日本乳癌学会のWeb版「乳癌診療ガイドライン」

乳癌骨転移に対して骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネート、デノスマブ)は勧められるか (薬物療法・転移・再発乳癌の治療・ID10250)

CQ23 乳癌診療ガイドライン1治療編(101-103ページ)
推奨グレード A 骨吸収抑制薬〔静注ビスフォスフォネート(ゾレドロン酸),デノスマブ〕は,乳癌骨転移において,生存には寄与しないものの,骨関連事象を抑制するため強く勧められる。

背景・目的

 乳癌の骨転移は,疼痛,病的骨折,脊髄圧迫症状,高カルシウム血症などの骨関連事象の原因となり,患者のQOLを著しく損なう場合がある。ビスフォスフォネートやデノスマブなどは破骨細胞の機能を抑え,骨吸収を抑制する。これらの骨吸収抑制薬は骨粗鬆症の予防や高カルシウム血症の治療のみならず乳癌骨転移患者の骨関連事象を予防する。そこで本項では,乳癌骨転移に対する骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネート,デノスマブ)の有効性について検証した。

解 説

(1)ビスフォスフォネート

 コクランデータベースに乳癌対象の9つの臨床試験,2,806人のプラセボと静注ビスフォスフォネートとの比較試験の結果がある。ビスフォスフォネートは骨関連事象リスクを15%(RR:0.85,95%CI:0.77—0.94)減少させる(静注ゾレドロン酸;RR:0.59,95%CI:0.42—0.82)。また,骨関連事象発生頻度を減少させ(中央値28%,14~48%)骨関連事象発現を遅らせる。3つの臨床試験3,405人において皮下注デノスマブは静注ゾレドロン酸より著明な効果がある(RR:7.87,95%CI:0.72—0.85)。いずれも生存期間延長には寄与しない1)

 わが国からも228症例規模のランダム化比較試験の報告があり,骨関連事象の年次発生比0.61,プラセボ群と比較し発生を39%抑制した2)

(2)デノスマブ

 乳癌の骨転移によりReceptor Activator of Nuclear Factor κ—B Ligand(RANKL)の発現が亢進すると破骨細胞が活性化され,過剰な骨吸収がもたらされる。さらに骨吸収の亢進により骨基質から種々の増殖因子が放出され,癌細胞の増殖につながる悪循環が形成される。デノスマブは抗RANKLヒト化モノクローナル抗体であり,破骨細胞の活性化を抑制し,この悪循環を断ち切ると考えられている。デノスマブとゾレドロン酸との比較についてのメタアナリシスがある。5つのランダム化比較試験を解析,2,330人の検討により,骨関連事象発生率はデノスマブで有意に少なかった(OR:0.61,95%CI:0.51—0.72)3)。このメタアナリシスに採用された1試験ではOSや病勢進行についても検討されたが両薬の間に差はなかった4)

 有害事象に関してデノスマブではゾレドロン酸でみられる急性期反応(発熱,骨痛等)や腎機能障害が少ないが,歯痛や低カルシウム血症が多いことが示された。顎骨壊死の発生頻度は両群間で差はなかった(デノスマブ群2.0%;ゾレドロン酸群1.4%)。

(3)骨吸収抑制薬の使い方

 ASCOのガイドライン20115)では,これらの骨吸収抑制薬の使用は無症状であっても画像による骨破壊を確認できた時点で開始することを推奨している。投与期間については,患者の全身状態が明らかに低下するまでは骨吸収抑制薬を使用することが推奨されている。また,骨吸収抑制薬には骨転移による疼痛を緩和する作用がある。骨転移による疼痛がある場合は,標準的な疼痛緩和治療を行うとともに骨吸収抑制薬を開始する。疼痛緩和において骨吸収抑制薬は補助的な治療であり,疼痛緩和の第一選択として使用してはならない。

 乳癌骨転移に対するビスフォスフォネートの投与方法は,クレアチニン・クリアランス60 mL/分を超える場合は,ゾレドロン酸は1回4 mgを15分以上かけて,3~4週毎に投与する。クレアチニン・クリアランス60 mL/分未満,30 mL/分を超える場合は減量して用いる。

 ゾレドロン酸投与間隔に関し,10—15カ月ゾレドロン酸投与歴のある乳癌骨転移症例を対象とした4週毎投与に対する12週毎投与の非劣性を検証した2つの臨床試験がある。skeletal morbidity rate 0.46 vs 0.506),0.22 vs 0.267)との結果から4週毎投与に対する12週毎投与の非劣性が示された。

 デノスマブは1回120 mgを4週毎に皮下投与する。デノスマブは重篤な低カルシウム血症の発生が報告されており8),投与前および投与後の血清カルシウム値のモニタリング,血清補正カルシウム値が高値でない限り,カルシウムおよびビタミンDの経口補充を行う。重度の腎機能障害がある場合は低カルシウム血症のリスクが上昇するため,慎重に投与する。

