自然災害発生後のがん対処法

自然災害発生後のがん対処法
− 乳がん患者と介護者のためのQ&A −

 

東北地方太平洋沖地震において被災された乳がん患者への情報提供として、米国がん協会(American Cancer Society:http://www.cancer.org/)による本Q&A(原文は英文)を乳がん患者用に改編して以下に掲載します。なお、本Q&Aは、米国がん協会のご厚意により許可を得て日本語に翻訳したものを、日本乳癌学会および同広報・インターネット委員会が乳がん用に修正したものです。
避難所にいる方々はネットへのアクセスが困難ですので、避難所に救護班として赴かれる医療従事者の方々に本Q&Aを印刷して持参いただき、避難所での配布および掲示等に努めていただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【本Q&Aの翻訳に関する注意点】
あなた(やあなたの大切な人)が乳がん患者で、近頃起こった自然災害により家や治療施設から避難しなければならない場合や、治療予定を変更しなければならなくなった場合には、必要ながん治療を受けることが難しくなるでしょう。以下のQ&Aをお読みになり、これまで通りの治療を受けるためにどうすればよいかの参考になさってください。

■がん治療について
Q. まず、何をするべきでしょうか?
A.あなたがいる一時避難所に医療従事者(医師、薬剤師、看護師など)がいる場合: すぐに医療従事者に相談してください。あなたが「がん」の治療中であり、医師や病院とできるだけ早く連絡をとる必要がある旨を伝えましょう。医師のところや病院へ車などで連れていってもらわなければならない場合は、そのことも必ず伝えましょう。
あなたがいる一時避難所や仮設住宅地域に医療従事者(医師、薬剤師、看護師など)がいない場合:
避難所や仮設住宅の責任者、避難先のご家庭に頼んで、最寄りの病院や保健所に連絡してもらってください。

Q. 急を要する処置が必要になったら、どうしたらよいでしょうか?
A.最寄りの救急外来で、できるだけ早く治療を受けてください。 特に以下の場合はすぐに治療を受けてください。
_ 口の中で計った体温が38.3度以上のとき、あるいは38度の体温が1時間以上続く時
_ 腋の下で計った体温が37.8度以上のとき、あるいは37.5度の体温が1時間以上続く時
_ 寒気がしたり、汗が出る時(発熱とともに起こることが多い)
_ 傷口、手術の傷、中心静脈カテーテル等の挿入部位、皮膚(性器や肛門周囲も含む)が赤くなったり、腫れたり、膿んだり、圧痛があったり、熱をもっている時
_ 今までなかった痛みが起こったり、痛みがひどくなる時
_ 副鼻腔の痛み、あるいは頭痛
_ 首がこわばる時
_ 喉の痛み
_ 息切れや咳
_ 排尿時に痛みがあるとき、あるいは血尿や尿が濁る時
救急外来に着いたら、必ずあなたのがんのことを伝えましょう。その場に医師がいない場合は医師の診察を受けられるように頼みましょう。ただし、上記の中には乳がんとは関連の薄い症状も含まれますから、診察した医師の指示に従ってください。

Q.どうすれば、がん治療を継続することができますか?
A.治療を受けていたがん専門医や病院がそばにある場合: 停電、交通機関の寸断、自宅の損壊、診療所や治療施設の損壊で治療が中断した場合は、できるだけ早く主治医に連絡をとり、治療継続のためにはどうしたらよいかを尋ねましょう。がんの主治医と連絡がつかない場合は、治療を受けていた病院、近隣の救急外来あるいはかかりつけ医に連絡をとって尋ねてください。
治療を受けていた地域から避難しなければならない場合: できるだけ早く新しいがん専門医と病院を探してください。もとの病院や主治医と連絡がとれる場合は、そこから紹介してもらうのがよいでしょう。そうでない場合は避難所や最寄りの地域の保健所、病院の情報窓口に相談してください。
国立がん研究センター1)および日本臨床腫瘍学会2)のホームページには、被災したがん患者の受け入れ病院リストが掲載されています。
1) http://ganjoho.jp/data/public/news/2011/files/kyoten_taisei.pdf
2) http://jsmo.umin.jp/oshirase/20110315.html
また、日本乳癌学会のホームページ3)には、被災した乳がん患者の受け入れ病院リストが掲載されていますので、ご利用ください。
3) http://www.jbcs.gr.jp/

Q.抗がん薬の服用はどうしたらよいでしょうか?
A.あなたの手元に薬があって服用方法が分かっている場合は、そのまま服用を続けてください。乳がんの場合、病状が安定しているときは、1か月〜3か月程度の間、抗がん剤を休むことは可能です。避難場所にインフルエンザ、風邪が流行している場合、周囲の衛生状況がまだ悪い場合は、いったんお休みしても良いでしょう。薬が必要な場合、薬がなくなってきた場合、あるいは服用方法がわからない場合には、避難所の医療担当者や相談窓口で、薬剤師や医師と連絡をとる手助けをしてもらってください。

Q. これまで受けてきたがんの治療方法や服用していた薬の名前がわからない場合はどうすればよいでしょうか?
A. 主治医や病院に連絡できるのであれば、これまでの診療記録をあなた自身もしくは受け入れ先の医師宛てにできるだけ早く送ってもらいましょう。診療記録は、受け入れ先の医師による迅速な治療の再開や、必要な薬の処方において、有用な情報を提供してくれます。

