日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

センチネルリンパ節の病理学的検索は勧められるか (病理診断・センチネルリンパ節・ID62000)

CQ15 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(275-276ページ)
推奨グレード A センチネルリンパ節に対するHE染色を用いた適切な病理組織学的検索は,強く勧められる。分子生物学的方法のうちOSNA法は,通常の病理組織学的検索の代用となり得る。
C2 センチネルリンパ節の病理組織学的検索において,免疫組織化学的方法をすべての症例に適用することは,基本的には勧められない。

推奨グレードを決めるにあたって

 センチネルリンパ節のHE診断は,腋窩リンパ節手術の治療方針決定に有用で,強く勧められる。免疫組織化学的方法によってのみ検出される微細な転移巣の臨床的意義は否定的で,日常診療での適用は小葉癌などに限定すべきである。

背景・目的

 センチネルリンパ節に転移を認めなければ,腋窩リンパ節郭清を省略することが標準となっている(乳癌診療ガイドライン①治療編2015年版,外科療法CQ8参照)。センチネルリンパ節検索の偽陰性率は0~29.4%とされているが1),術中に検索が適切になされれば,腋窩リンパ節郭清の有無決定の根拠となり得るため,センチネルリンパ節の術中診断は日常診療で多く施行されている。しかし近年,センチネルリンパ節転移陽性でも,可能な症例については腋窩リンパ節郭清を省略する考えとなり2),症例によっては術中に転移検索はせずに永久標本で確認する施設も出てきている。センチネルリンパ節の病理学的検索方法について検討した。

解 説

 センチネルリンパ節の転移状況によって,郭清を行うか行わないかを決めるようになり,センチネルリンパ節の病理学的検索は治療方針に大きく関わっている。

 センチネルリンパ節の病理学的検索は通常のHE診断を基本としている。センチネルリンパ節に対する病理学的検索方法については,標準的な検索法はいまだ定められていない。一般的に,提出されたすべてのリンパ節について個数と大きさを計測した後,各リンパ節を細切し,それぞれのスライスにおいてリンパ節被膜を含めた全面が現れるように凍結標本を作製する。2 mmを超える大きさの転移巣(macrometastasis)を確実に発見するには,リンパ節を少なくとも2 mm厚に細切してすべてのスライスの標本を作製し観察する必要がある。

 センチネルリンパ節における転移巣は,American Joint Committee on Cancers(AJCC)のがん病期アトラス3)あるいはInternational Union Against Cancer(UICC)のTNM悪性腫瘍の分類4)に従い亜分類されている。転移腫瘍塊の大きさによって遊離腫瘍細胞(isolated tumor cells;ITC)(腫瘍径0.2 mm未満または腫瘍細胞200個未満),微小転移(micrometastasis;腫瘍径0.2 mm超または腫瘍細胞200個超で,腫瘍径2 mm以下),および腫瘍径が2 mmより大きい転移巣(微小転移に対比してマクロ転移ともいわれる)に分かれている。病理診断報告には,pNカテゴリーと転移陽性節数,最大の転移性腫瘍細胞塊の腫瘍径を記載する。センチネルリンパ節中のITCはpN0(i+)(sn)とし,分子生物学的手法でのみ検出される場合にはpN0(mol+)(sn)とする。ITCや分子生物学的手法のみで検出される転移に関しては,転移病巣としての活性や血管・リンパ洞壁の貫通を示さないとされ,摘出リンパ節にはカウントされるが,転移陽性リンパ節にはカウントされない。

 分子生物学的手法の一つである,One—step nucleic acid amplification(OSNA)法が保険収載され,実用化されている。偽陽性例の少ない高い特異性が示され,カットオフ値の設定により,微小転移,マクロ転移の判別も可能で5),病理医および標本作製に関わる技師の負担軽減に役立っている。簡便で所用時間も30~40分と短く,その有用性は周知されている。しかし,機器を導入・活用できるのは相当数の乳癌手術症例数のある施設に限られるという問題がある。

 サイトケラチンに対する抗体(CK AE1/AE3あるいはCAM5.2など)を用いた免疫組織化学的方法は,ITCや微小転移の検出が容易で,特に小葉癌のような小型乳癌細胞の検索には有用である6)7)。しかし,HE診断では検出されず,免疫組織化学的方法のみで検出される微細なセンチネルリンパ節転移は,臨床的意義がないとする見解が優勢で8,免疫組織化学的方法を日常診療ですべての症例に行うことは医療経済的にも疑問視されている。

検索式・参考にした二次資料

 2013年版での検索結果に加え,PubMedにて,breast cancer,lymph node(LN),sentinel lymph node,micrometastasis,isolated tumor cellsのキーワードを用いて検索した。検索期間は2012年以降とした。ハンドサーチで得られた重要文献も加えた。

参考文献

1) Kim T, Giuliano AE, Lyman GH. Lymphatic mapping and sentinel lymph node biopsy in early—stage breast carcinoma:a metaanalysis. Cancer. 2006;106(1):4—16.
→PubMed

2) Lyman GH, Temin S, Edge SB, Newman LA, Turner RR, Weaver DL, et al;American Society of Clinical Oncology Clinical Practice. Sentinel lymph node biopsy for patients with early—stage breast cancer:American Society of Clinical Oncology clinical practice guideline update. J Clin Oncol. 2014;32(13):1365—83.
→PubMed

3) American Joint Committee on Cancer. Breast Cancer Staging, 7th ed. https://cancerstaging.org/references—tools/quickreferences/Documents/BreastSmall.pdf

4) UICC International Union Against Cancer. TNM Classification of Malignant Tumours. Sobin L, et al, eds. 7th ed, Wiley—Blackwell, A John Wiley & Sons, 2009.

5) Tsujimoto M, Nakabayashi K, Yoshidome K, Kaneko T, Iwase T, Akiyama F, et al. One—step nucleic acid amplification for intraoperative detection of lymph node metastasis in breast cancer patients. Clin Cancer Res. 2007 15;13(16):4807—16.
→PubMed

6) Veronesi U, Paganelli G, Viale G, Galimberti V, Luini A, Zurrida S, et al. Sentinel lymph node biopsy and axillary dissection in breast cancer:results in a large series. J Natl Cancer Inst. 1999;91(4):368—73.
→PubMed

7) van Diest PJ, Peterse HL, Borgstein PJ, Hoekstra O, Meijer CJ. Pathological investigation of sentinel lymph nodes. Eur J Nucl Med. 1999;26(4 Suppl):S43—9.
→PubMed

8) Giuliano AE, Hawes D, Ballman KV, Whitworth PW, Blumencranz PW, Reintgen DS, et al. Association of occult metastases in sentinel lymph nodes and bone marrow with survival among women with early—stage invasive breast cancer. JAMA. 2011;306(4):385—93.
→PubMed

乳癌診療ガイドライン

PAGETOP
Copyright © 一般社団法人日本乳癌学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.