日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

再発乳癌における治療方針決定にセルブロック標本を用いた検討は勧められるか (病理診断・セルブロック法・ID62010)

CQ16 乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編(277-278ページ)
推奨グレード C1 遠隔転移巣に対する穿刺吸引細胞診検体や体腔液由来のセルブロック標本を用いたホルモン受容体およびHER2検索は,実施してもよいが,結果の解釈に際し固定法の影響を考慮する必要がある。

推奨グレードを決めるにあたって

 近年,再発乳癌におけるバイオマーカー検索が積極的に勧められている。胸膜あるいは腹膜転移を有する再発乳癌症例において,体腔液由来のセルブロックを用いたバイオマーカー検索が可能である。しかし,その結果については,通常の組織標本との違いを理解し,慎重に判断する必要がある。

背景・目的

 American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologists(ASCO/CAP)のHER2ガイドラインをはじめとして,近年では再発乳癌のバイオマーカーを積極的に再評価し,治療方針決定のための参考とすることが推奨されている1)。しかし,生検による組織採取が不可能な再発巣あるいは胸膜・腹膜転移に由来する体腔液のみに癌細胞が存在し,通常,バイオマーカー検索に用いられている癌組織のパラフィンブロックを作成できない場合がある。本項では,穿刺吸引細胞診検体あるいは体腔液を用いたセルブロック法の有用性について検討した。

解 説

 セルブロック法は,細胞診用に採取された検体からパラフィンブロックを作成する方法である。実際には,細胞診塗沫標本作成後に残存する細胞沈渣や組織片を種々の基材とともに凝固・固化,あるいは遠心分離することによって集塊状とし,ホルマリン固定,パラフィン化を行い,組織検体のようなパラフィンブロックを作成する。体腔液や,生検不可能な組織からの穿刺吸引細胞診検体が対象となる。

 セルブロック標本の利点は,① 細胞形態を観察できること,② 組織診と同様に複数の未染色切片を作成し,免疫組織化学的方法(IHC法)を施行できることの,大きく2点である。ホルマリン固定されたサンプルであれば,通常の組織標本と同じプロトコールを用いてIHC法を実施できる。再発乳癌であることの確認には,細胞形態に加え,乳癌関連マーカー(GCDFP—15,mammaglobin,GATA3など)のIHC法が有用である2)~4)

 セルブロック標本によるER,PgR,HER2のIHC法の信頼性については,原発巣ないし転移巣からの針生検ないし切除標本と,穿刺吸引細胞診検体を用いたセルブロック標本との比較による検討が行われている5)~8)。ERに関しては,固定法にかかわらず概ね良好な一致率が得られるのに対し,PgRに関してはアルコール固定による一致率の低下を指摘する報告がある。HER2はアルコール固定された場合の一致率が悪く,ホルマリン固定による一致率の改善についても一定の見解を得るには至っていない。

 ASCO/CAPガイドラインでは,原発巣と同様,再発巣に関してもHER2の評価を行うことを強く推奨している1)セルブロック法により,生検不可能な再発巣あるいは胸水・腹水などの体腔液由来の検体でのホルモン受容体およびHER2検索が可能となる。ただし,通常の生検標本と同等の信頼性が得られるか,また,内分泌療法や抗HER2療法の治療効果との関連性があるかについては,一定の見解が得られておらず,今後更なる検討が必要である。

検索式・参考にした二次資料

 Pubmedにて,cell block,cytology,immunohistochemistry,ascites,pleural effusion,breast cancerのキーワードを用いて検索した。検索期間は2000年以降とした。ハンドサーチで検索した重要文献も参考とした。

参考文献

1) Wolff AC, Hammond ME, Hicks DG, Dowsett M, McShane LM, Allison KH, et al;American Society of Clinical Oncology;College of American Pathologists. Recommendations for human epidermal growth factor receptor 2 testing in breast cancer:American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologists clinical practice guideline update. J Clin Oncol. 2013;31(31):3997—4013.
→PubMed

2) Yan Z, Gidley J, Horton D, Roberson J, Eltoum IE, Chhieng DC. Diagnostic utility of mammaglobin and GCDFP—15 in the identification of metastatic breast carcinoma in fluid specimens. Diagn Cytopathol. 2009;37(7):475—8.
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3) Shield PW, Papadimos DJ, Walsh MD. GATA3:a promising marker for metastatic breast carcinoma in serous effusion specimens. Cancer Cytopathol. 2014;122(4):307—12.
→PubMed

4) Braxton DR, Cohen C, Siddiqui MT. Utility of GATA3 immunohistochemistry for diagnosis of metastatic breast carcinoma in cytology specimens. Diagn Cytopathol. 2015;43(4):271—7.
→PubMed

5) Shabaik A, Lin G, Peterson M, Hasteh F, Tipps A, Datnow B, et al. Reliability of Her2/neu, estrogen receptor, and progesterone receptor testing by immunohistochemistry on cell block of FNA and serous effusions from patients with primary and metastatic breast carcinoma. Diagn Cytopathol. 2011;39(5):328—32.
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6) Williams SL, Birdsong GG, Cohen C, Siddiqui MT. Immunohistochemical detection of estrogen and progesterone receptor and HER2 expression in breast carcinomas:comparison of cell block and tissue block preparations. Int J Clin Exp Pathol. 2009;2(5):476—80.
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7) Hanley KZ, Birdsong GG, Cohen C, Siddiqui MT. Immunohistochemical detection of estrogen receptor, progesterone receptor, and human epidermal growth factor receptor 2 expression in breast carcinomas:comparison on cell block, needle—core, and tissue block preparations. Cancer. 2009;117(4):279—88.
→PubMed

8) Kinsella MD, Birdsong GG, Siddiqui MT, Cohen C, Hanley KZ. Immunohistochemical detection of estrogen receptor, progesterone receptor and human epidermal growth factor receptor 2 in formalin—fixed breast carcinoma cell block preparations:correlation of results to corresponding tissue block(needle core and excision)samples. Diagn Cytopathol. 2013;41(3):19—28.
→PubMed

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