 骨吸収抑制薬の投与に際し顎骨壊死に注意を要する9)10)。骨吸収抑制薬使用前に可能な限り歯科医師による齲歯や歯周病のチェックとこれらの予防を行う。さらに骨吸収抑制薬を投与中は口腔内を清潔に保ち,侵襲的な歯科治療を避けることが推奨される。関連学会で組織されたビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会によるポジションペーパーでも原則注射用ビスフォスフォネート製剤の休薬はせず侵襲的歯科治療を可及的に避けるとしている。注射用ビスフォスフォネート製剤の休薬期間は3カ月程度が望ましいとされる。侵襲的歯科治療後のビスフォスフォネート製剤の投与再開までの期間は,手術創が再生粘膜上皮で完全に覆われる2~3週間後か,十分な骨性治癒が期待できる2~3カ月後が望ましいとされる。また,ビスフォスフォネート製剤の休薬か否かを決定する際には,経口ビスフォスフォネート製剤投与中の患者に対しては,侵襲的歯科治療を行うことについて,投与期間が3年未満で,ほかにリスクファクターがない場合はビスフォスフォネート製剤の休薬は原則として不要であり,侵襲的歯科治療を行っても差し支えないとされる。しかし,投与期間が3年以上,あるいは3年未満でもリスクファクターがある場合には判断が難しく,処方医と歯科医で主疾患の状況と侵襲的歯科治療の必要性を踏まえた対応を検討する必要がある。医師・歯科医師と患者との十分な話し合いによりインフォームドコンセントを得ておくことが肝要である11)

 骨吸収抑制薬の単独の有効性は示されていないため,化学療法または内分泌療法と併用することが推奨される。静注ビスフォスフォネート,デノスマブの使い分けは,コスト,投与形式(静注あるいは皮下注),副作用プロファイルにより選択する。

検索式・参考にした二次資料

 PubMedにて,Breast Neoplasms/drug therapy,Breast Neoplasms/therapy,Bone Neoplasms/secondary,Bisphosphonates,Denosumabのキーワードを用いて検索し,さらに検索結果は症例報告を除いた治療に関する文献に限定した。加えて重要文献をハンドサーチで検索した。ほかにUpToDate 2014の“Bisphosphonates and denosumab in patients with metastatic cancer”の項を参照した。

参考文献

1) Wong MH, Stockler MR, Pavlakis N. Bisphosphonates and other bone agents for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2012;2:CD003474.
→PubMed

2) Kohno N, Aogi K, Minami H, Nakamura S, Asaga T, Iino Y, et al. Zoledronic acid significantly reduces skeletal complications compared with placebo in Japanese women with bone metastases from breast cancer:a randomized, placebo-controlled trial. J Clin Oncol. 2005;23(15):3314—21.
→PubMed

3) Wang X, Yang KH, Wanyan P, Tian JH. Comparison of the efficacy and safety of denosumab versus bisphosphonates in breast cancer and bone metastases treatment:A meta-analysis of randomized controlled trials. Oncol Lett. 2014;7(6):1997-2002.
→PubMed

4) Body JJ, Facon T, Coleman RE, Lipton A, Geurs F, Fan M, et al. A study of the biological receptor activator of nuclear factor-kappaB ligand inhibitor, denosumab, in patients with multiple myeloma or bone metastases from breast cancer. Clin Cancer Res. 2006;12(4):1221-8.
→PubMed

5) Van Poznak CH, Temin S, Yee GC, Janjan NA, Barlow WE, Biermann JS, et al;American Society of Clinical Oncology. American Society of Clinical Oncology executive summary of the clinical practice guideline update on the role of bone-modifying agents in metastatic breast cancer. J Clin Oncol. 2011;29(9):1221-7.
→PubMed

6) Hortobagyi GN, Lipton A, Chew HK, Gradishar WJ, Sauter NP, Mohanlal RW, et al. Efficacy and safety of continued zoledronic acid every 4 weeks versus every 12 weeks in women with bone metastases from breast cancer:Results of the OPTIMIZE-2 trial. J Clin Oncol 32:5s, 2014(suppl;abstr LBA9500^).

7) Amadori D, Aglietta M, Alessi B, Gianni L, Ibrahim T, Farina G, et al. Efficacy and safety of 12-weekly versus 4-weekly zoledronic acid for prolonged treatment of patients with bone metastases from breast cancer(ZOOM):a phase 3, open-label, randomised, non-inferiority trial. Lancet Oncol. 2013;14(7):663-70.
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8) Peddi P, Lopez-Olivo MA, Pratt GF, Suarez-Almazor ME. Denosumab in patients with cancer and skeletal metastases:a systematic review and meta-analysis. Cancer Treat Rev. 2013;39(1):97-104.
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9) Shapiro CL. Bisphosphonate-related osteonecrosis of jaw in the adjuvant breast cancer setting:risks and perspective. J Clin Oncol. 2013;31(21):2648-50.
→PubMed

10) Rathbone EJ, Brown JE, Marshall HC, Collinson M, Liversedge V, Murden GA, et al. Osteonecrosis of the jaw and oral health-related quality of life after adjuvant zoledronic acid:an adjuvant zoledronic acid to reduce recurrence trial subprotocol(BIG01/04). J Clin Oncol. 2013;31(21):2685-91.
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11) Yoneda T, Hagino H, Sugimoto T, Ohta H, Takahashi S, Soen S, et al. Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw:position paper from the Allied Task Force Committee of Japanese Society for Bone and Mineral Research, Japan Osteoporosis Society, Japanese Society of Periodontology, Japanese Society for Oral and Maxillofacial Radiology, and Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons. J Bone Miner Metab. 2010;28(4):365-83.
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