Q20.腋窩リンパ節を郭清することは必要ですか。

【A】手術前に触診や画像診断などで腋窩(えきか)(わきの下)リンパ節に転移があると診断された場合は,腋窩リンパ節郭清(かくせい)を行います。一方,手術前に腋窩リンパ節に転移がないかまたは疑いと診断された場合は,まずセンチネルリンパ節生検(☞Q21参照)を行い,センチネルリンパ節への転移の有無を調べます。そこに転移があった場合は腋窩リンパ節郭清を行い,転移がなかった場合は腋窩リンパ節郭清を省略します。ただし,センチネルリンパ節の転移がないか,あるいは転移があっても微小転移のみの場合は,腋窩リンパ節郭清を省略することも可能と考えられます(☞Q21参照)。

腋窩リンパ節郭清とは ▶なぜリンパ節を郭清するのか ▶リンパ節郭清の範囲

解説

腋窩リンパ節郭清とは

乳房内のがん細胞が最初に転移するリンパ節のほとんどが「腋窩リンパ節」です。腋窩リンパ節は腋窩の脂肪の中に埋め込まれるように存在しており,リンパ節の取り残しがないよう脂肪も含めて一塊(ひとかたまり)に切除することを「腋窩リンパ節郭清」と呼びます。切除したあとで脂肪の中からリンパ節を取り出して転移の有無を病理検査(顕微鏡検査)で調べます。リンパ節に転移がある場合は,転移がない場合と比べて手術後に他の臓器に転移が出現する危険性が高いことがわかっています。

腋窩リンパ節郭清は,乳がんに対する標準治療としておよそ1世紀にわたり行われてきました。しかし,2000年代前半から,よりからだへの負担が少ないセンチネルリンパ節生検が普及し始め,現在では手術前に腋窩リンパ節への明らかな転移はないと診断された早期乳がんでは,まずセンチネルリンパ節生検を行うようになりました。センチネルリンパ節への転移の有無を調べ,転移がない場合は腋窩リンパ節郭清を省略し,転移があった場合にのみ腋窩リンパ節郭清を行います。一方,手術前に腋窩リンパ節転移があると診断された場合には,最初から腋窩リンパ節郭清を行います。センチネルリンパ節生検については,Q21を参照してください。

なぜリンパ節を郭清するのか

腋窩リンパ節を郭清する目的は2つあります。1つは,腋窩リンパ節への転移の有無やその転移個数を調べるという「診断」の目的と,もう1つは再発を防ぐという「治療」の目的です。

腋窩リンパ節への転移の有無(存在診断)は,リンパ節郭清を行わなくとも,センチネルリンパ節生検によって判断が可能となりましたが,全体のリンパ節転移個数まではわかりません。センチネルリンパ節に転移がある場合は,追加で腋窩リンパ節郭清を行うことで転移個数がわかります。転移個数が多いほど再発の危険性が高くなることが知られており,術後の治療方針を決めるために転移個数を知ることは重要であるといえます。

次に再発を防ぐという「治療」の目的について説明します。腋窩リンパ節郭清が適切に行われた後の腋窩リンパ節再発はまれであり,再発予防としての目的はそれで達成されています。しかし,腋窩リンパ節郭清をすること自体が,骨,肺,肝臓などの遠隔転移を予防する効果があるかどうかについてはさまざまな議論があります。過去に行われた多くの臨床試験を検討すると,腋窩リンパ節郭清を行わないと術後の再発の危険性が少し高くなることも示されています。

したがって,術前に腋窩リンパ節に転移がある場合には,腋窩リンパ節郭清を行うべきであると考えられています。センチネルリンパ節生検を行った場合に,腋窩リンパ節郭清を省略するかどうかについてはQ21を参照してください。

リンパ節郭清の範囲

腋窩リンパ節郭清の範囲は,わきの下から鎖骨に向かって,レベルⅠからⅢに分けられます(図1)。リンパ節転移は一般にレベルⅠからレベルⅡ,Ⅲへと順に進んで行くと考えられています。したがって,腋窩リンパ節郭清は一番転移しやすいレベルⅠから順に行います。リンパ節郭清はレベルⅠからⅡまで郭清すると,通常十数個のリンパ節が切除されます。リンパ節の個数は患者さんによって異なるため郭清個数よりも,郭清範囲が正確に取り切れているということが重要です。

以前は,レベルⅠからⅢまで郭清することが一般的で,ときに乳房の内側にある胸骨傍(きょうこつぼう)リンパ節や鎖骨の上にある鎖骨上リンパ節も郭清することがありました。しかし,このように広く郭清しても再発の危険性が減少するとは限らず,むしろ腕のむくみなどの合併症が出ることが多いため,現在ではレベルⅠまたはⅡまでの郭清にとどめ,腫(は)れて大きくなったリンパ節がある場合のみレベルⅢの郭清を追加します。

Q20-図1

図1 乳腺のリンパ節

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