Q15.治療前に行われる検査について教えてください。

【A】乳房のMRI検査やCT検査は,乳房内の病巣(びょうそう)の広がりの程度やリンパ節に転移があるかどうかを診断するのに用い,手術方法の決定に役立つ場合があります。乳がん診断時に骨シンチグラフィやPET検査などにより他臓器への転移(遠隔転移)を調べることは,必ずしも必要ではありません。また,乳がんの確定診断に用いた生検標本を詳しく検査することで,乳がんの性質や患者さんの病気の経過,さまざまな薬剤の効き具合を予測することができます。

乳房内での乳がんの広がりを診断する検査 ▶腋窩リンパ節転移の有無と程度の検査
遠隔転移の有無の検査 ▶乳がんの性質診断

 解説

乳がんの診断がついてから,治療前に行う主な画像診断は,大きく分けて次の4つを調べるためのものです。

① 乳房内での乳がんの広がり
② 反対側の乳房内の病変の有無
③ 腋窩(えきか)リンパ節への転移の有無と程度
④ 遠隔転移の有無

それぞれにおいて適切な診断法を選択する必要があります。

乳房内での乳がんの広がりを診断する検査

乳房温存手術では,乳がんを取り残すことなく,また乳房内の再発率を高めることなく,できるだけよい形の乳房を残すことが大切です。そのためには,乳房内での乳がんの広がりを把握し,過不足なく乳房を切除する必要があります。しかし,乳房温存療法(手術)後には乳房内再発といって,手術した乳房に再びがんが出てくることがあります。これは,主に乳管内進展によってすでに乳房の中にがんが広がっていたことや,乳房内の離れた場所に小さながん細胞の塊(かたまり)がすでに存在していたことが原因で発生します。

これらの乳房内での広がりや,同じ乳房内の別の場所に存在する小さながんの有無は,マンモグラフィや超音波検査である程度観察することが可能です。しかし,完全に把握することは困難であるため,これを補う検査として,近年は造影剤を用いたCT検査やMRI検査が行われるようになってきています。

CT検査に比べてMRI検査のほうがわかりやすいことが知られており,現在では手術前にMRI検査を行う施設が多くなっています。

腋窩リンパ節転移の有無と程度の検査

腋窩リンパ節に転移があるかどうかを調べるのに,超音波検査がよく行われます。CT検査でわかることもあります。しかし,これらの検査だけでリンパ節転移をみつけることができるわけではありません。近年,転移があるかどうかわからない場合には,手術の際にセンチネルリンパ節生検(☞Q21参照)を行って,転移の有無を確認しています。しかし,もともと明らかなリンパ節転移がある場合にはセンチネルリンパ節生検は行わないため,穿刺(せんし)吸引細胞診などによってあらかじめ可能な限り腋窩リンパ節転移の有無を正確に予測することが必要です。

遠隔転移の有無の検査

乳がんと診断されたということで,転移の有無を心配される患者さんも多いでしょう。しかし,実際には乳がんと診断されると同時に転移がみつかる可能性は極めて低いです。治療前のPET検査や骨シンチグラフィで肺転移や骨転移などがみつかる確率は非常に低く,これらの検査で転移疑いと出ても,さらに詳しく検査してみると実際には転移ではなかったという結果になることも多くあります。結論が出るまで患者さんにとっては不要な不安を引き起こし,必要のない検査を実施することで余分な費用がかかってしまうことにもなりかねません。以上により,乳がん患者さんにとって手術前に骨シンチグラフィやPET検査によって骨転移や全身の遠隔転移などを調べることは必ずしも必要ではありません。

乳がんの性質診断

乳がんの確定診断に用いた生検標本を詳しく検査することで,がん細胞の悪性度(グレード),性質がわかり,ホルモン受容体やHER2の状況など(☞Q27参照)を病理検査で調べることで,再発の危険性や薬の有効性を予測することができます。これらの情報は,治療方法を決定する際に必要不可欠です。

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