Q56.家族(夫・子ども)とどう向き合えばよいのでしょうか。

【A】大切な人には病気のことを率直に話し,病気に関しての悩みを打ち明け,病気の現状について理解を共有しましょう。

夫とどう向き合えばよいのでしょうか ▶子どもとどう向き合えばよいのでしょうか
落ち込まないために,覚えておくとよいこと

解説

夫とどう向き合えばよいのでしょうか

女性が乳がんになったとき,「夫に迷惑をかけたくないから,夫には病気のことをあまり話さない」という方がいます。しかし,このような場合,夫は患者さんの状況を十分理解していないがために逆に不安となり,「そんなことはからだに負担がかかるからやめたほうがよい」とか「風邪をひいたら大変だからできるだけ外に出ないように」といったように過剰に反応し,それが患者さんにも伝わり,家族全員が心身ともに疲れてしまうことがよくあります。病気の経過の中ではあまりよくない情報もあるかもしれませんが,病気の現状や治療について,ご主人と情報を共有し,理解してもらうことが重要です。特に,外来での治療が中心になると,患者さんが一人で受診することが多いかと思います。こうした場合も折に触れて,ご主人に治療の経過や担当医との話の内容を伝えるようにしましょう。

一方で,「夫は自分の気持ちを理解できないだろう」とか「理解してくれない」と感じる場合もあるかと思います。気持ちをわかってもらうことはなかなか難しいものですが,自分の感じていること,病気への不安や悩みなど自分の心の内を,まずは話してみることが大切です。そして,お互いの気持ちを語り合ったり,相手に希望することを伝えたりするとよいでしょう。

子どもとどう向き合えばよいのでしょうか

乳がんになったとき,「病気についてどのように子どもに説明をすればよいか」と悩む方は多く,特に子どもが小さければ小さいほどその悩みは大きくなります。そのために大切なことは,まず上で述べたように,患者さんやご主人が病気についてしっかり理解し,共通の認識をもっておくことです。親の理解が不十分であったり,夫婦それぞれの理解が異なったまま子どもに情報を伝えたりすると,正確な情報が伝わらず,そのため子どもの不安やうつといった心理的負担が増してしまう可能性があります。

子どもに何をどこまで伝えたらよいかは,子どもの理解度によって異なりますが,例えば小学生くらいであれば,「お母さんが病気で,入院や通院が必要なこと」,中学生ぐらいであれば,病気や治療の内容を少し詳しく話し,高校生以上であれば他の大人と同じ内容をわかりやすくお話するとよいでしょう。

また,伝える際には,コミュニケーション技術において大切であるといわれている,率直に話し嘘をつかないこと,一度に全部を伝えようと思わず,情報を少しずつ理解できる範囲で何度も繰り返し説明することが重要です。そして,「治療のせいで具合がよくないときはあるかもしれないけれど,お母さんはいつもと変わらないこと」を伝えるのと同時に,心理的なサポートを家族みんなで行っていくことが重要です。そうすれば,小さな子どもでも病気のことをしっかりと受け止め,精神的に不安定になることは少ないと思われます。子どもと一緒に読むことができ病気の理解を深める絵本タイプの小冊子などもありますので,それらを利用するのもよいでしょう。がんになった親をもつ子どもをサポートする情報を提供するサイト(「Hope Tree(ホープツリー)~パパやママが“がん”になったら~」http://www.hope-tree.jp/)も参考になるかもしれません。

落ち込まないために,覚えておくとよいこと

気分の落ち込みや不安を予防するために,アメリカでがん患者さん向けに作成されたガイドラインがあります。日本の事情を加味してアレンジされたものを以下にお示しします。

①「がん=死」ではありませんので,そのように思い込むのはやめましょう。完治は難しい状態であっても,長い間,元気に過ごしている人はたくさんいます。
②がんは細胞増殖の仕組みが壊れたために起こったものですが,なぜある人にそれが起きたのかは誰もわかりません。したがって,自分のせいでがんになったと思わないようにしましょう。
③気分を落ち着かせるために,過去に助けになった方法があれば,それを試してみましょう。
④過去につらい状況から救ってくれたような対処法があれば,それを使ってみましょう。
⑤いつも前向きな考え方ができないからといって,自分を責めないようにしましょう。
⑥自分にとって助けになりそうだと思われる患者会やサポートグループをどんどん利用しましょう。
⑦リラックス法や音楽など,自分の気持ちをコントロールすることに役立つ方法を積極的に利用しましょう。
⑧心の専門家に相談することをためらわないようにしましょう。
⑨何でも質問でき,信頼できる関係を医師や医療スタッフとの間に築き,治療上のパートナーになってもらいましょう。
⑩親しい人には病気に関しての悩みを打ち明け,医師と治療について話し合うときは,その人に一緒に来てもらうとよいでしょう。

こうした工夫や考え方を家族みんなで共有し,試してみてはいかがでしょうか。

ガイドライン

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