Q39.再発・転移の治療について教えてください。


【A】再発の治療は,局所再発と遠隔転移の場合で大きく異なります。
局所再発の場合は,再発巣を手術で切除した後,必要に応じて放射線療法や薬物療法を行い,さらなる局所再発を予防します。
一方,遠隔転移の場合は,がんの治癒(ち ゆ)を目指すのではなく,がんの進行を抑えたり症状を和らげたりしてQOL(生活の質)を保ちながら,がんと共存するための治療を行います。

局所再発の治療(☞Q42参照) ▶遠隔転移の治療

解説

局所再発の治療(☞Q42参照)

局所再発のみで遠隔転移のない場合は,治癒を目指して治療します。温存手術で残した乳房に再発した局所再発(乳房内再発)の場合は,通常,乳房切除術を行います。乳房切除術後に胸の皮膚やリンパ節に再発した場合,切除できると判断されればがんの部分を切除し,放射線療法を行うのが一般的です。手術の後で薬物療法を行う場合もあります。切除が難しい場合には薬物療法や放射線療法を行います。

遠隔転移の治療
(1)治療の考え方について

遠隔転移は,乳房から離れた部分に乳がんが出てきたものですが,画像でみえている場所以外のどこかにも目にみえないがん細胞が潜んでいると考えられます。現在の治療法では,これらの全身に潜んでいるすべてのがん細胞を根絶するのは難しいのが現状です。手術で目にみえる部分を切除しても,目にみえないがん細胞はからだのどこかに残ってしまうと考えられ,からだに負担をかけるだけなので,通常,遠隔転移に対して手術は行いません。

遠隔転移の治療は,からだ全体に効果があることが必要ですので,薬による治療が基本となります。乳がんに有効な薬にはさまざまなものがあり,効果をみながら治療を続けます。こうして,がんの進行を抑えたり症状を和らげたりすることができれば,QOLを保ちながら,がんと共存することができます。糖尿病や高血圧といった慢性疾患と同じように再発・転移がんの治療は,病気を抑えながら長く付き合うという戦略で進めます。再発の診断を受けた人の中には,このようなやり方で治療を続けながら,長い間お元気で過ごされている人が大勢います。

乳がんは,最初に発見されたときもそうですが,急に進行することは少ないので,担当医とじっくり作戦を立てましょう。

(2)再発の治療に使う薬と使い方について

薬にはたくさんの種類があり,一つの治療法を行って効果があるうちはそれを続け,効果がなくなってきたら別の治療法に変更する,というやり方で進めます。治療法は,①がん細胞の特性(ホルモン受容体の有無,HER2の状況),②患者さんのからだの状態(閉経の状況,臓器機能が保持されているかどうか),③患者さんのご希望などを考慮に入れ,治療効果とQOL,治療によって得られる利益と不利益のバランスをよく考えて決めます。QOLを維持し,よりよくすることは非常に大切です。

図1 は,治療法を決める大まかな流れを示したものです。まず,ホルモン受容体陽性の人は,ホルモン剤を使用します(☞Q51参照)。HER2陽性の人は,トラスツズマブ(商品名 ハーセプチン)などの抗HER2薬を使用します(☞Q49参照)。それ以外の人や,ホルモン療法が効かなくなった場合は,抗がん剤による治療が適応になります(☞Q45参照)。

(3)さまざまな専門家の力を借りる

療養中は,痛みや苦しみなど,いろいろな症状が出ることがあります。これらの症状を和らげるためには,専門的なケアが必要とされ,「緩和ケア」と呼ばれています。緩和ケアは,以前は「終末期に提供されるケア」とされた時期があったため,がんの治療ができなくなった人のための最後の医療・ケアと誤解されがちでしたが,現在は「がん治療の早期から並行して始めるケア」というように考え方が変わりました。一般病院でも緩和ケアチームという多職種の医療スタッフ(医師,看護師,薬剤師,ソーシャルワーカーら)がかかわることによって,症状緩和を行うようになってきたので,これらの専門家の力を借りるのもよいことだと思います。緩和ケアについてはQ61を参照してください。

Q39-図1

図1 再発・転移治療の大まかな流れ

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