はじめに

はじめに

今般,日本乳癌学会による「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2016年版」が,2年ぶりに改訂版として刊行されました。

医療者が日常診療で何気なく用いている言葉は,ときに患者さんにとっては耳慣れないことがあり,それが積み重なってコミュニケーションギャップを生むことがあります。本書は,こうした問題を解消すべく,患者さんの立場に立って医療者向けの診療ガイドラインを解説することに主眼をおいて,2006年に初版が刊行されました。その後,3年ごとに改訂版を出しましたが,2012年からは,医療者向けの診療ガイドラインと毎年交互に出版されることとなりました。作成側にとっては,かなりのハードワークとなりますが,それだけ診断治療の進歩は著しく,タイムリーに新たな情報を取り入れることに注力しました。

また,本書の特徴として,単に医療者向けのガイドラインを解説するだけではなく,多くの患者さんが診療の過程で抱く素朴な疑問(生の声)を拾い上げ,それに対して,なるべく平易な言葉を用いてわかりやすく解説することに努めています。特に,医療と生活をつなぐことを意識し,療養上の諸問題を多数取り上げています。すなわち,食生活を含む生活習慣と乳がん,家族(夫や子供)との向き合い方,働きながら治療を受けるうえでの支援制度等は,本書ならではのテーマです。また,さまざまな分子標的薬が保険承認となり,治療成績も確実に向上していますが,一方で,高額な医療費をどう賄うかということは,日々切実な問題となっています。個々の置かれている状況に応じて,受けられる支援制度も異なりますが,本書ではなるべく多くの事情に応えるべく設問を増やしています。

本書が患者さんにとって,自分に相応しい治療法は何かを知る,あるいは,選択した治療を納得して受けるための一助となれば幸いです。

最後に,本書の改訂にあたり,多くの時間を割き,多大なるご尽力をいただいた大住省三委員長をはじめとする作成委員会の方々,関係各位に心より感謝申し上げます。

2016年5月

日本乳癌学会理事長
中村 清吾

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