Q7. 乳房のしこりの診断はどのようにするのですか。がん以外の乳房のしこりにはどのようなものが ありますか。

【A】はじめに問診,視触診,マンモグラフィ,超音波検査が行われ,必要な場合にMRI,細胞診,組織診などが行われます。
乳房にしこりを感じる原因としては,乳がん,乳腺の良性腫瘍(しゅよう),乳腺症,皮下脂肪の塊(かたまり),皮膚腫瘍などがあります。乳がんと一部の良性腫瘍以外は治療の必要はほとんどありませんので,いくつかの検査を行ってしこりが何であるかを診断していきます。

問 診 ▶視触診 ▶マンモグラフィ(☞Q6参照) ▶超音波検査(エコー検査)(☞Q6参照)
その他の画像診断 ▶細胞診および組織診(針生検)など ▶乳房のしこりについて

解説

問 診

病院に行くとはじめに問診表を渡されることが多いと思います。月経の状況や出産・授乳の経験,家族でがんにかかった方の有無などの質問は,乳房の状態や乳がんにかかりやすいかどうかを判断するためのものです。しこりについては,いつ気付いたか,気付いてから大きさは変わらないか,月経の周期で大きさに変化はないか,痛みを伴うかなどを聞かれます。月経の周期によって大きさや硬さが変わる場合は,乳がんとは無関係のことが多いです。

視触診

視触診とは,乳房を観察し,手で乳房やリンパ節の状態を検査するものです。乳房に変形がないか,乳頭に湿疹(しっしん)や分泌物(ぶんぴつぶつ)がないかなどを観察します。また,乳房に直接触ってしこりの状態などを調べます。首やわきの下のリンパ節が腫(は)れていないかどうかも触れてみます。触診ではしこりの場所,大きさ,硬さ,しこりの境目がはっきりしているかどうか,よく動くかなどを調べます。乳がんは一般に硬く,境目がはっきりしないことが多いです。

マンモグラフィ(☞Q6参照)

マンモグラフィとは,乳房のX線撮影のことです。より診断しやすい写真を撮るために,乳房をできるだけ引き出して,圧迫板という薄い板で乳房を挟み,圧(お)し広げて撮影します。そのために多少の痛みを伴うこともありますが,圧し広げることで診断しやすい写真が撮影でき,かつ被曝量も減らすことができます。放射線の被曝量は自然界の放射線レベルと同じくらいの低さなので心配ありません。ただし,妊娠中あるいは授乳期などの方は本当に撮影する必要があるかどうか,医師とよくご相談ください。

マンモグラフィでは腫瘤(しゅりゅう),石灰化などが確認できます。腫瘤とはマンモグラフィ上やや白くみえる塊で,良性のしこりであることも,がんであることもあります。境目がはっきりしている場合は良性腫瘍,境目が不明瞭な場合は悪性腫瘍を疑います。石灰化とはマンモグラフィ上,真っ白な砂粒のような影で,乳房の一部にカルシウムが沈着したものです。大きく目立ってみえ,乳房全体にばらけてみえるものは良性であることがほとんどですが,小さいものが一カ所にたくさん集まっている場合には悪性を疑うことになります。

超音波検査(エコー検査)(☞Q6参照)

乳房に超音波を当て,その反射波を利用して画像をつくります。通常の診断用の超音波では人体に害はありません。超音波検査は乳房内にしこりがあるかどうかの診断に有効です。特に40歳未満の女性の場合,マンモグラフィではいわゆる高濃度乳腺(乳腺の密度が濃い状態でマンモグラフィでみると,いわゆる白い部分が多い乳房)になり,しこりがあるかどうかがわかりにくい場合があります。そのような場合でも超音波検査ではしこりの診断をすることができます。そして,しこりの形や境目部分の性状などで,多くの場合,良性なのか悪性なのかを判断することも可能です。しかし,マンモグラフィと超音波のどちらかでしか発見できない乳がんもあるため,精密検査においては両方の検査を行うことが通常となっています。

その他の画像診断

その他の画像診断としてMRI検査を行うことがあります。造影剤という検査用の薬を用いて検査を行います。乳がんであると判明した場合にその広がりを確認するために行うことが多いのですが,病変の診断が難しい場合などには乳がんかそうでないかを判断するために行うことがあります。

最近,トモシンセシスという検査が開発されました。トモシンセシスはマンモグラフィの仲間ですが,乳房全体を数十枚の薄い断層像として描出することで,マンモグラフィの弱点である乳腺の重なりによる見落としなどの問題をある程度解決することができます。