Q. 診療記録を入手できない場合、または主治医に連絡ができない場合はどうすればよいでしょうか?
A. 治療に関して覚えていることをすべて書き出すことで、これまでの治療を受け入れ先の医師と共有できます。メモには以下の点を記してください。
__もし知っていれば、「何がん(がんの部位)」で「何期(がんの病期またはステージ)」なのか
__これまで受けた治療(薬物療法、放射線療法、手術など)
__直近の治療日
__主治医の名前と病院名
__投与中の薬剤名(抗がん剤やその他の薬剤)。名前がわからない場合は、薬の色、大きさ、形、注射薬か錠剤あるいは粉薬か、服用回数などを詳しく。
__がん以外に罹っている病気や健康に関する問題点

Q. 鎮痛剤や抗うつ剤を服用している場合はどうすればよいでしょうか?
A. 鎮痛剤や抗うつ剤のなかには、一気に服用を中止することで体に悪影響を及ぼすものがあります。主治医、受け入れ先の医師、あるいは薬剤師に抗がん剤治療についての報告をする際は、必ず鎮痛剤や抗うつ剤の服用についても報告し、服用継続について尋ねてください。現在も鎮痛剤や抗うつ剤を服用し続けている、服用は続けているが量を減らしている、あるいは手持ちの薬がなくなっている、などについて伝えてください。薬がなくなっている場合には、何日間薬を服用していないのかを伝えてください。また念のため、避難所の看護師やスタッフ、あるいは家族や友人には、これらの薬を服用していることを伝えておいた方がいいでしょう。

Q. いままでの主治医や病院に、いつ戻ることができますか?
A. いままでの主治医や病院に戻ろうとお考えなら、可能となった時には自宅に戻って今後の治療を受けたい旨を受け入れ先の医師に伝えておきましょう。多くのがん治療病院で診療が再開されるようになり、あなたが以前通っていた病院でも診療が再開されることになった時には、受け入れ先の医師があなたに知らせてくれるはずです。なお元の病院に戻る時には診療記録のコピーを忘れずにもらってください。
■生活環境と衛生状態
抗がん剤治療を受けている時には、病気や感染症から身を守るために注意をしなくてはなりません。がんの種類や治療薬によっては免疫力が落ちて、簡単に感染症にかかりやすくなります。できるだけ感染に気をつけて過ごすようにしましょう。ただし、乳がんの術後で再発がない方や、術後治療中でもホルモン剤のみの場合には、特に免疫力には影響しませんから、乳がんだからとあまり神経質になることなく、一般的な衛生状態に注意すればよいでしょう。
以下のQ&Aでは、避難所や仮設住宅で安全に過ごすためにできることを挙げました。

Q. 感染症や細菌から身を守るために、できることはなんでしょうか?
A. 自分自身を守るためにできることを、以下に示します。
__できるだけ頻繁に、石鹸を使って水で手を洗いましょう。洗っている時間の目安としては、「ハッピーバースデイ・トゥ・ユー」の歌を最初から歌い終わるまで、とするといいでしょう。
__石鹸と水がない場合は、手指用のアルコール除菌剤を使用上の注意にしたがって使いましょう。
__安全な水が入手できない場合や、その水の安全性がわからない場合には、ペットボトル製品の水か1分間煮沸した水を飲むようにしてください。もちろん飲む前には冷やしても大丈夫です。
__食料品のなかには、害を及ぼすおそれのある細菌を含んでいる可能性があります。肉は十分に加熱し、果物や野菜は安全な水で十分に洗っていることを確認してください。室温で2時間以上放置された調理済みの食品を食べてはいけません。避難所や仮設住宅にいる間に摂取してはいけない食料品があるかどうかを、かならず現地の医師に尋ねてください。
__医師からとくに忠告がない限り、切り傷や創傷は清潔にしてバンドエイドなどで覆ってください。もし抗菌剤入りのクリームを持っていたら、それを塗ってください。
__可能ならば、できるだけ頻繁に入浴したりシャワーを浴びるようにしてください。また可能な限り、清潔なタオルを使用するようにしてください。
__歯ブラシや洗っていない食器を他人と共有してはいけません。

Q. 避難所や仮設住宅で、他の人々と別にしてもらうように頼むべきですか?
A. 災害が起こる前は、おそらく他の人々に囲まれて過ごしていたでしょう。ですから、細菌を避けて、感染するような病気の人から離れていれば、他の人々と一緒に生活しても大丈夫です。

MDアンダーソンがんセンターのページ
Japan Team Oncology Program
http://www.teamoncology.com/index.php4

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本Q&Aは、米国がん協会のご厚意により許可を得て、以下の方々のご尽力により日本語に翻訳されました。
翻訳:ジャムティ翻訳チーム(河原恭子、窪田美穂、中島美香、野川恵子、舛田理恵)
翻訳監修:今村知世(慶應義塾大学医学部)、山内照夫(聖路加国際病院)、上野直人(米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)
Q&Aの原文:Coping With Cancer After a Natural Disaster: Frequently Asked Questions for Cancer Patients and Their Care givers(http://www.cancer.org/treatment/findingandpayingfortreatment/coping-with-cancer-after-a-natural-disaster)
さらに、日本乳癌学会および同広報・インターネット委員会が、日本の実情に合わない部分を削除し、乳がんの方に合わせた記載を追加しました。

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