Q57.治療後の生活の注意点を教えてください。

【A】医師から特に指示がない限り,生活上の制限はありません。ご自身の体調に合わせて仕事をしたり旅行をするなど,無理のない範囲で今まで通りの日常生活を送ってください。

仕事や旅行について ▶インフルエンザワクチン接種について ▶治療後の性生活について

解説

仕事や旅行について

乳がん治療の目標は,がんの再発を防いだり,再発したがんを小さくするだけではありません。治療後の患者さんに,できるだけ治療前に近い生活を送っていただくことにもあります。医師からの特別な指導のない限り,自分の体調に合わせて仕事に復帰したり旅行に出掛けることは差し支えありません。

抗がん剤治療やホルモン療法,放射線療法を受けながら仕事を続けるためには,治療のスケジュールと予測される体調の変化について,医師・看護師・薬剤師に尋ねて,仕事の日程や勤務時間の調整が必要かどうかを相談するとよいでしょう。病気や治療のことを職場の上司や同僚に伝えるのを躊躇(ちゅう ちょ)する患者さんは少なくありません。病気のことを詳しく説明できなくても,治療のために体調の変化が生じやすいことを説明しておくと,職場で仕事の内容を配慮してもらえたり,同僚がサポートをしてくれることもあります。また,職場で利用可能な福利厚生制度などを確認しておくとよいでしょう。

一方,いったん治療のために仕事を離職し,治療が一段落してから再就職するうえで困難さを体験することがあるかもしれません。そんな時には就職相談を受ける方法もあります。厚生労働省では「長期療養者等就職支援モデル事業」を実施しており,ハローワークから専門のナビゲーターが病院へ出張し,患者さんに仕事の紹介を行っています。通院や治療の副作用など働き方の制約にも配慮しながら,希望に合う企業を探し出し,患者さんの就職をサポートしてくれます。現在全国で16カ所のハローワークで実施されていますので,活用してみるとよいでしょう。

■「長期療養者等就職支援モデル事業」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000065173.html

手術でわきのリンパ節の郭清(かくせい)を受けた方では,腕のリンパ浮腫を発症する危険性があります(☞Q22参照)。手術を受けた側の腕に過度の負担がかからないように注意しましょう。

インフルエンザワクチン接種について

どのような方がワクチンを受けるべきかに関して,いくつかのガイドラインが出されています。米国では,生後6カ月から18歳の小児と50歳以上の成人,そのほかインフルエンザにかかると重症化する危険性のある方(心臓,肺,肝,腎などに慢性的な病気のある方,寝たきりの方,免疫不全のある方)とその家族へのワクチン接種を勧めています。また,抗がん剤治療の副作用で高熱が出る場合があり(発熱性好中球減少症☞Q47参照),インフルエンザの流行期と重なればインフルエンザによる高熱と区別が難しくなります。

抗がん剤の治療を受けている方は,白血球が減っている時期は人混みを避けるなどの予防対策をしてください。インフルエンザ流行期(1~2月など)に抗がん剤治療を受けることがわかっている場合には,あらかじめインフルエンザのワクチン接種を受けておくことをお勧めします。また,65歳以上の患者さんの場合,肺炎球菌ワクチンの接種もお勧めします。

治療後の性生活について

性は私たちの生活の中で大切な一部分です。病気にかかっても自分らしい生活を送るということはとても大切なことです。ですから,乳がんになったからといって性生活をあきらめる必要はありません。性生活によって女性ホルモンの分泌が増えたり,病気の進行に悪影響を与えることはありません。また,治療後に特に性生活を禁止する期間はありません。

しかし,治療によって性生活にさまざまな変化が起こることがあり,その変化の大きさには個人差があります。手術を受けた部位やリンパ節を切除したわきの下の感覚が変化し,愛撫によって違和感や不快感が生じることがあります。

抗がん剤治療やホルモン療法,放射線療法を受けていて全身倦怠感(けんたいかん)が強く,体調が思わしくないときには無理をする必要はありません。また,抗がん剤治療で白血球や血小板などが減少する時期には感染や出血が起こりやすくなるため,一時的に性生活を控えたほうがよいでしょう。なお,抗がん剤治療やホルモン療法により女性ホルモンの働きが抑えられると,腟(ちつ)の乾燥や粘膜の萎縮を生じ,その結果として性交痛を伴うことがあります。そのようなときは,腟潤滑(じゅんかつ)ゼリーを使用したりすることも効果的です。

妊娠を望まない場合,あるいは担当医に妊娠を避けるようにいわれている場合には,生理が止まっている時期であってもコンドームによる物理的避妊が必要です。経口避妊薬(ピル)は乳がんを悪化させる可能性があるため使えません。

乳がん治療後の性生活には,ご本人の心身の回復度,パートナーの受け止め方,カップルとしての性の考え方などが大きく影響します。お互いの状況や気持ちをできるだけ相手に伝え,あせらずゆっくりお互いに満足のできる方法を探しましょう。

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