細胞診および組織診(針生検)など

画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変やがんを疑った場合には,乳房に細い針を刺して細胞を採取する細胞診や,局所麻酔下でやや太い針を刺して行う組織診(針生検(はりせい けん))などが必要になります。超音波検査やマンモグラフィで病変をとらえることができれば,その画像をみながら正確に細胞診や組織診を行うことが可能です。いずれも安全に行うことができますので,安心して受けてください。細胞診では断定することができない場合もありますので,細胞診を行っても最終的にはさらに組織診を受けていただくこともあります。

細胞診や組織診(針生検)について,詳しくはQ8をご参照ください。

乳房のしこりについて

乳腺症の大部分と乳腺炎(にゅうせんえん)や乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)は,乳がんとは関係のない良性の病変です。

(1)乳腺症

乳腺症は30~40歳代の女性に多くみられる乳腺の良性の変化です。主な症状としては硬結(こうけつ),疼痛(とうつう)(乳房痛),異常乳頭分泌が挙げられます。乳腺症には,主として卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンというホルモンがかかわっており,閉経後に卵巣機能が低下するとこれらの症状は自然に消失します。

硬結は,片側あるいは両側の乳房に大きさが不揃(ふぞろ)いの境界不明瞭な平らで硬いしこりとして触れることが多く,月経前に増大し,月経後に縮小します。硬結部は何もしないでも痛むか,押さえると痛むことが多く,この痛みも月経周期と連動します。乳腺症に伴う異常乳頭分泌の性状はサラッとした水のような漿液性(しょうえきせい),乳汁様(にゅうじゅうよう)あるいは血性などさまざまです。漿液性あるいは乳汁様の場合にはほとんど問題はありません。血性乳頭分泌(血液の混じった分泌物)がみられた場合には,乳腺良性疾患の一種である乳管過形成(にゅうかんかけいせい)や乳頭腫(にゅうとうしゅ)である頻度が高いですが,乳がんが隠れている可能性もあるので詳細な検査が必要になります。月経周期と連動するしこりや痛みはあまり心配する必要はありませんが,月経周期に関係のないしこりに気づいたら病院を受診してください。

(2)乳腺炎

乳腺炎とは,乳汁のうっ滞(たい)(滞(とどこお)り)や細菌感染によって起こる乳房の炎症で,赤く腫(は)れたり,痛み,うみ,しこりなどがみられます。特に授乳期には,母乳が乳房内にたまり炎症を起こす,うっ滞性乳腺炎が多くみられます。乳頭から細菌が侵入すると,化膿性乳腺炎(かのうせいにゅうせんえん)となって,うみが出るようになります。症状を改善させるために,皮膚を切開してうみを出しやすくする処置が行われることがあります。一方,授乳期以外に,乳房の広い範囲に乳腺炎が起こることもあります。原因はよくわかっていませんが,乳房の中にたまった分泌液にリンパ球などが反応してできるのではないかと考えられています。

また,乳輪下にうみがたまることがあります(乳輪下膿瘍(にゅうりんかのうよう)といいます)。これは陥没乳頭(かんぼつにゅうとう)の人や喫煙者に起こりやすく,治りにくい乳腺炎で,ときに手術が必要になる場合があります。これらの乳腺炎は乳がん発症とは直接関係ありません。ただし,痛みがないのに乳房が腫れる場合は,まれに炎症性乳がんといって炎症症状を呈する乳がんであることがありますので,このような場合には病院を受診してください(☞Q28参照)。

(3)乳腺線維腺腫

乳腺線維腺腫とは乳房の良性腫瘍で,10歳代後半から40歳代の人に多く起こります。ころころとしたしこりで,触ってみるとよく動きます。マンモグラフィや超音波検査などの画像検査や針生検で線維腺腫と診断されれば,特別な治療は必要なく,乳がん発症とは関係ありません。閉経後にはしぼんでしまうことが多いのですが,しこりが急速に大きくなる場合は,局所麻酔下で切除することもあります。

(4)葉状(ようじょう)腫瘍

初期のものは線維腺腫に似ているものの,急速に大きくなることが多いのが特徴です。ほとんどは良性ですが,なかには良性と悪性の中間のものや,転移を起こす可能性がやや高い悪性のものの場合もあります。いずれにしても,通常は摘出が必要で,治療の原則は手術による腫瘍の完全摘出です。ただし,葉状腫瘍は腫瘍のみをくり抜いて摘出するだけでは周囲に非常に再発しやすいので,腫瘍より少し大きめの範囲を摘出します。乳房全体を占めるほど大きな場合は,乳房切除術が必要になります。また,針生検だけでは乳腺線維腺腫と区別がつかないこともあるので,臨床経過から葉状腫瘍が疑われる場合は摘出して診断することもあります。

ガイドライン

PAGETOP