Q48.抗がん剤治療による脱毛に備えて,どのような準備をしたらよいですか。

【A】抗がん剤治療を始めて2~3週間後ぐらいから脱毛が始まります。脱毛に備えたウィッグ(かつら)や帽子は,治療中も安心してかぶれ,生活スタイルに合った自分らしく過ごせるものを選びましょう。眉やまつ毛の脱毛カバーの仕方や治療中の爪ケアについても知っておくと安心です。

抗がん剤治療による脱毛 ▶ウィッグを選ぶとき,治療中ならではの大切なこと ▶帽子やバンダナ,つけ毛を活用 ▶眉とまつ毛の脱毛をカバーするには ▶治療中の爪ケア

解説

抗がん剤治療による脱毛

抗がん剤は,分裂が速いがん細胞を攻撃しますが,正常細胞の中でも分裂が速い毛母細胞(もうぼさいぼう)(髪のもとになる細胞)も攻撃し脱毛を起こします。

乳がん治療で使われるアンスラサイクリン系やタキサン系抗がん剤(☞Q46参照)は脱毛率が高く,最近の脱毛調査では,頭髪の8割以上が脱毛した患者さんが94%いたと報告されています。抗がん剤治療が始まって,2~3週間後から脱毛が始まり,治療終了後,早い人で1カ月(平均3.4カ月)程度で髪が生え始めます。個人差がありますが,その後,ショートの長さまで生え揃うには半年~1年ぐらいかかるため,初期治療でウィッグを使う期間は,1~2年程度の方が多いようです。眉やまつ毛は,8割以上脱毛した患者さんが60%いたと報告されていますが,薄くなる程度の人もいます。

ウィッグを選ぶとき,治療中ならではの大切なこと

治療中もできるだけ普段と変わらない生活や仕事を続けていくために,脱毛に備えて治療前にウィッグを準備しておくと安心です。ウィッグには,通信販売で購入できるものからウィッグメーカーや美容室のサロンでつくるものまでいろいろあり,価格も数万円から数十万円以上のものまで幅があります。生活スタイルや好み,予算に合わせて,自分らしくかぶれるウィッグを選んでかまいません。ただし,治療中ならではのポイントは抑えておきましょう。

ウィッグには,すぐに使える既製品と,出来上がるまでに1カ月程度かかるオーダー品があります。脱毛が始まる時期も確認して準備しましょう。毛質(人毛,人工毛,混合毛)によって,普段の手入れの方法が異なります。人毛の場合は自髪と同様ですが,人工毛や混合毛は形状が記憶されていて手入れが簡単です。また,治療中,髪が脱毛して再び生えてくるまでの間,頭周のボリュームが変わっていくので「サイズ調整はできるか」,体調の変化や敏感な頭皮,暑さやムレを考慮して「締め付けはないか」,「裏側ネットの肌触りや通気性はどうか」なども確認しましょう。見た目だけでなく,かぶり心地も大切です。実際に試着してみるとよいでしょう。その際,担当者の応対の仕方もチェックしてください。治療中の患者さんの生活を理解しているメーカーのものを選びましょう。

なお,ここ数年,「医療用ウィッグ」と銘打った粗悪品が出回っていることから,ウィッグの安全性を確認するため,2015年4月に経済産業省が「医療用ウィッグJIS(日本工業規格)」を制定し,ウィッグ本体と付属のネットを対象に,「性能,品質,安全性」についての基準が示されました。

帽子やバンダナ,つけ毛を活用

普段の生活では,帽子やバンダナ,つけ毛などを活用すると楽に過ごせます(図1)。髪が抜けると,頭皮が露出し,暑さ寒さを敏感に感じ,汗や皮脂も出やすくなります。帽子をかぶることで頭を保護し,心地よく過ごせます。頭皮が敏感になっているので,締め付けず,肌触りのよい素材で,すっぽりと頭全体を覆うものがよいでしょう。寝るとき(横になるとき)のもの,抜け始めから屋内で楽にかぶれるもの,屋外でもかぶれるものなどを用意しておくと便利です。屋外用のつば付き帽子は,深くかぶれて,つば幅が広すぎないものなら強風に煽られる心配はありません。さらに,帽子とつけ毛を組み合わせて,帽子から少し髪が出ると,見た目が自然になり,ちょっとした外出や突然の来客にも気を使いません。

 

Q48-図1

図1 頭髪の脱毛をカバーするアイテム

眉とまつ毛の脱毛をカバーするには

脱毛後に眉を描くときは,眉の位置がわかりにくいので,顔と眉のバランス 図2 を確認してみましょう。アイブロー(眉ずみ)は,ウォータープルーフ(防水用)のものにすると皮脂や汗が出ても落ちにくくなります。アイブローの色は,ウィッグの色に合わせると自然です。

まつ毛が脱毛すると,目にゴミが入りやすいので,メガネやファッショングラスでカバーしましょう。つけまつ毛を使うときは,接着剤のパッチテストを行ってください。

抗がん剤治療が終わると眉やまつ毛も徐々に生えてきますが,まつ毛が生えてこないときは,まつ毛貧毛症治療薬(商品名 グラッシュビスタ)が承認されていますので,医師に相談してください。ただし,これは保険適用外で自由診療となります。

Q48-図2

図2 顔と眉の美しいバランス
①眉頭は,目頭の真上よりやや内側
②眉尻は,小鼻と目尻を結んだ延長線上
③眉山は,黒目の外側の延長線上
3点をなだらかな線で結びます。

治療中の爪ケア

爪のもととなる爪母細胞(そうぼさいぼう)も抗がん剤による影響を受け,手足の爪が脆(もろ)くなったり,筋が入ったり,変色したりします。普段よりやさしいケアと保湿をしましょう。爪切りを使うと,爪に圧力がかかるので,なるべくファイル(爪やすり)で優しく削ります(図3)。爪は短めに整え,清潔にしましょう。手を洗った後は,よく拭いてから,保湿用オイルやクリームで爪周りの保湿をします。爪のトラブルを悪化させないために,弱くなっている爪の乾燥を防ぐことが大切です。

変色した爪にネイルカラーを塗る場合は,乾燥のもとになる除光液をできるだけ使わないように,ネイルカラーの前後に,ベースコートとトップコートを塗り,カラーを長持ちさせます。なお,治療中は,爪を削るジェルネイルはお勧めできません。

Q48-図3

図3 爪の削り方

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