Q53.不安です。どうしたらよいか教えてください。

【A】乳がんと診断された時点から治療が進む中で,患者さんとそのご家族はさまざまな不安を抱え,それが生活に影響を与えることもあります。
不安は,誰かに聞いてもらえることで軽くなることもありますので,一人で抱え込まず,医療スタッフやご家族など周囲の人に話してみましょう。
不安の程度が強い場合は,心の専門家に相談することをためらわないようにしましょう。

乳がん患者さんの心の反応 ▶がん患者さんの不安 ▶不安への対処法 ▶医療スタッフとの関係,家族の不安 ▶誰に相談したらよいでしょうか ▶どこから情報を入手したらよいでしょうか

解説

乳がん患者さんの心の反応

患者さんの多くは,自分の胸にしこりをみつけたとき,乳がんと診断されたとき,手術や抗がん剤の治療が始まるときなど,その時々でさまざまな不安や混乱を感じたり,誰かに助けを求めたくなったりすることと思います。ほとんどの人にとってがんは初めての経験であり,不安になったり戸惑ったりするのは正常な心の反応です。

がん患者さんの不安

「がんの社会学」に関する合同研究班の報告(2004年)によると,がん体験者の悩みや負担のうち最も多かったのは,「不安などの心の問題」(48.6%)でした。その中で特に多かったものには,「再発・転移の不安」と「将来に対する漠然とした不安」が含まれています。それだけ患者さんにとって「不安」は大きな問題であり,それに対応することが求められているといえます。

不安は,からだの状態がどうなるかわからないこと,今後の治療や見通しが不確かなこと,家族や仕事への影響など,いろいろなことに思いをめぐらせることで起こります。別の言い方をすれば,不安を感じるのは,人々がその脅威(きょうい)に対してうまく関係を築き,前向きに対処するための正常な過程ともいえます。強い不安や落ち込んだ状態は,通常は一時的なもので,たいていの人は2~3週間くらいで前向きな気持ちになれます。しかし,不安が強かったり長く続くと,動悸(どうき)がしたり胸が重苦しくなったり手足が震(ふる)えて汗をかいたりといった身体的な症状が現れることもあり,QOL(生活の質)や日常生活に影響を及ぼすこともあります。

不安への対処法

不安の中には対処できるものもありますので,不安のもとになっている原因を整理して改善することが重要です。自分の気持ちを整理するのは一人ではなかなか難しいので,誰かに,どんなことが不安なのか率直に話すことが大切です。例えば,病気のことがよくわからず不安,今後どうなるのかわからなくて不安,治療や副作用のことが気になって不安,などといった病気や治療にかかわる不安の多くは,必要な知識の不足からきていることもあります。まずは,医師や看護師,薬剤師など,医療スタッフに遠慮せずに思っていることを話してみてください。また,ご家族や友人など周囲の人と話をすることで,気持ちが徐々に整理され安定することもあるでしょう。何より,一人で抱え込むのは解決への遠回りでもあり,不安な気持ちが大きくなるばかりということもあります。誰かに話を聞いてもらえることで,気持ちが落ち着いてきたり,苦しい気持ちが和らいだりすることは,よくあることです。ほかの人に助けを求めることは,むしろ自分の状態を改善するためのよい方法ですので,ためらわずに周りの人に相談してみてください。

また,自分でできる対処方法をあれこれ試してみるのも一つのやり方です。心配なことを書き出して整理してみたり,気分転換を図ったりするのもよいかもしれません。筋肉を伸ばすストレッチ体操やいったん緊張させた筋肉を弛める筋弛緩法(きんしかんほう)あるいは深呼吸(腹式呼吸)といったリラックス法を行うのも効果的です。過去のつらい出来事を乗り越えたことがある場合は,そのときにどうやって乗り越えてきたのかを思い出して,それを実践してみるのもよいでしょう。

医療スタッフとの関係,家族の不安

不安や悩みを少しでも和らげるためには,医療スタッフとのよりよい関係づくりが重要です。そのためには医療スタッフとの良好なコミュニケーション(☞Q58参照)が必要で,それ自体が精神的支えになります。

また,ご家族にとっても,大事な人が病気にかかるということが精神的に大きな影響を与えることがあります。ご家族も同様の不安を抱えていますので,その気持ちを共有することで改善することも多いでしょう。ご家族は,患者さんを支えるためには弱音は吐けない,などと無理しすぎないことが大切です。

誰に相談したらよいでしょうか

人によっては,自助グループ(患者会や援助団体)が助けになることがあります。自らの経験からあなたの状況を理解してくれる人々と一緒にいることは,悩んでいるのが自分一人ではないことがわかり,心が安らぐとともに,いろいろなことに助言がもらえることもあります。また,経験豊かな同病者らが医療機関に出向いて相談にのるサービスを提供しているグループもありますし,インターネットを利用した自助グループもあります。医療機関によっては,精神的援助の訓練を受けた人(医師,臨床心理士,看護師など)が加わり,患者さん同士でストレスへの対処法などを話し合ったり,リラックス法を行ったりするグループ療法を取り入れているところもあります。

しかし,不安が長く続いて身体的な症状が改善しない場合など,専門家による援助が必要なこともあります。がん患者さんとそのご家族の心の問題を扱う専門家(精神腫瘍医など)がいる病院もあります。また,精神科医,心療内科医,臨床心理士などに相談するのもよいでしょう。適切な投薬を受けることにより症状が改善することもあります。ときには,抗がん剤やホルモン剤による薬物療法,放射線療法が精神的にも負担となり影響を与えている可能性もありますので,ためらわずに専門医の診察を受けることをお勧めします。心の専門家に相談するのは精神的に弱いということではなく,がんとうまく取り組むための賢明な行動といえます。

どこから情報を入手したらよいでしょうか

がん患者さんの精神的問題に対応してくれる専門家や精神科医,心療内科医,臨床心理士らが,治療を受けている病院にいない場合は,各都道府県のがん診療連携拠点病院にお問い合わせください。がん診療連携拠点病院には「相談支援センター」があり,今後の療養や生活のことが心配,がんの治療について知りたいなどの,がんにかかわる相談に対応しています。十分に話を聞き整理し,どこに相談に行けばよいか,より適切なところを一緒に探します。その病院を受診していなくても,どなたでも利用できます。

情報源として,インターネットによる以下のホームページを参考にしたり,図書館や書店で必要な情報を調べてみてください。患者会については,現在治療を受けている病院にあるかもしれませんので,担当医に尋ねてみてもよいですし,相談支援センターで調べてもらうこともできます。

〈医療機関や学会などが運営しているホームページ〉
・国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス  http://ganjoho.jp/public/index.html
・日本サイコオンコロジー学会 http://www.jpos-society.org/
・日本対がん協会 http://www.jcancer.jp/
・がんサポート情報センター http://gansupport.jp/
・がん情報サイト http://cancerinfo.tri-kobe.org/
・がんナビ http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/cancernavi/
〈全国的な患者会,援助団体が運営するホームページ〉
・Breast Cancer Network Japan-あけぼの会  http://www.akebono-net.org/
・NPO法人J.POSH http://www.j-posh.com/

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