除断端を検索する方法として,凍結切片を用いた病理組織学的検索が代表的であるが,捺印細胞診を用いた検索も行われている。

 乳房温存手術では,切除標本の側方乳腺組織断端の検索が主に行われる。検索方法はさまざまであり,切除標本の側方表面を薄く削ぎ取る方法(peeling)により,全周を検索することが可能となるが3)4),多数のブロックを作製する必要があり,運用は困難な場合が多い。実際には,乳頭側断端と腫瘤に最も近い側方断端の数カ所をサンプリングする方法がしばしば行われている5)。他に,乳腺組織が切除された空洞内の4方向の側壁と底部の計5方向を薄く削ぎ取る方法(cavity shaving)も知られている6)

 切除断端の術中迅速組織診断における精度は,永久標本における断端診断との比較により評価される。術中迅速組織診断の正診率は83.8~98.0%,感度は73~96%,特異度は84~100%,陽性適中度81.4~100%,陰性適中度は81~100%と報告されており,術中組織診断の精度は検査として推奨されるに十分な程度の高さとされる6)7)

 捺印細胞診は,術中迅速組織診断と同等に再切除率の低減に寄与すると報告されている8)。捺印細胞診による術中の断端検索の精度は,正診率が86.8~97.3%,感度が75~100%,特異度が66.7~96.6%である9)。また,組織診断と捺印細胞診を併用することで,より精度の高い検索が可能になると推奨する報告がある10)。ただし捺印細胞診は,乳腺切離面の乾燥や焼灼によるアーチファクトの影響を受けやすく,診断困難な場合があることを留意する必要がある。

 凍結切片による断端の組織学的検索で正診に至らない原因としては,断端陽性部位の適切なサンプリングがなされなかったことが最も多い。続いて,病変部位はサンプリングされているものの,凍結操作によるアーチファクトによって,組織の構造異型や核異型の評価が困難になる場合がある11)。また凍結アーチファクトは,迅速標本のホルマリン固定後の組織観察も困難にすることが知られている。この場合,切除標本本体のマッピングを参照し,最終的な断端組織診断を行う必要がある。また微小病変では,術中凍結標本による検索の適応自体を疑問視する考え方もある12)

 凍結切片による良悪性の鑑別が困難な病変も挙げられる。異型乳管過形成(☞病理診断:総論1参照)と低異型度非浸潤性乳管癌,硬化性あるいは開花期腺症や放射状瘢痕と非浸潤性あるいは浸潤性乳管癌,炎症細胞浸潤と浸潤性小葉癌などである1)4)13)14)。これらの病変については,可能な限り術中の断定的な診断は避ける必要がある。また,乳頭状病変は術中迅速病理診断で良悪性の判定が困難な症例が多く,術中迅速病理診断には適さない。もし,術中に診断しなければならない場合は,病理医は細心の注意を払う必要がある。

 術中迅速組織標本では,shaving margin,peeling marginのいずれにおいても,断端と腫瘍との距離を測定できないため,標本中に癌組織がみられた場合,断端陽性の判断になる。一方,永久切除標本本体では,断端との絶対距離を測定することが可能であり,断端陽性の定義によって術中迅速標本との診断の相違が生じ得る。

 術中病理組織診断による断端検索は,検査として推奨されるに十分な高い精度を示すとする報告が多い。術中迅速診断によって,断端陽性を術中に確認した場合,追加切除によって一期的に手術を終えることができ,再切除を抑えられる利点がある7。しかし,鑑別困難な病変を対象とした場合,サンプリングエラーやアーチファクトが生じた場合には,正診に至らない可能性があり,診断の際には細心の注意を払う必要がある。

検索式・参考にした二次資料

 2013年版での検索結果に加え,PubMedにて,breast cancer,pathology,breast conserving surgery or breast conservation therapy or BCT,margin,frozen section,intraoperativeのキーワードを用いて検索した。検索期間は2012年以降とした。

参考文献

1) Singletary SE. Surgical margins in patients with early—stage breast cancer treated with breast conservation therapy. Am J Surg. 2002;184(5):383-93.
→PubMed

2) Weber S, Storm FK, Stitt J, Mahvi DM. The role of frozen section analysis of margins during breast conservation surgery. Cancer J Sci Am. 1997;3(5):273-7.
→PubMed

3) Carter D. Margins of “lumpectomy” for breast cancer. Hum Pathol. 1986;17(4):330-2.
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4) Noguchi M, Minami M, Earashi M, Taniya T, Miyazaki I, Mizukami Y, et al. Intraoperative histologic assessment of surgical margins and lymph node metastasis in breast-conserving surgery. J Surg Oncol. 1995;60(3):185-90.
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5) Ikeda T, Enomoto K, Wada K, Takeshima K, Yoneyama K, Furukawa J, et al. Frozen-section-guided breast-conserving surgery:implications of diagnosis by frozen section as a guide to determining the extent of resection. Surg Today. 1997;27(3):207-12.
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6) Klimberg VS, Harms S, Korourian S. Assessing margin status. Surg Oncol. 1999;8(2):77-84.
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7) Fukamachi K, Ishida T, Usami S, Takeda M, Watanabe M, Sasano H, et al. Total-circumference intraoperative frozen section analysis reduces margin-positive rate in breast-conservation surgery. Jpn J Clin Oncol. 2010;40(6):513-20.
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8) Esbona K, Li Z, Wilke LG. Intraoperative imprint cytology and frozen section pathology for margin assessment in breast conservation surgery:a systematic review. Ann Surg Oncol. 2012;19(10):3236-45.
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9) 南雲サチ子,元村和由,春日井務,稲治英生,小山博記.【細胞診の限界と将来展望】細胞診の現状 術中細胞診乳房温存療法における断端検索及びSentinel node biopsyの転移診断への応用.乳癌の臨床.2003;18(1):16-23.

10) Scucchi LF, Di Stefano D, Cosentino L, Vecchione A. Value of cytology as an adjunctive intraoperative diagnostic method. An audit of 2,250 consecutive cases. Acta Cytol. 1997;41(5):1489-96.
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11) Cheng L, Al-Kaisi NK, Liu AY, Gordon NH. The results of intraoperative consultations in 181 ductal carcinomas in situ of the breast. Cancer. 1997;80(1):75-9.
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12) Zafrani B, Contesso G, Eusebi V, Holland R, Millis RR, Peterse JL. Guidelines for the pathological management of mammographically detected breast lesions. Breast. 1995;4(1):52-6.

13) Ferreiro JA, Gisvold JJ, Bostwick DG. Accuracy of frozen-section diagnosis of mammographically directed breast biopsies. Results of 1,490 consecutive cases. Am J Surg Pathol. 1995;19(11):1267-71.
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14) Tinnemans JG, Wobbes T, Holland R, Hendriks JH, van der Sluis RF, Lubbers EJ, et al. Mammographic and histopathologic correlation of nonpalpable lesions of the breast and the reliability of frozen section diagnosis. Surg Gynecol Obstet. 1987;165(6):523-9.
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