Q9.乳がんといわれました。これから治療を受けるのに,どうしたらよいでしょうか。

【A】患者さんの多くは,がんがみつかったからには早く治療を受けたい,と希望されると思いますが,乳がんにはいろいろな治療法があり,むやみに急いで治療を始める必要はありません。まずは落ち着いて,ご自身の乳がんの状態や性質を知り,それに合わせた治療を選ぶことが大切です。

治療を考えるときに必要なこと ▶まず,何をどうするか ▶治療の流れ:このサイトのどこをみたらよいか

解説

治療を考えるときに必要なこと

乳がんの治療は,手術,薬,放射線などを組み合わせて行い,何通りものやり方があります。どれがご自身にとって最善かは,ご本人と医師がじっくり話し合って決めなくてはなりません。ほとんどの患者さんにとって治療は初めての体験で,「それを受けたらどうなるか」を想像することさえ難しいと思われます。病院や治療法を決めるときは,あせらず時間をかけて,納得のいくまで検討してください。乳がんを経験した方の話を聞くのも参考になります。

まず,何をどうするか
(1)気持ちを落ち着かせる

乳がんといわれると誰しも不安になり,気持ちがあせってしまうことでしょう。しかし,気持ちがあせっていたり不安に取りつかれたりしていると,じっくり考えることはなかなか難しいものです。まずは気持ちを落ち着かせましょう。乳がんにはいろいろな治療法があり,それぞれの患者さんに適した治療を選ぶことが大切です。むやみに急いで治療を始める必要はないので,じっくり考えましょう。不安や気がかりなことは人に聞いてもらうことで軽くなることもあります。医療スタッフや家族,経験者などに話をしてみてください(☞Q53参照)。

(2)乳腺の専門医をみつける

まずは信頼できる専門の医師をみつけてください。病院の案内に「乳腺科」が標榜(ひょうぼう)されていなくても,中規模以上の病院の多くは,乳がん治療を専門にしている医師がいるので,尋ねてみてください。患者団体や近くの医師から紹介してもらうのもよいでしょう。日本乳癌学会が認定している乳腺専門医のいる医療機関は日本乳癌学会のホームページにも掲載されています(http://www.jbcs.gr.jp/people/people_senmon.html)。

(3)情報を集める

病気と闘うには自分自身の病気や治療法について知ることがとても大切です。そのためには,まず必要な情報を集めましょう。不安の中には,「抗がん剤の副作用は強いのかな」「この先,どうなるんだろう」という「わからない」ところからきているものもあるため,治療の内容を知ったり,見通しが立ったりすることで,安心できることも多いと思います。また,治療方針を決めるときに,表1に示した情報が必要ですので,生検や手術後に必ず聞いておきましょう。

表1 治療法決定に必要な情報

がんの進行度に関するもの: がんの性質に関するもの:
治療の流れや手術方法を決めるのに必要 薬物療法を行うか,どの薬を使うか,を決めるのに必要
しこりの大きさ がんの悪性度
がんの広がり(リンパ節への転移) ホルモン受容体の有無
他臓器への転移の有無 HER2の状況
病巣の数,位置 増殖指標(Ki67など)

本書は,患者さんが病気や検査の内容を理解したり,治療を選択したりするときに参考にしてもらうという目的で書かれています。日常生活上での問題や患者団体の情報などは,他の本やインターネット上の情報などを参考にしてください。ただし,それらの情報は玉石(ぎょくせき)混淆(こんこう)であり,不確かな情報や間違った情報,時代遅れの情報も非常に多く載っていますので,注意してください。特に,代替(だい たい)治療や標準的とはいえない治療について,しかるべき第三者のチェックを受けることなしに,「○○を飲んだらがんがみるみる小さくなった」とか「△△療法でがんが消えた」といった内容が載っていることがあります。また,「××大学の医師,□□がんセンターの医師」が載せていることもあります。病気に少しでもよいというものがあれば試してみたいという気持ちはどなたもお持ちだと思いますが,これらの情報に振り回されると,健康や時間,お金といった大事なものを失いかねませんので,気をつけてください。気になる情報があったら,担当医に確認してみるのもいいと思います。

(4)標準治療とは何かを知る

乳がんは,患者さんの数が多いこと,治療の方法がたくさんあることや薬がよく効く病気であることなどから,治療法の研究は1970年ぐらいから世界中で盛んに行われ,手術や診断の方法,薬剤による治療方法が発達してきました。そして,たくさんの研究を重ねた結果,「こういう状況の人にはこれがよい」ということが少しずつわかってきました。これらを「標準治療」といい,患者さんには「標準治療を提供する必要がある」といわれるようになりました。「標準」という言葉から,「特上・上・並」とあるランクのうちの「並」ではないかとイメージする人もいるようですが,標準治療は「並ランクの治療」ではなくて,「多くの臨床試験の結果をもとに検討がなされ,専門家の間で合意が得られている最善の治療法」という意味です(☞Q12参照)。ご自身の状況を把握したうえで,標準的な治療が何かを知っておくことは治療法を決定するうえでとても大事なことです。本書には,それぞれの人にとっての「標準治療」が何かがわかるように解説していますので,これらを参考に担当医とよく相談してください。

担当医と話をして納得がいかないときや,他の医師の意見を聞きたいときは,セカンドオピニオン(☞Q11参照)を聞きにいくのもよいでしょう。

治療の流れ:このサイトのどこをみたらよいか

乳がんの診断を受けた人が,これからどのような治療を受けるかについて,大まかな流れを示します(図1)。治療やその内容は,①病気の状況:進行度(がんの大きさ,リンパ節や他臓器への転移の有無,がんの広がり),がん細胞の性質(悪性度,ホルモン受容体やHER2の状況,増殖指標),②患者さんのからだの状態:閉経の状況,臓器機能が良好に保持されているかどうか,③患者さんの希望などを考慮して決められます。したがって,同じ乳がんの患者さんでも,一人ひとりで治療内容が異なります(☞Q14参照)。

炎症性乳がんといわれた場合はQ28を,乳房以外の臓器に転移がある,または再発の場合はQ3852を,ご覧ください。それ以外の場合は,手術を含めた治療が適応となるので,Q1435をご覧ください。

Q9-図1

図1 診断から治療法決定の大まかな流れ

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