Q64.免疫療法,高濃度ビタミンC療法,アガリクスやメシマコブなど補完代替医療は乳がんに対して効果が期待できますか。乳がんの治療中にこれらを併用してもよいでしょうか。

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【A】免疫療法,高濃度ビタミンC療法や民間療法などの補完代替(だいたい)医療は,乳がんの進行を抑えたり再発を予防する効果が医学的に証明されていないため,乳がんの治療中は併用を避けてください。ただし,がん治療に伴う副作用やがんによる痛みなどの症状を緩和する目的,あるいは不安などの心理的なストレスの軽減を目的とした補完代替医療の中には有用なものもあります。補完代替医療を受けたい場合には,担当医に率直に相談しましょう。

補完代替医療とは ▶日本と米国の補完代替医療の現状 ▶補完代替医療の効果や安全性 ▶補完代替医療に関する詳しい情報

解説

補完代替医療とは

「補完医療」とは,私たちが普段病院で受けている西洋医学を補う(補完する)医療のことです。また,「代替医療」とは,西洋医学に取って代わる(代替する)医療のことです。両者をまとめて「補完代替医療」といいます。

補完代替医療は,通常,効果や安全性について科学的に証明されておらず,保険診療を行う医療機関では行われていない(すなわち健康保険で認められていない)医療を指し,大まかには以下の5つに分類されます。

①独自の理論体系をもつ医療(中国伝統医療,自然療法医学,ホメオパシー医療など)
②心身医療(心理精神療法,瞑想(めいそう),祈りなど)
③生物学的療法(ハーブ,アガリクス,メシマコブ,サメ軟骨,プロポリス,食事療法,生理活性物質,免疫療法,高濃度ビタミンC療法など)
④手技療法と身体技法(カイロプラクティック,マッサージ療法など)
⑤エネルギー療法(気功,レイキなど)

上記のほか,免疫療法(免疫細胞療法),温熱療法,血管内治療なども通常医療の範囲でないため,補完代替医療に含まれます。また米国では,漢方は医療品に分類されず,ハーブとして補完代替医療に分類されています。

日本と米国の補完代替医療の現状

日本のがん患者さんにおける補完代替医療の利用率は45%に上り,それに支払う費用は1人あたり月平均5.7万円でした。日本だけでなく米国でも多くのがん患者さんが補完代替医療を利用していますが,代替医療の種類やそれを始めた動機には両国間で大きな違いがあります。

まず,代替医療の種類に関してですが,米国では食事療法や心理療法などが多いのに対して,日本ではアガリクス,メシマコブなどの健康食品の摂取が圧倒的に多く,全体の約90%を占めます。代替医療を始めた動機について,日本では,「がんの縮小や進行の抑制を期待する」,「がんの治癒を期待する」など,抗がん剤や手術などと同様の効果を期待して代替医療を利用する患者さんが多いことが調査でわかりました。これに対して米国では,「がんの症状や治療の副作用を軽減するため」,「がんとうまく共存してQOL(生活の質)を保つ」ことを期待して始める場合が多いようです。

日米間のこのような代替医療の種類や意識の違いは,日本における情報の多くが「末期がんが消滅した」,「驚異の治癒力」,「ナチュラルキラー細胞を活性化させ,がんを攻撃する免疫力を高めます」などといった,根拠のない宣伝文句をちりばめた広告が新聞や雑誌などの媒体に載っていたり,体験本やホームページから発信されているのが原因と考えられます。

補完代替医療の効果や安全性

補完代替医療の効果や副作用についても,他の薬と同様に臨床試験を行ってきちんとした証拠を出さないといけないのですが,臨床試験で証明されたものがほとんどないのが実情です。しかし,代替医療の利用者が急増している現状から,米国では補完代替医療に関して国家的な取り組みを行っています。米国の補完代替医療センター(National Center for Complementary and Alternative Medicine;NCCAM)では一般の薬と同じように臨床試験を行うことによって,補完代替医療の効果や副作用について調査しています。また,日本の国立健康・栄養研究所のホームページにおいても,健康食品に関するデータベースを作成する取り組みが行われています。

サプリメントなどの健康食品は,他の薬の働きに影響を及ぼす可能性がありますので,使用を希望する場合には必ず担当医に相談しましょう。

以下に,主な代替療法や健康食品について,現在わかっていることを記載します。

免疫療法:「最先端の免疫医療」と謳って樹状(じゅじょう)細胞ワクチン療法,活性リンパ球療法,ナチュラルキラー細胞療法,免疫細胞療法,ペプチドワクチン療法といった治療を行っている施設をみかけますが,この種の免疫療法の乳がんに対する有用性を証明したデータ(臨床試験の結果)はありません。ただ,新しい考え方でつくられた免疫療法薬が,悪性黒色腫(皮膚がんの一種),肺がんなどの治療薬として最近承認されました。現在この種の薬剤の開発が乳がんを含む複数のがん種で進められており,近い将来乳がん領域でも使用できるようになるかもしれません。

高濃度ビタミンC療法:医学的に乳がんに有効であるとするデータ(臨床試験の結果)はありません。

アガリクス:キノコの一種で市場に多く出回っていますが,ヒトのがんに対する効果や安全性が示されたデータはありません。アガリクスの使用により劇症肝炎を発症したという報告もありますので,安易に使用すべきではありません。

温熱療法:がん細胞が正常細胞と比べて熱に弱いという性質を利用した,がんの治療法です。単独で用いるのではなく,放射線や抗がん剤の効果を強めることを目的に,放射線や抗がん剤と併せて使われますが,温熱療法を追加することで治療効果が上がるかどうかは研究段階であり,標準治療とはいえません。

メシマコブ:キノコの一種で,「免疫力を向上させる」,「がんを予防する」などといわれていますが,ヒトでの有効性についてのデータはありません。大量に摂取すると下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。

サメ軟骨:がん細胞を用いた実験で,がんの進行を抑えるのではないかと期待されましたが,米国での臨床試験の結果,サメ軟骨はがんに対して無効であることがわかりました。また,患者さんのQOLを改善する効果も認められませんでした。

以上のように,乳がんの進行を抑えたり,再発を予防したりすることが証明された補完代替医療はありません。そのため,乳がんに対する治療としてはお勧めできません。一方,がんの痛み,化学療法中の吐き気やホットフラッシュに対する鍼(はり)治療,痛みや不安に対するマッサージ療法や適度な運動,サポートグループによる心理療法やリラクセーションなどによる心身療法など一部の補完代替医療については,臨床試験において効果が認められています。補完代替医療を受けたい場合には,担当医に相談しましょう。

補完代替医療に関する詳しい情報

補完代替医療に関する詳しい情報については下記をご参照ください。

がんの補完代替医療ガイドブック(厚生労働省がん研究助成金 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班編集) http://www.cam.med.osaka-u.ac.jp/guidebook/img/cam_guide_0607.pdf
国立健康・栄養研究所 http://www0.nih.go.jp/eiken/  *ホームページにて健康食品に関するデータベース(「健康食品」の安全性・有効性情報)を閲覧可能です。 
日本補完代替医療学会 http://www.jcam-net.jp/index.html
科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン①治療編2015年版(日本乳癌学会編) http://jbcs.xsrv.jp/guidline/

ガイドライン

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